「やっぱりハンス王だ。どうして
こんな格好を?」
「いや、城にいるときのあの格好だと町が騒がしく
なってしまうから。」
「城を留守にしたりしても大丈夫なんですか?」
マルクも尋ねた。
「ああそれは影武者がいるから問題ないよ。」
「へぇ~、ところであの花屋の女の子が
好きなんですか?」
ジルが核心をついた。
「えっ!まさか見てたのか?」
ハンス王は急に顔を赤らめた。
「ええ、バッチリと見とりました。
それで、どうなんですか?」
ジルはハンス王にぐいっと近づく。
「いやその...なんていうか...気になると
いうか......実は、好きなんだ。」
ハンス王はもじもじしながら答えた。
「よしここは俺達が人肌脱ぎましょう。
この愛のキューピット、ジル様がいれば
カップル成立間違い無しですよ。」
「誰が愛のキューピットですか!そんなの
初めて聞きましたよ。」
「まあまあ、細かいことは気にしないで。
それじゃあいってみよう、やってみよう。
名付けて『ラブラブ大作戦』!」
ジルのテンションはさらに上がった。
「くはぁー。」
マルクとハンス王は恥ずかしくて
顔が真っ赤になった。
「その『ラブラブ大作戦』っていうのは
どうかと思うんですけど。」
「ん?分かりやすくていいと思ったんだけど。
『LOVE×2大作戦』の方がいい?」
「そういう問題ではなくて。表現が
ストレートすぎるでしょ。もっと
『花屋娘恋愛成就作戦』とか、ねぇハンス王。」
「その名前もどうかと思うが...」
「もう名前なんてどうでもいいよ。」
ジルはボソッと言い放ち話を投げ出した。
「ええぇー。」
自分から言ったことなのにと思う反面、
変な名前がつかなくてほっとするマルクとハンス王だった。
「あの~、そろそろ
作戦の中身の方を教えてくれるかな?」
すっかり落ち着いたハンス王が尋ねた。
「そうでした。まかせてください。
ちゃ~んと考えてありますから。
ところで相手の女の子のことで
知っていることを教えて
もらえますか、ハンス王。」
「いや、ほとんど喋ったことがないから
何にも、名前すら知らないんだ。」
「そんなことだと思いましたよ。
ハンス王の様子を見てたら。
そこで、
『作戦その1』
まず俺が客のふりをして花屋まで
行き、話をし相手の女の子の情報を
聞き出します。」
「へぇ~。」
マルクの顔が不安から笑顔に変わる。
「なんだよ、マルク。」
「最初ふざけてたから、いきなり
告白させたりとか思い切ったこと
するのかと思ってたんで、
意外だなーと感心しました。」
「ちょっと照れるだろ。やめろよ。
で、ハンス王には今日は何もやってもらうことは
ないのでまた明日の朝この辺りに来てください。」
「うむ、分かった。」
そう言ってハンス王は城へと帰っていった。
「それじゃ俺が探りに行ってくるよ。」
「私はいっしょには行かないのですか?」
「ああ、マルクには明日頑張ってもらう予定だから
今日はもう休んでていいよ、ふふふふ。」
ジルは不気味な笑みを浮かべて言った。
「なんか少し恐いんですけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫だから今晩泊まる宿屋でも探して
おいてよ。そんなに時間はかからないはずだから
見つかったらすぐ花屋の近くまできたらいいよ。」
「分かりました。くれぐれも気をつけて。」
マルクに見送られ、ジルは一人で花屋に向かった。