dark legend   作:mathto

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「では、行くぞ。」

「ああ。」

ラングから攻撃をしかける。

斧を振り回しての第1撃、第2撃をジルは交わし第3撃目を剣で受ける。

「ぐぅぅぅぅ。」

暫くの押し合いの後、2人は一旦離れる。

そこからラングの連続攻撃が始まる。

ジルはその激しい攻撃を避けながら自身も攻撃を試みる。

武器がぶつかる金属音が鳴り響く。

「はぁはぁ。」

ラングは僅かに息を切らす。

ジルの方は息は切らしていなかったが、一筋の汗を流していた。

「(このおっさん、かなり出来る。動きに無駄がない。

あの練達された斧捌き。気を抜けば一気にやられる)。」

「(この小僧。並みの剣士とは比べ物にならんくらい強い。

私と互角に渡り合ってくるとは。まだ動きにムラは多少残っているが、

それを補い余る力強さ。まだ若いだろうになかなかの場数は踏んできている

と見える。ならば...。)」

ジルとラングは互いの武器をぶつけ合う。

「ん!?」

ジルはその中で気づく。

「(こいつ、何かを狙っているみたいだ。)」

ジルは警戒しながら打ち合う。

「(攻撃が慎重になってきた。こちらの狙いに感づいてきているのか。

しかし、そんなことは関係ない。)」

ラングは攻撃の手を強めていき、ジルは防戦一方となる。

その中でジルに一瞬隙が出来る。

「今だ!」

ラングはバンガードを両手で大きく振り上げる。

「『ボーンクラッシュ』!」

大斧はジル目掛けて一直線に振り落とされる。

バッガーン!

「!?」

大斧は標的を失い床を砕く。

「(ここだ!)」

ラングの必殺の一撃をかわしたジルは今度は自分が必殺の一撃を狙う。

ガンッ!

ラングは柄を利用してジルの剣を受け止める。

ジルの目に力が入る。

ジルは剣をラングの斧から流して再び攻撃に移る。

これ以上ないという速さで。

ズバッ!

さっきの一撃で攻撃を防いだという気持ちでいたラングはジルの真の攻撃に

反応が出来ず、腹を切り裂かれた。ラングは膝を床に着き、口から血を吐く。

「く。これだけの攻撃、狙っていたな。最初の攻撃はフェイントか?」

「あぁ。それだけじゃない。あんたが必殺技を放つ隙をわざわざ作ったんだ。

こっちが仕掛ける為にな。それはさすがに見抜かれていたようだがな。」

「当然だ。私が本気で技を放てばこの城は崩れてしまう。お前が私の動きに

対して何かを狙っていることは分かっていたから力を抑えて次に備えたのだが...。

さらに先を読んでいたとは。どうやら私も古い時代に取り残されていたようだ。」

ラングは淋しげに言うと体が前にバタリと倒れた。

 

 

 

横たわるラングを前にしているジル。

「悪いが、先に行かせてもらうぞ。」

「敵に情けなどはいらん。お前は確かに強い。

しかし、我が陛下はそんなお前を凌ぐだろう。

そのこと会って思い知るがいい。」

ラングはそれだけ言うと息を引き取った。

「(知っているさ、皇帝の強さは。だが、俺は負けられないんだ!)」

ジルは決意を強めて皇帝の待つ玉座へと向かう。

 

バタン。

ジルは玉座の間への扉を力強く開ける。

そこでは既に皇帝が立って待ち構えていた。

「来たか。」

皇帝はジルを前にして不遜な笑みを浮かべる。

「俺は貴様を許さない。人を人と思わず、物のように見下すその態度が。」

ジルは皇帝を睨みつける。

「お前は知らないだけだ。人の上に立ち支配する悦びを。そして、思いのままに

世界を動かすことの出来る快感を。」

「上に立つ者は民の幸福の為に、そして世界の平和と安定を望んでいかなければならない。」

ジルは反論をする。

「そんなことに何の意味がある?己の欲望を満たすことこそが人の生きがい。

それは余だけにしか当てはまらないことではない。全ての人間がそうだ。

つまり余の行いは人間らしいごく自然な行動だ。余の支配を拒絶するなら、余を超える

だけの力をもって征すればよい。」

「立場によって考えややり方は違うかもしれないが、人はお互いに思いやることで

関係が成り立つ。人間全てが貴様のように自分のことだけを考えていればすぐに滅びるぞ。」

「それは力の無い者の愚かな理想に過ぎない。皆、力さえあれば余のようになりたいはずだ。」

「愚かなのは貴様だ。力に縛られ、本当の幸福を理解できなくなっている。

俺は貴様を倒す。」

ジルはそう言うと剣を抜いた。

「それが、お前の新しい剣か。余と張り合うことが出来るか、試してやろう。」

皇帝は剣の柄に手を当てる。

「行くぞ!」

ジルは思い切り皇帝に向かって攻撃を仕掛ける。

ガンッッ!!

ジルの剣と皇帝の剣が激しくぶつかる。

「く。(手が痺れる。何て攻撃力だ。)」

ジルは一旦後ろに下がる。

「なるほどな。この前とは一味違うようだ。余の抜刀術を受けきるとは。

ならば、余も本気で行こう。」

皇帝は剣を抜いたままで構える

 


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