帝国軍黒騎士団はギアナ国のウルジナ平原へと足を進めていた。
そこから大きく離れたところにギアナ軍が待ち構えていた。
今回のギアナ軍は大半を弓兵で占められていて、射程範囲を確認しながら
弓を引く準備をしていた。
「ここで食い止めなければ町への進入を許すことになる。
ギアナ国の誇りにかけてここで全滅をさせるぞ!」
「おー!!」
ギアナ軍の士気が上がる。
「ぐぉぉぉぉ。」
黒騎士団は相変わらず低い呻き声を上げながら、ギアナ軍へと近づいていく。
「今だ!!射てーっ!!」
隊長の合図と共に黒騎士団へ向けて一斉に火矢が放たれる。
それはまさしく赤い雨のように降り注いでいく。
黒騎士団の動きがそれによって鈍くなる。
しばらく攻撃が続いた後、
「よし、撃ち方やめーっ!」
隊長が攻撃を止める合図を出す。
矢の雨から現れてきたのはほとんど変わらず、進んでくる黒騎士団の姿だった。
「そ、そんなばかな。」
隊長、弓部隊共々驚きを隠せない。
火矢によって焼かれたゾンビ兵は急所に当たった少数だけで他は何のダメージ
も受けていないかのようにギアナ軍へと向かってくる。
ギアナ軍は怯えるように普通の矢をゾンビ兵たちに射ち続けるもほとんど
効果はなく、やられる一方だった。
黒騎士団の中心にいるデュラハンは一直線に突き進み、ギアナ軍の隊列は
真ん中が空いて態勢ががたがたに崩れていった。
一部松明などを手にして直接ゾンビ兵を焼こうとする者もいたがもはやこの戦いの流れは
完全に帝国側に傾き、焼かれたゾンビ兵は10名にも満たなかった。
戦いが終わるころには再びギアナ兵の死体の山が出来ていた。
それから数時間後、クラスコがフォーン国の聖騎士部隊を引き連れ無残な戦場跡
へと駆けつけた。しかし、そこに帝国軍の姿は見当たらなかった。
「これは...。」
クラスコは言葉を失ったまましばらく立ち尽くしていた。
「クラスコ殿、敵は撤退したのですか?」
聖騎士の一人が尋ねた。
「そ、そのようだな...。」
「なぜ撤退したのでしょうか!?」
「さぁ、分からない。(まさか俺が聖騎士たちを連れてくることを
先読みしていたとでも言うのか。いや、ばかな。そんなはずはない。
これはきっと偶然だ。恐らく帝国側に何か事情があったのだろう。
そうでなければ連合軍は帝国には勝てない。)」
クラスコは複雑な心境で戻ることになった。
ジルたちはエトールへと到着した。
「王女様の頼みって何だろうな?もしかして俺と結婚したい
とかかな。」
バコッ!
メアリーがジルの頭を叩く。
「いててて。」
「そんなわけないでしょ、バカッ!!」
「怒るなよ。別に俺は好きじゃないしな。ああいうお堅い感じは。」
「別に怒ってなんかないわよ!」
「(この2人、どうしたらいいのでしょう。)とにかく会いに行きましょうよ。」
「ああ。」
3人はエトールの城へと向かった。
「ようこそ、エトール城へ。」
門の前に立つ兵士は義務的な口調で言った。
「ここはみんなこんな感じかな?」
ジルはそう呟きながら女王の間へと足を進めた。
「ようこそ、エトール城へ。どうぞ、ゆっくりして...あら?」
出迎えるレナ王女はジルをじっと見た。
「あぁ、あなたはジルですね。お待ちしていました。」
ジルは頭をポリポリと掻きながら、
「ハンス王から聞いたんすけど、俺らに頼みがあるとかって何?」
とレナ王女に尋ねた。
「すいませんね。わざわざ来てもらって。」
「気遣いはいいんだよ。早く用件を言ってくれ。」
「分かりました。単刀直入に言いましょう。ヴェロニス皇帝に会ってきてもらいたいのです。」
「何故そんなことを俺らに頼むんだ?」」
「実はサンアルテリア王国の外務大臣、D=クラプターに皇帝を倒せる者が
いないかと聞かれたのです。私が知る限りD=クラプターは信用出来る人物です。
その彼がそう判断したということは皇帝は危険なのでしょう。現に帝国は他国を
侵略して領土を拡大しています。しかし、私自身どうしても皇帝を悪人と決めつける
ことが出来ないのです。これは唯の直感なのですが...。」
「そこで俺たちに確かめて欲しいと?」
「ええ。私が直接行くのが筋なのでしょうが、国を離れるのは難しい。」
「それに帝国に行くのは怖いってことか。」
ジルは少し馬鹿にした言い方をした。
「ジル、それは言いすぎですよ。」
マルクが諭すように言う。
「いいえ、構いません。本当はそれが正直なところです。勝手なお願いですが、
引き受けてはくれませんか?」
「そうだな。俺たちも興味はあるし引き受けてもいいかな。2人はどう思う?」
ジルはマルクとメアリーに問う。
「私は引き受けるべきだと思います。」
「ええ、もちろんOKよ。ほっといたら私の国だって危ないかもしれないしね。」
「あら、あなたはサンアルテリア王国のメアリー姫ですか?」
「はい。以前にお会いしたことがありましたね。」
「あなたもいっしょに旅を?」
「そんなところです。」
メアリーは笑顔で答えた。
「決まりだな。女王様、この依頼引き受けるぜ。」
「ありがとうございます。船の手配と帝国への入国許可証はこちらで用意しましょう。」
「あ、俺とマルクの入国許可証はあるから一つでいいぜ。」
「分かりました。船のチケットを3人分と入国許可証を一つでいいですね。」
「ああ。」
3人はそれらをレナ王女から受け取りエトール城を後にした。