「もうすぐネーデル村ですね。そこを過ぎれば、帝都までそんなに
遠くないみたいですね。」
マルクが地図を見ながら言う。
「何だか嫌な予感がするな。この感じ、前にもあったような...。」
ネーデル村の方を見ながらジルは言った。
「嫌な予感って何よ?とにかく行ってみましょうよ。」
メアリーは何も気にすることなくネーデル村へ向かおうとする。
ジルとマルクも一緒に歩いていく。
ネーデル村に辿り着いた3人はその惨状に呆然と立ち尽くしていた。
そこには生きている人は1人もいなかった。
元は兵士であった者、村人であった者がゾンビとして彷徨っていた。
「ウゥ~。」
彷徨うそれらが皆低い呻き声を上げていた。
「何だか可哀そうね。」
「そうですね。そんな感じがすごい伝わってきますね。」
「一体誰がこんなことを...。」
そこへ1人の小柄な老人、ザムザが現れた。
「生贄が現れたようだな。ゾンビどもよ、集まれ。」
ザムザの命令に従い彷徨っていたゾンビたちはザムザの下にゾロゾロと集まりだした。
「お前か。こんなことをしたのは。」
ジルの声には怒りが込められていた。
「何だ、やる気か?これだけの数、僧侶や聖騎士でも苦しいはずだぞ。」
ザムザはにやにやとしていた。
そしてすぐにザムザの前に大量のゾンビたちが出てきて、ジルたちの行く手に立ちふさがる。
「お前ら、行け!」
ザムザの命令でゾンビたちはジルたちに襲い掛かる。
「くっ、マルクは下がってろ。」
ジルはそう言ってマルクを下がらせると剣を抜いて応戦する。
ジルはゾンビが動けなくなるよう、ゾンビの四肢を素早く切断していく。
「私も戦うわ。『ファイアウォール』!」
メアリーは立ち上がる炎で耐火仕様の鎧を身に着けたゾンビ兵でさえも焼いていく。
しかし、数のあまりの多さに2人はしだいに追い詰められていく。
ジルとメアリーは苦しみの表情を浮かべる。
「ジル、私も戦いますよ。」
マルクが前に出ようとしたところでジルが手で制する。
「マルクは後ろでサポートをしてくれ。前には出てくるな。」
ジルは必死に戦いながらマルクを止める。
ゾンビたちと戦うジルたち。
「(まだ本調子じゃないな。これはまずいな。)」
「はっはっは。無駄なあがきはやめたらどうだ?」
唇を噛み締めるジルとは反対にザムザは笑っていた。
「どうする、ジル?」
メアリーは魔法力が尽きようとしていた。
「こうなったら逃げるしかないか。」
追い詰められたジルが諦めて逃走を提案したとき、
ボォォォォ!!!
ジルたちの目の前を巨大な炎が横断する。
炎はジルたちの目の前にいたゾンビたちを一掃した。
「何だ!」
ジルたち3人、そしてザムザも突然の出来事に驚き炎が現れた方角を向く。
そこに現れたのは体を炎で包んだ魔人だった。
そして傍には1人の女性が立っていた。
「イフリート、ゾンビを全て焼き払って。」
女性が命じると
「グォォォ。」
返事するように雄叫びを上げた。と、同時にイフリートは体に纏った炎を
ゾンビに向けて放った。
その強烈なまでの炎はゾンビ兵の耐火仕様の鎧などなかったかのように
一瞬で全てを焼いていく。
「ぐぬぅぅぅ。」
ザムザは悔しさを感じながらも自分の身の危険を案じてまだ炎が燃え盛る中、
駆け足で逃げ出した。
ジルたちは炎が納まるのをじっと待っていた。
やがて炎が消えると後には炭や灰と煙だけが残っていた。
「ありがとう、イフリート。」
女性がイフリートに礼を言うとイフリートはその姿をすぅっと消していった。
そして女性はジルたちの方に近づいてきた。
「久しぶりね。」
女性は笑顔で挨拶をした。
「え!」
3人はイフリートの登場とはまた違う驚きだった。
「ジルとマルクの知り合いなの?」
「い、いや、覚えが...。」
ジルは思い出そうとしても思い出せない困った顔をした。
「何言っているの?私よ、パティ。忘れちゃったの?」
「え、えぇぇぇ!!」
ジルとマルクはさらに驚いた。
「パティってあのパティか?」
ジルは信じられないという表情で尋ねる。
「どのパティがいるのよ。一緒に旅をしたでしょ、もう。」
「で、でもあんなに小さかったのに私たちとそれほど変わらないくらいに
大きくなってますよ。」
「ああ、それはね。幻獣界とこのテラでは時間の流れが違うみたいなのよ。」
「そ、そんな。こんなに大きくなるなんて。」
ジルは驚きながらパティの大きくなった胸をじっと見ていた。
「ちょっとどこ見てんのよ。」
メアリーは怒ってジルの耳を引っ張る。