「ねぇ、マルク。」
「はい、何でしょうか?」
「ジルったら最近、ずっとボーっとしてるわよね。」
メアリーとマルクは少し離れたところから空を見上げているジルを見ていた。
「そうですね。ジルのお母さんに相談してみますか?」
「ダメよ!そんなことしたらお母さんが心配してしまうでしょ。」
「でもお母さんも気づいているんじゃないですか?」
「だから余計に心配を増やすようなことはしないのよ。」
「そうですね。でもどうしたらいいでしょうか。ここは何もありませんから
退屈して当然と思いますが。」
「そこよね。3人で町に行くっていうのはどうかしら?ちょっとは
退屈も紛れるんじゃないかしら。」
「いいですね。それじゃさっそくジルに言ってみましょう。」
メアリーとマルクはジルの傍に行く。
「ねぇ、ジル。」
「どうした、メアリー。」
「ちょっと退屈してきたんじゃない?よかったら町まで行ってみない?」
「いや、もうしばらくここにいたいんだ。もし2人が退屈してるんだったら
町まで行ってきていいぞ。俺はここで待ってるから。」
「そ、そう...、分かったわ。」
メアリーとマルクは少しがっかりした顔でジルから離れた。
「う~ん、うまくいくと思ったのに。どうしよう?」
「しばらく様子を見るしかないと思いますよ。」
「そうかしら。私はもうちょっと考えてみるわ。」
アルテリア連合軍部にてレビル将軍は一人の男を呼んでいた。
「クラスコ、全兵力の3分の1を連れてギアナ国に向かってくれるか。」
「レビル将軍。お言葉ですが、ギアナ国は軍事国家。帝国ごときに
遅れをとることはないと思います。それを3分の1も援軍に出すというのは
必要ないのでは?」
「それはそうかもしれないが、どうも帝国で不穏な動きがあるようでな。
あの聖騎士カフィールが帝国側についたという噂がある。ギアナを潰して
一気にこちらを滅ぼそうと考えるかもしれないのだ。」
「え!あのカフィールが。とても信じられません。何か弱みでも握られているの
でしょうか?」
「さぁ、そこまでは知らん。しかし、帝国の力を先のリーカル戦でのものが最大と
考えるは危険であろう。リーカルには傭兵部隊も集められていると聞く。
ならば、この2:1で援軍を分けるのが良策だと思う。」
「分かりました。それではギアナの守りを堅めに行きましょう。」
「うむ、頼んだぞ。」
クラスコはレビルに礼をして下がっていった。
帝国内の町をデュラハンを先頭とする黒騎士団が横切っていた。
「グォォォォ...。」
周りに低い呻き声が響き渡る。
「何あれ、すごい異様だわ。」
その姿はまさしく亡霊の集団であり、とても人間の国の軍とは
思えないものだった。。
「しっ、大きな声で言うんじゃないぞ。聞かれでもしたら
命がないかもしれないぞ。」
皆、声を潜めて不安げに通りすぎていくのを眺めていた。
「ひぃぃぃ!!一体私が何をしたというのですか?」
一人の男が恐怖で顔を引きつらせながら壁に背をひっつける。
そこに対面していたのは白騎士団を引き連れたカフィールだった。
「お前は帝国の不穏分子との情報が入った。そのようなものは一人として
見過ごすわけにはいかない。」
「私は何も悪いことなどしていませんよぉ。何かの間違いです、きっと。」
「それではこの書類に書かれていることに覚えはあるか?」
カフィールは男に一枚の紙を見せ付ける。
「た、確かに事実ですがこれのどこが帝国にとって悪いのですか?」
「これは皇帝の意思に反するものだ。これを事実と認めたのならば
死をもって償うがいい。」
カフィールは軍支給の鋼の剣を鞘から抜いて手にする。
「そ、そんな馬鹿な。こんなものはただの横暴だ!」
「もはや話をすることは何もない。」
ブシュッ!
カフィールは手にした剣で男の心臓を貫いた。
「さぁ、次に行くぞ。」
カフィールは淡々とした口調で部下を引き連れ男の家を出た。
その姿を見ていた人々は暗い表情でため息をついていた。
「カフィール様が帝国に入ってよくなると思っていたのに...。」
「罪のない人を殺すなんて...。」
「皇帝のせいでおかしくなったんじゃないかしら。」
「カフィールは正義の味方なんかじゃない。悪の手先だ。」
カフィールに対する人々の評判はこの日から悪いものへとひっくり返った。
「(人にどう思われようが構わない。俺は俺の信じる正義への道を進むだけだ。)」
カフィールは人々の落胆の声を背に次の目的地へ進んでいった。