dark legend   作:mathto

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「ザムザ、これまでの功績を称えてお前と黒騎士団にネーデル村の

守備を任せる。」

ヴェロニス皇帝がザムザに命じる。

「陛下。確かにネーデル村は帝都へ攻め入る場合要所となる村ですが、

今の状勢を考えれば黒騎士団は前線へ配置する方がよろしいかと...。」

「ザムザ、お前は軍師ではない。何も考える必要などない。ただ余の

言う通りに動けばいいのだ。分からぬか?」

皇帝は冷たい視線でザムザを見る。

「い、いえ。そんなことはありません。分かりました。ネーデル村へ

向かいます。」

「うむ。分かればいい。下がれ。」

それだけ言うと皇帝はザムザを下がらせた。

 

「陛下、よろしいのですか?あれではザムザの不平を募らせるだけかと。」

ザムザがいなくなったところで軍師エミルが尋ねる。

「お前も分かっているだろう。あれはもう用済みだ。前線に送り出したところで

連合の勢いをつけるきっかけになりかねん。それよりもネーデル村に置いた

方がおもしろいことになるかもしれないからな。」

皇帝は少し笑みをもらす。

「そのようにお考えでしたか。失礼致しました。」

エミルは陛下に謝罪した。

「ところで、エミル。これからのこともちろん考えていような?

黒騎士団は当然だがカフィールを含め白騎士団も国内での活動に

回らせるから使えないぞ。」

「はい、分かっております。迅速な行動とタイミングをうまく合わせれれば

作戦の成功は間違いないかと思われます。その為に本隊の大半をつぎ込む

ような形になりますがよろしいでしょうか?」

エミルは確認するように皇帝に問う。

「もちろんだ。お前が思うように使え。」

「ありがとうございます。このエミル、必ずや陛下の期待に応えてみせましょう。」

「うむ。連合の中ではギアナ国の制圧でこちらが息切れを起こしていると

思っている者もいるだろう。ここからセカンドターンの始まりであると

いうことを知らしめるのだ。」

 

ザムザは与えられていた部屋にいた。

「おのれ、皇帝め。私をこれほどまでに冷遇してただで済むと思うな。

すぐに後悔させてやる。」

ザムザは皇帝に対する復讐心を募らせていた。

 

 

 

アルテリア連合軍本隊にて。

「円卓会議で帝国への反攻、ギアナ国の奪還が決議された。

どう思う、カシム。」

レビルはカシムと呼ばれる若い男に問いかける。

「それはもうチャンスじゃないでしょうか。今までの帝国の

攻め方を見れば、なりふり構っていられないという感じでした。

ゾンビ兵を使ったり、カフィールを引っ張り出してきたりして

恐らく本隊の戦力はギアナを制圧したもので全てではないでしょうか?」

「うむ。どう考えてもその通りなのだが、何か引っかかるな。

果たして帝国本隊の戦力がその程度のものなのかが...。」

「考えすぎですよ。大きな戦力があればわざわざ変な小細工をしなくても

力押しで進めればいいだけでしょう。それをしないのは出来ないからですよ。

ギアナ国さえ取り戻せばこちらの勝利は揺るがないでしょう。」

カシムは力を込めてレビルに言った。

「そう単純なものではないと思うがな。まぁ、しかしゾンビ兵対策として

アンデッドモンスターに強い僧侶を軍に呼んでいる。敵が一息ついていることも事実。

ならばこちらから攻めてみるのも悪くないか。」

レビルは少しやる気を見せだす。

「それに、今までやられっぱなしで何とか仕返しをしたいと思っている

兵たちも多いはずですよ。」

「確かに。戦う者として勝利を知らないというのはつらいものだな。

よし、クラスコに連絡を取れ。2方からギアナ国にいる帝国軍へ攻撃を仕掛ける。」

「はい。」

カシムは気持ちを高ぶらせて部下へクラスコの元へと向かうよう命令を

しに行った。

「...、サンアルテリア王国では何やら大規模な都市開発をしているという噂を聞いた。

サンアルテリア王国の上の連中はこんな状況で何を考えているのやら。

そんな余裕があるのなら軍の戦力を増強する方に力を入れてくれればいいのにと

思うのだが...。まぁ、それぞれ役割分担があるということだろうか。

こちらはこちらでこれから始まる目の前の戦いに全力を尽くすとしよう。」

 

それからしばらくして帝国領ネーデル村で。

「殺せ。村人を1人残らず殺しつくせ。」

ザムザに命令をされて黒騎士団のゾンビ兵たちは村人を次々と殺していった。

「きゃー!」

「うわぁ!!」

村のあちこちで逃げ惑いながら殺されていく村人たちの悲鳴が響いていた。

「はっはっは。これで皇帝は私への待遇を間違えたことと後悔することだろう。」

ザムザは邪悪な笑みで凄惨な村の様子を眺めていた。


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