「確かに。そうなればこちらで帝国へ攻めるための準備というのも
必要になるな。」
「そうなれば各国の兵を一つか二つにまずまとめなければいけない。」
「連合軍というものを結成するということか。」
「そういうことになる。それに対して反対するものは?」
サンアルテリア王国外務大臣兼アルテリア連合円卓会議議長である
D=クラプターは皆に確認をする。
残りの5人から何も反対意見は出ることはなく、連合軍の結成が決定した。
船で移動中のジルたち3人。
「どうして船にしたんですか?私の魔法を使えば一瞬で着けるのに。」
マルクがジルに尋ねる。
「そんな急ぐ必要もないだろう。もうちょっとゆっくり楽しみながら行こうぜ。」
「なるほど。そういうことですか。」
「いいね。そういうの。あんまり目的に走って殺伐とした感じになるの
なんて何のためにしてるのか分からなくなっちゃうしね。」
メアリーはジルの意見にうんうんと頷く。
「こういう船旅もいいじゃん。潮風が気持ちいいし。」
「はい。」
3人は笑顔で海を眺める。
D=クラプターは一つの部屋を訪ねる。
「D=クラプターか、どうした?」
「バレンティ首相、少し話があるのだが...。」
「話と言うのは?」
「まず円卓会議の報告だが、連合軍の結成が決定した。」
「そうかこれで帝国に対抗するための体制が出来るのだな。」
「そしてもう一つは提案になる。それは...。」
D=クラプターは盗み聞きされぬように小声で何かを話す。
「どういうことだ?今の状況でそんなことをするのは何の意味もないだろう。
そんなことをするより他に手を回す方が得策だと思うが...。」
「それは大丈夫。前線に影響を及ぼすようなことはないようにする。
これは今回のことに限らずこれから先にも役立つものだと考えている。」
「ふむ、そうだな。それではその件は君に任せよう。」
「ご理解、感謝する。」
D=クラプターは首相の部屋を出た。
たくさんの兵士が対峙する一つの戦場。
ヴェロニス帝国軍がリーカル国の砦バントラスを攻めていた。
「フォルテ将軍、敵の隊長の前に我が軍が押されています。」
後方で戦況を見守る前髪の長く伸びた端整な男に報告が入る。
「そうか、見に行こう。」
フォルテは馬を走らせ前線へと向かった。
その前線では一人の棒使いが帝国軍の兵をバタバタと倒していた。
「ふん、刃も持たぬ者にやられるとは我が軍も大したことはないか。」
棒使いを前にフォルテは言い捨てた。
「お前が帝国の大将か。俺の名はビリー。ここでお前を倒してやろう。」
ビリーは鎧を纏う他の兵士たちと違い服を着ていて頭にバンダナを巻いた軽装だった。
「俺は将軍フォルテ。よかろう、お前を剣の錆にしてやる。」
フォルテは剣を抜いてビリーと対峙する。互いの兵士は交えていた剣を収め
2人を取り囲むようにして様子を見守る。
「こちらから行くぞ。」
先に動いたのはビリーだった。
「んっ!!」
ヒュンヒュンヒュン。
素早く繰り出される突きにフォルテは全身を緊張させて防御にまわる。
「どうした?帝国の将軍とやらはその程度なのか?」
「調子に乗るなぁ!」
フォルテは剣に力を込めてビリーの長い棒を強く弾いた。
「見せてやろう、俺の必殺剣を。」
フォルテは剣を構える。
「来い。俺の必殺技で迎えてやるぞ。」
ビリーも棒を構える。
2人の動きが止まり周囲に緊張が走る。
しばらく静かな時間が続いた後、
「行くぞ、『清流剣』!」
フォルテの体と剣は流れるように綺麗な動きを見せてビリーに斬りかかる。
「おう、『総甲破壊撃』!」
ビリーの棒が太くなるような錯覚を覚えさせるほどの強烈な一撃が放たれる。
互いの攻撃がぶつかりガンッという大きな衝撃音が響き渡った。
2人は無傷で静かに背中を向け合う。
カラン。
フォルテの剣が根元から折れた。
ビリーの棒も真っ二つに切れていた。
「なかなかやるな。俺の必殺剣を受ける奴がいるとはな。だが、次はこうは
いかんぞ。」
「お前こそ、やるじゃないか。こっちも敵の鎧ごと打ち抜く必殺の一撃だったんだがな。」
フォルテは部下たちに撤退の合図を送る。
「お前のような奴、帝国に置いとくには勿体ないんじゃないか。どうだ俺たちの仲間に
ならないか?」
「誰がこれから滅ぶ国に寝返るか。帝国の元でお前が働きたいというのであれば
考えてやってもいいがな。」
「ちぇっ。」
そうしてフォルテ将軍は全軍を自陣へと撤退させた。