リーカルの国境近くの帝国領にいる連合軍本隊陣地。
「レビル将軍、円卓会議での決定事項です。」
そう言って、使いのものが座って待機しているレビル将軍に筒状に丸められた一枚の書状を渡す。
「これは...。そうかいよいよか。」
書状に目を通したレビルは決意の表情に変わり、書状をまた丸めて横に置いた。
そして立ち上がる。
レビルは待機している軍を召集した。
「諸君。これまで帝国にいいように攻められ、言葉に出来ないほどの悔しい思いを
して耐え忍んできたことだろう。しかし!これより我が軍は帝国へ反攻を行う。
これで失われてきたたくさんの同士の命を報わせてやることが出来る。
負けるのではない。絶対に勝ちにいくのだ!帝国は今までで全ての手を出し尽くしている。
今の状況は決して不利なものではない。自信を持って戦いに行くぞ!」
レビルは力を込めて兵たちに伝える。
「おおーーっ!!」
兵たちは皆、拳を握り上げ意気を高めていった。
帝国軍に占領されたギアナ国を囲うようにして防衛線を張っているクラスコ率いる連合軍別働隊。
「クラスコ様、レビル将軍より伝令です。」
クラスコはその手紙を読むと、自身の感情の昂ぶりを抑えられずにはいれなかった。
「よし!ついに来たぞ、この時が。」
クラスコも兵たちに大きな声で伝える。
「これよりギアナ国を攻める。帝国から我らの土地を取り戻すのだ。
何も考えるな。とにかく前へ進むんだ。そうすれが道は開ける。」
「おー!!」
クラスコの軍は間もなくギアナ国に駐屯する帝国軍と戦闘に入ることとなった。
ガキーン!ガキーン!
ギアナ国では剣と剣がぶつかり合う金属音があちこちで鳴り響いていた。
クラスコの連合軍と帝国軍の戦いは互角に近い形で激しさを増していく。
「フォルテ将軍、どう致しましょう。」
ギアナ城にいる帝国のフォルテ将軍に兵士が指示を乞う。
「本国より死守せよとの指令が出ている。帝国の名誉と威信にかけて
なんとしてもここは耐えねばならない。俺も出る。」
フォルテは鎧を身に纏い剣を手にして城を出た。
「お前らー!帝国兵としての力、奴らに見せてやれー。」
フォルテは兵士たちに檄を飛ばしながら連合軍の兵士を次々に斬っていく。
フォルテの活躍で僅かずつではあるが、流れは帝国側へと流れようとしていた。
帝国軍に流れが僅かに傾きかけた時、
連合軍の援軍がギアナ国の帝国方面から現れる。
「フォルテ将軍!大変です。敵の援軍が現れました。
しかも大軍です。恐らく敵の本隊と思われます。」
「ばかな!本隊が挟み撃ちしてくるのか。これでは我々は
全滅してしまうぞ。」
フォルテ将軍は苦い顔をしながら必死で戦い続ける。
「耐えろ!このギアナは我が国が攻めていく上で要所となる国。
ここは何としてでも守り抜くんだ!!」
フォルテが檄を飛ばすも帝国軍は一方的に押されていく。
「行けるぞ!皆の者、一気に攻め落とすぞ!!」
「おおーーっ!!」
レビル将軍の気合が兵たちに伝わり連合軍の勢いが増していく。
連合軍の勝利が揺るぎないものに見えてきたその時、
「将軍、後方より別の部隊が現れました。」
「どういうことだ?もう味方の増援はいないはずだが...。」
「レビル将軍!あれは帝国軍です。帝国軍の応援部隊です。」
「何!」
レビルは驚きを隠せず迫り来る帝国軍の応援部隊の方を見る。
「あ、あれは...。」
レビルの目には迫り来る帝国軍の先頭に立つ男がはっきりと映っていた。
「ラングか!」
その男、ラングは長柄の斧を手に連合軍へと向かってきた。
「我等が帝国の底力、ここで見せてやるのだ!!」
ラング将軍率いる帝国軍の登場で連合軍に完全に傾いていた流れは
そのまま逆方向へと変わってしまった。
「く。まさか裏の裏をかいてくるとは。ヴェロニスの皇帝かもしくは
その傍にいる者がまさかここまでとは。」
レビル将軍が舌を噛むのを尻目にラング将軍は勢いよく次々と連合軍兵士を
自慢の大斧を振り回して切り裂いていく。
「フォルテ将軍。ラング将軍が応援に駆けつけてくれた模様です。」
「そうか。よし、勝機は我らにあり。お前らーっ、連合の腰抜けどもを
討ち倒すぞぉっ!」
「おおぉぉぉ!!!」
最終的に戦術を上回られた連合軍は総崩れの形となり陣形は散り散りと
なっていく。
少ししてラングはレビルの目の前までやってきた。
ラングの斧をレビルは手にしていた剣で受ける。
「ラング。貴様がまさかここまで出てくるとは思わなかったぞ。
皇帝の傍をずっと守っているものだと思っていたのだがな。」
「レビル、かつての名将も老いたな。戦局を最後まで読み切れないとは。
これは軍師エミルの作戦。私も陛下の傍を離れるのには抵抗があったが、
最大の勝機であり、帝国の命運がかかっているとなれば出てこないわけには
いけないからな。それに我が斧、バンガードも錆付かせているのは
勿体無い。」
「そうか...。軍師エミル、時代は新しい風を求めているのかもしれんな。」
レビルは淋しげに言い放つ。
「終わりだ、レビル!」
ラングはバンガードを両手で大きく振り上げる。
「『ボーンクラッシュ』!」
上から下へ一直線に振り落とされた斧はレビルの体を鎧ごと真っ二つに切り裂く。
引き裂かれた体は大量の血を噴出しながらバタリと倒れた。
大将を失った連合軍にはもはや戦う力は残っておらず、
逃げ出す者、投降する者が大半を占めるようになった。
かくして帝国軍と連合軍の戦いは帝国軍の勝利が決定的となった。