「では、行こうか。」
ヒュン。
ジルの視界から皇帝の姿が消える。
ジルは目で何かを追う。
「ここだ!」
ガンッ。
ジルの剣と突然現れた皇帝の剣がぶつかる。
「この動きを読むとは思った以上だな。基礎能力をさらに上げたか。
...それともその剣の恩恵か?」
「さぁな。(しかし、信じられない速さだ。あの攻撃に対応出来たのは
自分でも不思議なくらいだ。)」
ジルは冷や汗をたらりと流す。
「そうか。では、これも受けきれるか?」
皇帝は剣を持つ手を少し後ろに引き刃の先をジルに向け、力を溜めるかの
ように構える。
「(何だ、あの構えは?すごく大きな力を感じる。)」
ジルは警戒して一歩後ろに足をずらす。
皇帝の体全体が眩しいほどに光を発しだす。
「行くぞ。『シューティングスター・エクスプロージョン』!!」
シュンッ。
光の塊がジルの体を瞬きする間もない程の恐ろしい速さで突き抜ける。
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!」
光が消えると皇帝の姿が現れ剣を構えた状態から床に向け斜めに振り下ろす。
攻撃を受けたジルは全身から血をプシューと噴き出す。
「う、うぅ...。」
ジルは剣を手放し膝を床につき、激しい痛みを抑えるかのように両手で自分の体を抱きかかえる。
「お前の力はそこまでか。このファルシオンと対等の剣があれば、余と互角の実力を発揮すると
思ったのは見込み違いか。」
皇帝は剣を構え直すもジルはまだ痛みに耐え戦える状態ではなかった。
「ならば、もう用はない。死ね。」
皇帝は素早い動きでジルに迫る。
突然、床に放置されているジルの剣、デイブレードが光を放つ。
ジルはその光に気付き、顔を向ける。
「皇帝にこれほど力の差を見せ付けられて傷ついても、お前はまだ俺に戦えと言うのか?」
ジルはゆっくりと膝をついたまま歩きデイブレードに手を伸ばす。
ズバッ。
「ぐはっ。」
皇帝の剣がジルの腹を深く切り裂く。
それで倒れたジルの手はちょうどデイブレードに触れていた。
ピカーッ!
デイブレードはさらに光を強くし、その形状を変えていく。
ジルの剣、デイブレードはオレンジ色をした丸みを帯びた形状の剣へと
変化した。デイブレードは優しい光でジルの体を包み込む。
「こ、これは...。」
驚く皇帝の視線の先には傷が癒されていくジルの姿があった。
「う、うぅ。」
ジルは意識を取り戻すと剣を手にしてすっと立ち上がる。
「どういうことだ?痛みがなくなっている。」
ジルは手にしている剣を見る。
「剣の姿が変わっている。まさかこの剣の能力?」
「『ヒーリングソード』といったところか。これでおもしろくなるな。」
皇帝は僅かに笑みを浮かべて構え直す。
ジルの剣はまた元の姿へと戻っていく。
「わ、わぁ。」
ジルは慌てて構える。
「では、仕切りなおしで行くぞ。」
ヒュンッ。
皇帝がジルに向かってくるとき、デイブレードはまた光りだす。
「!?」
皇帝の剣は空を斬り、ジルの姿を見失っていた。
ドンッ。
「いってー。」
皇帝から離れたところでジルは壁に額をぶつけていた。
「何!」
皇帝は驚きを隠せない。
ジルの手に握られている剣はまた形状を変えていた。
青色をした剣になり、さらに剣から発する青いオーラで全身を包んでいた。。
「おぉ、何だこれ。」
ジルも自身の姿を見て驚く。
「それはこちらが聞きたい。その剣は一体何なのだ?」
「えぇと、これはヒヨルド博士が創った俺の剣『デイブレード』だ。」
「あの天才科学者が創った物か。」
「いや、あいつは天才科学者というよりマッドサイエンティストだけど...。」
ジルは小声で否定する。
「なるほど、そのような不思議な能力を発動出来る訳だ。
しかし、余もここで負けることは出来ない。」
「よし、今度はこっちから。」
ジルは羽の形状となっているデイブレードを手に皇帝に向かう。
シュッ。
ドンッ!!
ジルは壁にまた額をぶつけていた。
「いったー。」
ジルは額を手で撫でて痛みを紛らわす。
「どうやらその形状では使いこなせていないようだな。」
「う~ん、せっかく速くなれるっていうのに。どうしたら...。あっ!そうだ。」
ジルは何かを思いつき皇帝の方を向く。
「じゃ、行くぜ。」
ヒュンッ。
ジルの姿が消える。
ダンッ。
次の瞬間、壁を蹴る音が聞こえる。
ヒュンッ。ダンッ、ヒュンッ、ダンッ!
皇帝はジルの異常に素早い動きについていけず、着衣を切り取られながら
ジルの攻撃を辛うじてかわすだけとなっていた。
「(く、これは。こいつ、壁を蹴って攻撃を繰り返してくるとは。)
だが、...。」
ガンッ!。
激しく動き回るジルの剣を突然、皇帝の剣が受け止める。
ジルは驚き動きを止める。
「その剣の能力に人の体はついていかない。その結果、攻撃は出来ても単調になる。
勘さえ働けば捉えることは難しくない。」
「ぐぅぅ。」
ジルと皇帝は互いの剣で相手を押し合う。
「それでも!」
ジルは剣の姿を元の形に戻して連続攻撃をしかける。
皇帝は怯むことなく剣をぶつけていく。
「(最初より攻撃速度が上がっている。剣の能力を使ったことで動きに勢いが
ついているのか?)」
互いに引くことなく必殺の一撃を撃つ隙を探り出す。
「うおぉぉぉ!」
ジルは剣を強く振るう。
ガーンッ!
その勢いで皇帝は一歩後ろに下がらされ2人の間合いが僅かに開く。
ジルも皇帝も勝負所を感じ全身にオーラを漲らせる。
「いくぞ、ジル。『カイザーストラッシュ』!!!」
「ここだ!『ギガブレイク』!!!」
バチバチバチ、ドーンッッ!!
全ての力を注ぎ込んだ2人の剣が重なるとそこから急激に光が広がりだし、
ジルと皇帝、そして部屋全体を真っ白に包む。
シュウゥゥゥ...。
光が薄くなってくると、力を出し尽くし肩で息をしている2人の姿が現れた。
「はぁはぁはぁ...。」
「はぁはぁ、余とこれほど張り合えるとは..。敵ながら誉めておくぞ。」
ピキーン。
皇帝の剣、ファルシオンに亀裂が走る。
ボロボロッ。
ファルシオンはそのまま刀身が崩れ落ちた。
「どうやら、余の負けのようだ。」
皇帝は構えを解き、無防備な状態で立っている。
「なら、これ以上の侵略、暴政を止め、他の人々を尊重するんだ。」
「今更、生き方を変えることなど出来ない。余は負けた。敗者には死あるのみだ。」
皇帝はそう言うと、崩れた剣を捨て窓の方へ歩き出した。
「おい、何を...。」
ジルの呼びかけに答えず、皇帝は窓を開けてそのまま倒れるように下へと落ちていった。
ジルは慌てて窓へと駆け寄るも皇帝は既に下の地面で横たわっていた。