dark legend   作:mathto

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ラスクの話を聞いた人々は感心するようにウンウンと頷きながら聞いていた。

「しかし、ここで皆さんに申し訳ない話があります。実はこの出資、

制限があるのです。我々は独占して確実に売れる物に絞って投資をします。

何にでもというわけではないのです。つまり、必要な資金というのは

ある程度決まってきます。だからいくらお金を集めても資金が余るだけで

利益は増えず配当金も減るということになります。それでは意味がないので

ある決まった額の出資金が集まれば今回はそれで募集終了となる、謂わば

早いもの勝ちと等しい状況になります。この話が終わり次第、募集を開始

します。やってみようとお考えの方は早めに申し込んでいただくのが懸命かと

思います。では、皆さんがお金を掴み幸せになれることを願って私の話を

終了とさせて頂きます。本日はありがとうございました。」

ラスクはそこまで言うと、目の前に座っている人たちに礼をして壇上から

去った。

すると、その話を聞いていた人々は一斉に出資金募集受付のところへと

走って向かいだした。

 

「あれ?」

「あら?」

マルクとメアリーがじっと座っているジルを見て驚く。

「ん?どうした?」

「『どうした?』って...。」

「いいんですか?あんなにお金が増えるって言われて、みんな受付に集まっている

のに行かなくて。」

「あぁ。聞いててどうも話が分からなくてな。」

「私もさっぱり分かんないよ。」

パティも笑顔でジルと同じことを言う。

「何だ、そういうことでしたか。」

「どうもこのやり方はよくないような気はするんだ。

値段が上がると、欲しくても買えなくて困る人がたくさん出るだろ。

そうなったら国全体が悪くなっていくよな。」

「え!?そこまで考えてたんですか!?」

マルクはさっきよりも驚く。

「何だよ。そのバカにしたような言い方は?」

ジルは怪訝な顔をする。

「すいません。バカにしてるというよりは感心したんですよ。」

「すごいわね。まぁ、私も思ったことだけど。」

「私はよく分かんない。」

パティはまだ理解出来ない中、マルクとメアリーはジルを見る目を変える。

「メアリーの言葉はひっかかるものがあるが、、今回は誉められたことにしておくか。

じゃ、出ようか。」

ジルは無理やり納得したように言うと、4人は今いるホールを出た。

 

 

 

それから少ししてサンアルテリア王国の市場は物価の急変動により

混乱を起こし始めていた。その責任を取らされ、現バレンティ首相は辞任に

追い込まれることになった。

 

 

そして、サンアルテリア王国議会。

「議員の投票、多数決により首相にD=クラプターを任命する。」

議員席よりD=クラプターが立ち上がると他の議員より大きな拍手が送られる。

D=クラプターは胸の内を隠すように愛想笑いをしていた。

「(ここからだ。私がこの国を守り、永続的な発展を目指す。)」

 

 

D=クラプターが首相になったという情報はすぐにヴェロニス連邦共和国にも

届いた。

今は首相官邸の一部となっている城の中で。

「エミル首相。サンアルテリア王国の新しい首相にD=クラプターが就いた

ようです。」

一人の男がエミルに報告する。

「ありがとう、ヒルマン官房長官。では、祝いの手紙を送っておいてくれませんか?」

「分かりました。では直ちに。」

ヒルマンはエミルに礼をして部屋を出た。

「あのD=クラプターが首相になりましたか。こんなに早くなるとは。

やはり、あれが動き出しているのでしょうね。これから彼は栄光を手にするか、

それともあれに呑み込まれることになるか、注意して視なければいけませんね。」

エミルは部屋で一人、考えを巡らせていた。

 

 

首相に就任したD=クラプターは自室で思案していた。

「早急に市場の安定化へつながる法案を考えなければ。

原因は明らかだ。一部の者が行っている独占による市場価格操作。

これを止めれば問題は解決する。」

 

すぐにD=クラプターは独占禁止法を策定し議会に提出。

内容は市場価格が急激に上下した物に対して圧倒的なシェアを

持っている者、企業に対し是正措置を実施するというもの。

議員のほとんどがそれに賛成し、法案は可決された。

 

独占禁止法により、フェラード商会はすぐに対象となり

営業停止が言い渡される。

事実上廃業となったことでフェラード商会の幹部連中は出資者から

集めたお金を持って逃走した。

残った社員も責任の追及を怖れて直ちに別の仕事を探しにいく。

出資者たちは会社の扉を必死に叩き続けていた。

「どうしてくれるのよ!!私の全財産を!」

「俺たちの金を返せー!!」

「明日からどうやって生活すればいいの!!!」

出資者の悲痛な叫びが鳴り響くも扉の向こうからは何の反応もなかった。

 

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