「くそっ。私があんな奴らにやられるなんて。」
ザムザは悔しさを顕にしながらネーデル村から離れるように歩いていた。
「ん?」
ザムザの前に1人の少年が立ち塞がる。
「邪悪な気配を辿ってここに来た。」
少年は言葉に何の感情も表さず独り言のように言った。
「何だ、このガキは?迷子か?」
ザムザは少年を見下していた。
「俺はダニエル=シールダー。勇者の血を引く者だ。」
「はぁ、勇者だぁ?いかれたガキが何をほざく。ちょうどいい。
お前を殺して私の奴隷として働かせてやろうか。」
「死ぬのはお前だ。」
ダニエルは背中に背負った鞘から聖剣エクスカリバーを引き抜く。
引き抜かれた剣は聖剣に相応しい黄金の輝きを放っていた。
「ほぉ、ガキには過ぎたオモチャだな。お前を殺した後に私がもらってやろうか。」
ザムザはダニエルを完全に下にみていた。
「さっさと攻撃してこいよ、雑魚。」
ダニエルは挑発するように言い放つ。
「何だと!私を雑魚呼ばわりとは...。よほど死にたいらしいな。
いいだろう。お前に後悔させてやるぞ。」
ザムザは手のひらをダニエルに向ける。
「死ねっ!」
ザムザの手から黒い光がダニエル目掛けて放たれる。
ボンッ。
ダニエルは横に避け黒い光は地面にぶつかり、砂煙を巻き上げるだけだった。
「ちっ、外したか。運がいいな。だが次は外さん。」
ザムザはさっきと同じように黒い光を放つ。
ダニエルは飛び上がって黒い光を回避するとそのままザムザの目の前で着地した。
「終わりだ。」
ズバッ。
ダニエルの聖剣は横薙ぎにザムザの腹を切り裂き、ザムザの体は2つに分かれた。
ブシュゥゥ。
ザムザの体からは大量の血が噴出していた。
「こ、こんなガキに私がやら、れ、る、なん、て...。」
ザムザはガクッと首を擡げて沈黙した。
ダニエルは空を見上げる。
「これでいいのか、カフィール。俺は誇り高い勇者の子孫として
邪悪な者たちを倒していく。それで俺はこのエクスカリバーに相応しい人間に
なれるだろうか?」
ダニエルは目の前にいないカフィールに、そして自分自身に問いかけるように
言った。
「ついに来たな。」
ジルたちはヴェロニス皇帝のいる帝都までやってきていた。
「で、どうするの?もしかして正面から会いに行く?」
メアリーはテンションを上げてジルに聞く。
「まさか忍び込んだりしませんよね?」
マルクはドキドキしながら尋ねる。
「そうだな...。う~んと、とりあえず行くか。」
ジルは不敵な笑みを浮かべながら、城の前まで向かう。
城門には2人の兵士が立っていた。
「やっぱり正面突破ね。」
「まぁ、...。」
ジルはそう言って兵士に1人近づく。
「これを皇帝に渡して欲しい。」
ジルは兵士に封筒を一つ渡すと一旦下がってみんなの元に戻った。
「何してたの?」
パティが尋ねる。
「ふふ。秘密兵器かな。」
ジルは含み笑いをしてみんなに隠す。
しばらくすると兵士がジルに近づく。
「おい、皇帝陛下への謁見が許可された。入っていいぞ。」
そうしてジルたちは城の中へと案内された。
「ここで待つように言われている。大人しくしているのだぞ。」
広間へと案内すると兵士はまた持ち場へと戻っていった。
「それで一体何をしたのですか?」
今度はマルクが尋ねる。
「実はエトールの女王様から手紙をこっそりと預かってな。それで
皇帝に会えるだろうって。」
「なぁ~んだ。そんなものがあったんなら最初から言いなさいよ。」
「いや、ちょっとみんなを驚かせたかったんだよ。」
「それほど驚くようなことでもないと思いますが。」
「ちぇ、ノリが悪いな。まぁそんなことは本当にどうでもいいんだけどな。」
「会ってどうするかよね。」
「そうだな。」
ジルは真剣な表情になる。
「平和的な方向に持っていければいいですね。」
「それは相手の考え次第だが...。来たか。」
目前の赤絨毯の敷かれた広い階段より1人の男が降りてくる。
この国で誰よりも高い地位にいるに相応しい身なり、容姿端麗な様子は
ジルたち4人全てが緊張で身構えてしまう。
その男、ヴェロニス帝国皇帝キルヒハイス=ヴェロニスは不敵な笑みを浮かべる。
「よく来たな、エトールのレナ王女の使者よ。」