「ふんっ。結局盗まれたってことでしょ。こんな若いのいくら
集めたってただの役立たずってことよ。さっさと帰ってもらったら。
うっとおしいったらありゃしないわよ。家の中散々歩き回って。」
アンナはジルたちを厄介者のように言って立ち上がる。
「私たちも部屋に戻りましょ。もう居ててもしょうがないでしょ。
もしかしたらこの人らが護衛とかいってすり替えたかもしれないわよ。」
ナターシャまでもジルに厭味を言って席を立つ。
「ちょっと待ってください!」
散々言われっぱなしのジルが立ち上がり語気を強めて言った。
「今日のあなたたちがどう過ごしたか教えてもらえませんか?」
「何!?あんた、私たちを疑ってるわけ?冗談じゃないわよ。
ボーラー、さぁ行くわよ。付き合ってられないわ。」
ナターシャは怒りまだ席についているボーラーをひっぱろうとする。
「いい加減にしないか!テイラー家の者として余所様の前で恥ずかしいと
思わないのか。」
ビルは声を上げて注意した。
「すいません、お義父様。今日、私はボーラーと買い物に行っていました。
ねぇ、そうよね。」
「あぁ、それに間違いはない。」
「ふんっ。ナターシャ、急にいい子ぶっちゃって。私は庭を散歩しただけで
ほとんど部屋で本を読んでいたわ。まさかそれで疑われるんじゃないでしょうね。」
「こら、アンナ。お前もやめなさい。で、私はさっきも言ったがずっとこの部屋に
おったよ。」
「そうですか...。」
ジルはテイラー家の人々の今日一日の行動を聞いて考え込む。
「どうせ考えたってわかんないんでしょう。気が済むまで調べればいいわ。」
アンナは投げやりな感じでジルに言う。
「......。」
しばしの沈黙が流れる。
「どうだろう、ジル君。このまま徒に時間が過ぎるだけでは何も解決しないだろう。
ここは一旦、解散して何か分かったらまた集まるということにしては?」
「(ねぇ、ジル。どうすんのよ。何か分かったの?)」
メアリーは焦りながらジルに尋ねる。
ジルはここにきてようやく口を開く。
「...そうですね。そろそろこの茶番を終わらせましょうか。
ねぇ、ビル=テイラー。いや、シャドウラビッツ!!」
ジルはビル=テイラーに指差して言った。皆、突然のことに戸惑い一瞬
固まった。
「何を言っているんだ?まさか私がこの部屋にずっと居てたことを理由に
犯人と決めているのか?」
ビルも困惑の表情を浮かべてジルに問い返す。
「ボーラーさん、ナターシャさん、アンナさんの3人は共犯の可能性はありますが、
主犯となり得るのはあなただけです。そう言えば、執事はどうされました?」
「少し出かけると言っていたが...。」
「今の執事は割と最近雇われた。そうでしたね、ボーラーさん。」
「はい。父が募集を出したのですが、数人の応募者の中から
一番優秀な人を選んだと聞きました。」
「おそらく彼女が本物の絵を運ぶ役目を負っているのでしょう。
ビルさんが見張り、その間に偽物と本物をすり替え本物を持ち去る。
至って自然な流れです。ビルさんがトイレに行っている間に全く別の者が
盗み出すという話も考えられなくはないですが、時間が分からない
中でビルさんを見張り続けるというのはこの家の構造上非常に
目立った存在になる。相当なリスクがあるということです。
これは現実的でない。よって前者の結論になります。」
「はっはっは。そうか、そこまで読まれているとはお手上げだな。」
ビルはそう言いながら、自分の顔に手をかける。
ベリッ。
ビルの顔の皮が剥がれ、別の顔が表れる。
「お前はジャック=クローバー!」
「覚えてくれていたとは光栄だな。成長したな、ジル。
それにしてもこの贋作、よく描けているだろう。素人じゃ額縁なしでは本物と見分けが
つかないはずだ。この絵はうちのメンバーのシャリルが書いたんだ。ホント贋作描かせる
のは勿体無いくらいだ。そのうち個展を開いてやりたいなぁ。」
ジャックは楽しげに喋ると立ち上がる。
「まさかそんなことを言うために俺たちを呼んだんじゃないだろうな。」
「まぁな。君たちの目的は分かっている。これだろう?」
そう言ってジャックは赤い宝石を取り出して見せる。
「レッドエメラルド!」
「そう。俺らの目的も同じだからな。持ってるだろう?残り2つの石を。」
「なぜ、それを知ってるんだ!?」
ジルは驚きながらも問いかける。
「俺らの情報網を舐めるなよ。それくらいすぐに分かる。」
「しかし、それを素直に渡すとでも思っているのか!?」
「あの~、すいません。」
ここで、ボーラーが口を挿む。
「本物の父、ビル=テイラーはどこに?」
「あぁ、それなら屋敷の裏手に縛っているよ。早く解きに行ってあげるといい。」
ジャックは簡単に説明すると、ボーラー、ナターシャ、アンナの3人は慌てて
ビルを捜しに行った。