「あれ、この人はジルの彼女?」
パティはメアリーに気づいて尋ねた。
「違う、違う。メアリーはただの仲間だよ。」
ジルがそう言うと、メアリーは笑顔で
「パティちゃんはいい子ね。私はメアリー、よろしくね。」
そう言いながらメアリーはジルのお尻にそっと手をやりぎゅっとつねった。
「いってぇ!!」
ジルは痛みに耐え切れず走り回った。
「(こ、こわい。)」
パティとマルクはともにメアリーを見て思った。
「それにしてもパティ。さっきのイフリートはすごかったですね。」
マルクは話題を変える。
「うん。幻獣界で幻獣達といっぱい仲良くなったのよ。」
パティは嬉しそうに答える。
そこへ痛みが何とか治まったジルが戻ってきた。
「まったくもう。それよりパティ、また俺らと一緒に行けるのか?」
ジルはパティを真っ直ぐに見て言った。
「うん。そのつもりで探していたのよ。」
パティは満面の笑顔で返事をした。
4人が和やかな雰囲気になった中、薄まってきた煙の向こう側から1人の騎士が
現れる。漆黒の甲冑に身を包んだ死霊騎士デュラハンだった。
それに気づいた4人は一気に緊張が高まる。
「マルク、メアリー、パティ、お前らは下がっていろ。こいつは俺の相手だ。」
「でも...。」
そう言いかけたメアリーだったが、ジルの真剣な表情に黙って後ろに下がった。
マルクとパティも素直にそれに従った。
デュラハンは剣を抜いて構えると馬に跨ったままジルに向かって突っ込んできた。
ジルも剣を抜いて待ち構える。
「(来る。)」
デュラハンがジルの目の前に迫り2人の剣が交差する。
ガキーン!
大きな剣のぶつかる音が聞こえるとデュラハンはグルリと回ってジルから一旦離れた。
「(こいつは強い。いやそれよりもこいつからは深い憎悪しか感じられない。)」
それから何度も2人はぶつかり剣を交えあい互角の戦いを続ける。
「ジル!」
マルクが心配して声をかける。
「マルク、手を出すんじゃないぞ。これは俺の力を取り戻す戦いでもあるんだからな。」
ジルはそう言ってマルクの心配を遮る。
「(さぁ、来いよ。)」
ジルは近づくデュラハンに対して狙いすます。
ブンッ!
ジルの気合の籠もった剣戟はデュラハンに打ち合うことを避けさせ馬から
飛び上がらせた。
デュラハンの乗っていた馬はそのまま走り過ぎていく。
2人は剣を構えたまま向かい合う。
お互いにその間合いを詰めず緊張した空気が走る。
「行くぞ!」
ジルはデュラハンに攻撃を仕掛ける。
ガキーン!
剣のぶつかる衝撃音が大きく響き渡る。
2人の剣戟は一気に激しさを増し、お互いに一歩も引かなかった。
「はぁはぁ、はぁ。」
激しい戦いの中でジルは息を切らしていた。
「(何なんだよ、こいつは...。)」
ジルは少し焦りを感じ始めていた。
そこでデュラハンは紫のオーラを放った。
それはジルの方まで包もうとする。
「ぐ、ぐぁぁ。」
ジルは紫のオーラに触れた途端、急に苦しみだす。
「ジル!」
マルクは思わず声を上げる。
「(憎しみが心から湧き上がってくる。う、う、自分が自分でなくなっていきそうだ。)」
ジルは苦しみに顔を歪める。
「『イエローフローラル』。」
マルクはジルに向かって黄色い風を送る。
「ふぅ、ふぅ。」
マルクの魔法によってジルは落ち着きを取り戻す。
「サンキュー、マルク。助かったよ。」
笑顔でジルはマルクに礼を言う。
「俺には仲間がいるんだ。俺1人気負いしてたかな。」
ジルは穏やかな表情で剣を構えた。
「さぁ、行くぞ!」
ジルから白いオーラが放たれデュラハンに向かう。
ジルは肩の力が抜けたようにのびのびと剣を振るう。
これまで互角だった戦いを徐々にジルが押していく。
そして、遂にジルはデュラハンを建物の壁際まで追い詰める。
「止めだ!『オーラブレイク』!!」
ジルのオーラを纏った剣は必殺の一撃でデュラハンの剣、甲冑を破砕する。
「やったー!」
離れたところから見守るメアリーたちが喜びの声を上げる。
「ん?」
ジルは砕けた甲冑を見つめる。甲冑の中に人の体はなかった。そこからは紫のオーラが
天に向かってゆらゆらと立ち上っていた。
「こいつは何かの怨念が甲冑に憑いたものだったのか...。」
ジルの下へ3人が駆け寄る。
「大丈夫だった?」
メアリーが笑顔で声をかける。
「ああ、これでやっと復活したって感じがするな。」
「そうですね。」
「ジル、すごい強いんだね。びっくりしたよ。」
久しぶりに見たジルの戦いにパティは興奮と驚きを感じていた。
「ははは、ホントは結構一杯一杯だったんだけどな。」
戦いが終わり、4人は一息ついた。