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「ジル!」
ジルが振り返ると、そこにはメアリーたちが部屋に入ってきていた。
「あれ、皇帝はどこですか?」
マルクが質問する。
「あいつは死んだよ。」
そう言って窓の外を指差す。
「そうですか...。」
案内して一緒に来ていた執事は淋しそうにする。
「やったね。」
パティは嬉しそうに声をかける。
「あぁ、そうだな。」
「ジル、勝ったのに嬉しくないの?」
「そんなことはないさ。ただ、これからどうしようかなと。」
「皇帝がいなくなってこの帝国をどうするかですね。」
「それなら、心配は要りません。」
そこへエミルがやってきた。
「君は?」
「私は軍師エミル。陛下にもしものことがあった場合の指示を受けています。」
「よかったの?」
城の外でメアリーがジルに問う。
「あぁ、あのエミルって奴が平和な国を作るって約束したんだ。もし、それを
守らなかったらまた城に乗り込んでいけばいいだけのことだ。」
「でも、信じられるでしょうか...。皇帝の下で働いていた彼が
皇帝のやり方と180°変えるようなことを。しかもそれは皇帝の指示だと
言いました。どういうことでしょう?」
「俺の想像に過ぎないが、恐らく皇帝は自ら悪を背負って世界をよくしようと
したんじゃないかな。」
ジルは空を見やって言った。
「うそー。それはないでしょ。あんな人間として最低な奴。あいつはただ単に
世界を自分のものにしたかっただけよ。そうにしか見えなかったわよ。」
「まぁそれは今から分かってくるでしょう。エミルが作る新しい国に。」
「ねぇねぇ、私よく分からなかったことがあるんだけど...。」
「何だ、パティ?」
「マルクが『サンアルテリア王国に委ねては』って言ったとき、エミルって人が
言った言葉なんだけど。」
「それは気になるな。あいつ、『あなたたちは知らないのでしょう。サンアルテリア王国が
抱える大きな闇を。彼らにまかせては陛下の努力が水の泡と消える。』って言ってたな。
サンアルテリア王国には何か秘密でもあるのかな。」
「そんなことはないわよ。それはあいつが皇帝にあることないこと吹き込まれただけよ、きっと。」
「メアリーはあの国の王女ですもんね。誰よりもあの国のことは分かっていますよね。」
「う~ん。そういうことならいいんだけど。...一度戻ってみるか?」
「賛成!」
まだ行ったことのないパティは喜んで手を挙げた。
メアリーもマルクも頷き、ジルたちはサンアルテリア王国へ向かうこととなった。
ジルたちが去った城の中で。
「陛下、あなたの意志は必ずお引継ぎ致します。」
エミルは一筋の涙を流し、決意を強めていた。
それからしばらくして。
ヴェロニス帝国は民主国家となり、国名をヴェロニス連邦共和国とした。
初代首相にはエミルが暫定的に務めることとなった。
亡き皇帝が用意していたバックアップ体制により、
民主化の為の法整備、議会制、奴隷都市や拷問都市の普通化及び統治者の適正化等
が円滑に進められることとなる。
これでヴェロニスはサンアルテリア王国に上回る領土だけでなく、
政治体制においても先進的で勝るとも劣らない国家へと変貌を遂げた。
「まさかこのようなことになるとは。私の計画に間違いがあったと思わせて
しまいそうだな。いや、しかしこれでよかったのだろう。世界に再び平和が
訪れた。ヴェロニスとは友好関係を築けるように努力してみるか。あくまで
裏がないかを探った上でだが。」
D=クラプターは自室で一人考え事をしていた。
そして、ジルたちはサンアルテリア王国でゆっくりと滞在していた。
「すいません、エトールのレナ王女より手紙を預かってきました。」
一人の若い男はそう言うと、ジルに一通の手紙を渡す。
「『ジル様
この度はありがとうございました。あなた方のおかげで世界は
再び平和を取り戻すことが出来ました。心より感謝の気持ち申し上げます。
ヴェロニス皇帝が改心出来なかったことは非常に残念ではありますが、
あなた方の行動に間違いはなかったと思います。
私はこれから、民主国家へと生まれ変わったヴェロニスと交友を深め
世界平和の維持に務めてまいります。
エトール国王女 レナ』」
「へぇ~、律儀な王女様だな。」
ジルはそう言ってメアリーの方を見る。
「何よ、その顔。嫌味?私だってレナ王女と同じ気持ちよ。」
メアリーは自信気な顔をする。
「レナ王女もこれで肩の荷がとれたでしょうね。」
マルクは嬉しそうに言う。
「そうだな。こうやってサンアルテリア王国に戻ってはみたけど、何の問題もなさそうだし。
いいことだ。」
ジルも笑顔になる。
「ねぇ、今日は何をして遊ぶ?」
パティは無邪気にみんなに言う。
「おいおい、パティ。たまには仕事もしないと金がすぐになくなるぞ。」
「はーい。」
パティは素直に返事した。
そんなパティをマルクとメアリーは微笑ましく見ていた。