空をぼ~っと見上げるジル。
ふとその顔をマルクとメアリーの方に向ける。
「そろそろ行くか。」
その顔には先ほどまでの虚無感はなく生き生きとした笑顔があった。
「え、え...。」
突然で戸惑う2人。
「そうだな、次はランドールのハンス王に会いに行こうか。」
ジルは2人を気にすることなく勝手に提案をする。
「ちょ、何勝手に決めようとしてるのよ。ついさっきまでうつ病みたいに
なってた人が。」
「いいですね。私もハンス王には会いたいです。」
「メアリー、すまなかったな。心配かけて。」
ジルはメアリーの肩にぽんと片手をかける。
「し、心配なんかしてないわよ。調子に乗んないでよね。」
「そうか。ならよかった。」
ジルの穏やかな笑顔にメアリーは胸がキュンとなった。
「う、うん。」
こうして3人はランドールへと向かった。
一方、ギアナ国国境。
監視官が望遠鏡で何かを見つける。そして慌てて隊長の元へと走る。
「隊長、大変です。ヴェロニス帝国の奴らが攻めてきました。」
「うろたえるな、ばか者。リーカルにも勝てないような帝国なぞ
我が軍の敵ではないわ。」
「そ、そうですね。」
隊長の言葉を聞いて監視官は落ち着いた。
ギアナ軍はその砦の前にて帝国軍を迎え撃つ体勢をとった。
「何だ、わが国を攻めてくるからどんな大軍が来るのかと思ったら
たった数百だけではないか。わが国も舐められたものだな。」
帝国軍はデュラハンを先頭とする黒騎士団だった。
黒騎士団は小さく不気味な呻き声を上げながらギアナ軍へ迫った。
「いけー!帝国軍など一気に叩き潰せ!!」
隊長の号令と共にギアナ軍は帝国軍にぶつかっていく。
ズバッ!
ギアナ軍兵士が帝国軍兵士の腕を切り落とす。
「よし!」
ギアナ軍兵士が勢いづこうとしたとき、異様な光景を目の当たりにした。
帝国軍兵士が切り落とされた腕を拾って元の通りにくっつけたのだった。
「え!」
ギアナ兵は驚くと共に別の帝国兵に胸を貫かれた。
そのような状況があちこちで見られ、数で圧倒していたギアナ軍だったが
戦況は一気に帝国側へと傾いていった。
「ば、ばかな。何なんだ、こいつら..は...。」
ズバッ!
切り込んでいたデュラハンが隊長の首を手にしていた剣で掻っ切った。
隊長の首からは大量の血が噴出し、ギアナ兵たちは一瞬手が止まる。
その隙に帝国の攻撃を受け一気にギアナ軍は全滅へと追い込まれた。
「ぐぉぉぉぉ!!」
帝国軍、黒騎士団は大きな声を上げた。
それは勝利に酔いしれているかのようでもあった。
ただ一人、デュラハンは無言でギアナ兵の死体で赤く染まった戦場を眺めていた。
「陛下、黒騎士団がギアナの最初の砦ボッドを落としました。」
ザムザが皇帝に片膝をついて報告をする。
「そうか、分かった。下がっていいぞ。」
「え、そ、それだけですか?」
何の表情も見せず簡単に返事する皇帝にザムザは呆気にとられて顔を上げる。
「聞こえなかったのか。下がれと言ったのだ。」
皇帝は不機嫌そうに言う。
「はは。」
ザムザは気圧されすぐに部屋を出た。
「なぜだ?これは大きな戦果のはずだ。それについてほとんど関心がなさそうに。
しかも私への待遇のなんと粗末なことか。用がなければあの小さな窓一つない
部屋から出ることを許されないなんて。私を囚人と勘違いしているのではあるまいな。」
ザムザは不満を思いながら自室へと戻った。
「エミルよ、どう思う?」
皇帝はそばにいたエミルへ問いかける。
「は。やはりアルテリア連合侵攻の足がかりが出来たことは喜ばしいことだと
思います。」
エミルは帝国を褒めるようにまた気遣うように答えた。
「お前はまだまだか。必要なことは次の一手だ。こんな些末事で喜ぶなどもっての他だ。
軍師としての役割を果たすため考えておけ。」
皇帝は少し落胆した調子で言った。
「は。申し訳ありません。ただ聞かせて頂いたゾンビ兵の特徴を考えれば次も問題は
ないかと思われます。」
「ほぉ、余と同じ考えだな。してその後は?」
「は、はい。畏れながら申し上げさせてもらえれば次の次で一旦撤退するのが良策かと。
そこから先も申し上げた方がよろしいのでしょうか?」
「はっはっは!よいよい。そこまで余と同じ考えであれば文句を言う必要はない。
やはりお前は見込み通りの男だったようだな。」
皇帝は満足げに笑いながら言った。
「ありがたきお言葉。」
エミルは皇帝の言葉にほっと胸を撫で下ろした。
ここはギアナ城。
「なにぃ!我が軍が帝国軍にやられただと。この恥さらしがっ!」
ギアナ国王は報告に来た兵を怒鳴り散らす。
「そ、それが、逃げ出した唯一人の兵に聞きますと相手は腕を切り落としても
すぐにくっつけて攻撃してくる不死身の化け物だと言うのです。」
「何!?不死身の化け物。まさか皇帝の奴、モンスターと手を組んだとでも
言うのか?だとしても我が軍に敗北など許されない。火矢を使え。
化け物を焼き尽くすのだ!」
「ははぁ。」
兵はギアナ国王の命令を受け、下がっていった。