「ぐ。魔道士隊、少し下がれ。」
エウドラの予想通り、帝国軍の魔道士隊は守りが弱く敵からの攻撃を
簡単に受けその数を減らしつつあった。そのことは帝国軍の攻撃力の
低下に直結し流れはストナ国へとじわじわ流れ始めていた。
「帝国軍の意地を見せるんだ。こんなところで負けていては
陛下に合わせる顔がないぞ。」
ハーマンは自ら先頭に立ち、その力でストナ軍を蹴散らし自軍を
励ます。
「思ったよりも頑張るな。もうそろそろ決まってもいい頃なのだが。」
「エウドラ、この城の守りの兵も砦に向かわせてはどうだ?
そうすれば一気に帝国軍を押し出せると思うのだが。」
「王、それは...。」
「まだあれを心配しているのか?なぁにコスタル砦は城のすぐ近く。
砦の帝国軍を撃退した後にすぐ戻らせれば何も問題はあるまい。」
「は、はい。そうですが...。」
エウドラは自信なさげに返答する。
「責任は私がとる。私はこの国の王だ。ここで判断を誤るようなことが
あれば私もそこまでの男ということだ。エウドラ、一切心配するな。
私の考えで兵を動かす。いいな。」
王は力強くエウドラに伝える。
「わ、分かりました。そこまで言われるのであればもう何も言いません。」
「よし。ではこの城に残っている兵に伝えよ。砦に向かい帝国軍を一気に
潰すのだ。」
ストナ城に残っていた兵たちは王の命令により、ほぼ全てが砦へと向かわされた。
「陛下、いよいよ我らの敵はいなくなることでしょう。」
エミルは皇帝に穏やかに言う。
「そうか。ストナ国への作戦はうまくいきそうか?」
「はい。もう間もなく実行に移されます。」
エミルは皇帝に答えると遠くを見た。
ストナ城の兵が砦に向かっていなくなった後、すぐに
ザザァーッ!!
突然山から帝国軍の兵士が滑り落ちてくる。
「きゃーっ。」
城下町に住む人々はその姿に驚き恐怖する。
「ぐ。」
城のテラスからその様子を見つけたエウドラは唇を噛み締めて悔しがる。
「帝国軍が砦を通らず険しい山越えをして攻めてくる。
くそ。これは俺が予測出来ていたことなのに。王の判断を諌めていれば
まだ防ぎようもあったかもしれないのに。カフィール、今になってお前の
言葉が心に響く。やはり俺には軍師としての力はないのかもしれないな。
しかし、この場は俺が治める。」
エウドラは魔法で城からワープし、山越えをしてきた帝国軍の前へ現れる。
「お、お前はエウドラ。」
帝国軍は驚き一瞬足が止まる。
「お前を倒せれば我が国の勝利は決まったも同然だな。」
帝国軍は武器を構えてエウドラに対峙する。
「俺を倒す?どこのどいつだ?そんな戯言をほざく奴は。
お前らのせいで俺の計画は台無しだ。軍師としてこの国を大きくしてみせる
という楽しみがな。お前らはここで消える。今日の俺は機嫌が悪いんだ。
手加減はしないぞ。」
エウドラは右の手の平を帝国軍に向けて魔力を集中させる。
「『デジョン』。」
エウドラの魔力によって帝国軍の周りが暗闇に覆われる。
異次元より開かれた闇。そこへその場にいた帝国軍は全て飲み込まれていく。
「うわぁぁぁ~!」
帝国軍の叫びと共に。
闇はすぐに閉じられ後には人一人おらず、まるで元々誰もいなかったかのように
静かになった。
ビュン。
エウドラはすぐまたワープして今度はコスタル砦へ現れる。
そして必死で戦っているハーマンの目の前まで移動する。
「エウドラ、お前...。」
「ハーマン、お前ごときが俺に敵対するとは。いい根性しているな。」
エウドラを前にして脂汗を流すハーマンとは対照的にエウドラはどこか涼しげな
目でハーマンを見ていた。
「どうした?かかってこいよ。」
挑発するエウドラにハーマンは炎の魔法で攻撃する。
エウドラに向けられた炎はエウドラの目の前で消えていく。
「分かっているだろう。お前では俺に勝てないと。お前の炎は俺には届かない。
全て異空間に吸い込まれるのだからな。今の俺の気持ちを晴らすにはハーマンでは
役不足だが、我慢してやるよ。」
ハーマンは自らの死を悟っていた。
「くらえ、『ディメンション・ファング』。」
ガ、ガ、、ガ、、、ガ。
ハーマンの体は少しずつ何かによって切り取られていく。血を流すことなく
失われていく体を見てハーマンの恐怖は高まる。
「終わりだ。」
終に頭をも切り取られ、ハーマンという人の体はこの世から消えてしまった。
その様子を見ていた帝国兵は戦う気力を失い撤退していく。
「ふぅ~、やっちまったな。魔法使いとして戦ったらもう軍師じゃないもんな。」
帝国軍が去った後、エウドラは虚ろな目で空を眺めた。
「今頃、エウドラが動いていることでしょう。しかし、彼の性格を考えればここで
ストナ国から手を引くことになる。そうなればあのような小国。何の策も用いず
力押しで落とせるでしょう。」
「それで敵はいなくなるということか?」
「はい。もはや陛下の世界制覇は目前です。」