グラビルを倒したジルは一歩一歩神殿へと近づいていた。
その前にシェラハが立ちふさがった。
「次はあんたか。」
「ふふ、そういうこと。」
シェラハは微笑を浮かべる。
「こんなところじゃなければきっと口説いていただろうに残念だな。」
「それは嬉しいわね。でもそんなこと言っていいの?
彼女がきっと悲しむんじゃないかしら。」
「メアリーは無事なのか?」
ジルの口調に力が入る。
「ええ、私の部下と仲良くなったみたいよ。安心していいわ。」
「そうか、それはご丁寧に。ついでにここをこのまま通らせてくれないか
、ってのは無理か?」
「ええ、それは無理ね。」
「あんたはさっきのグラビルよりも格闘は弱そうだ。しかも得意の幻術は
前に破っている。何か奥の手でもあるのか?」
「あら、前のはただの遊びよ。今回は本気でいかしてもらうわ。」
「何。」
「いくわよ。『幻夢術(ドリーム・ビジョン)』。」
シェラハの目が妖しく光る。
するとジルの目の前が急に煙で包まれていく。
「何だ、何も見えない。」
煙は少しずつ晴れていく。煙の向こう側に人影がうっすらと浮かび上がる。
「あれはシェラハか?」
煙が消えた先に立っていたのはシェラハではなかった。
「う、うそだろ。なぜあなたがここに?」
「久しぶりだな、ジル。」
困惑するジルの目の前に立っていたのはジークフリードだった。
「これはきっと幻だ。」
【自制をするのじゃ。】
「でも、でも俺はあなたにもう一度会いたかった。それを幻だからといって
消したくない!」
ジルは幻と分かっていながらも自らの意思で解き放つことが出来なかった。
「(ふふ、かかったわね。)」
シェラハは術にかけたジルが一人立っている姿を見ていた。
「(この幻術はあなたの望む物を映し出す。幻術を自力で打ち破ることが
出来ても望む物が出てくればそれを破ろうとする意思もなくなるっていうわけよね。
さてこれから夢に溺れてしまうのか、悪夢と変わって苦しむか楽しみね。)」
シェラハはおもしろそうにジルの様子を見続けている。
「ここでジル、君の力を見せてもらおうか。」
そう言うとジークフリードは剣を抜いて構えた。
「最強の剣士ジークフリードと剣を交えることが出来る。こんなチャンス
今を逃したらもう2度とない。」
ジルはすごく嬉しそうに剣を握った。
「いいのか、そんなに浮かれていて。さぁ、かかってこい。」
「はい!」
ジルはこのとき、全てのことを忘れて憧れのジークフリードに向かっていった。。
カキーン。
2人の剣が強くぶつかる。
ジークフリードと剣を交わし合うジル。
2人の剣が重なって生じる金属音が鳴り響く。
しばらくして一旦離れた。
「随分強いじゃないか、ジル。これなら胸を張って一人前の剣士
って言えるな。」
「ありがとうございます。」
ジルは憧れのジークフリードに褒められて心から嬉しく思った。
「しかし、君の目指しているものはもっと上にあるのだろう?」
「え、もっと上?」
「そうだ。世界一の剣士になることを目指しているんじゃないのか?」
「そ、そ、それはもちろん。」
「ならばここで俺を超えなければいけない。」
「え、それは無理...。」
「無理じゃない!やるんだ。」
ジークフリードは弱気なジルに語気を強めて言った。
「...分かりました。それじゃ俺本気でいきますよ。」
ジルは決意を固めたように真剣な表情になる。
「それでいい。」
ジルは黒いオーラを一気に放出し剣を構えなおす。
「それは邪気...。惜しいな、邪気を振り払った後の君とやりたかったよ。」
悲しげな表情になったジークフリードもジル同様にオーラを体から放つ。
それは光り輝く黄金のオーラだった。
「やぁぁぁ!」
ガキーン!!!
先程までとは比べ物にならない強い衝撃音が2人の間に鳴り響く。
「ぐっ。(俺から斬りかかったのに何て強さだ。俺の手の方が痺れてる。)」
「ジル、ついてこいよ。」
ジークフリードは合わさった剣を離しジルに素早く攻撃を仕掛ける。
ジルは目を見開いてその攻撃を受ける。
「(ノーザンランドの時とはえらい違いだ。これこそが俺が想像していた
ジークフリードの強さそのものだ。)」
ジルが思いにふける間もなく次々と攻撃が繰り出される。
ジルは必死で受け続ける。
「どうした、防御だけでは勝つことは出来ないぞ。」
しばらくするとたまらずにジルの方から遠ざかって距離をとった。
「(あれほどの速い連続攻撃なのに一撃一撃が重くのしかかる。
この人にはカウンターを狙っても無事ではすまないだろう。
ああもう、考えてても何も浮かばねえよ。こうなったら何も考えず
思いきりぶつかっていくしかないな。)」
ジルは仕切りなおして剣を構える。