バシッ。
バシッ。
ジルは剣でモンスターたちを次々と倒していった。
「ほぉ、さすがにやるな。魔界の中でも上級クラスのモンスターだったのだがな。
では、こいつはどうだ?」
男は少し後ろに下がり、新たな魔方陣を描く。
「な、なんだ。」
魔方陣は先程のモンスターの呼び出したときよりも大きく
明らかに雰囲気が違うことを感じ、ジルは警戒した。
グゥォォォォォォォォォ!!
魔方陣から空気が震えるような大きな音と共に巨大な蛇が出現した。
あまりの大きさに現れただけで周囲の建物が数軒崩れ落ちた。
「おいおい、こんな街中で呼び出すような大きさじゃねぇぞ。」
「これは、ただのモンスターじゃないわ。」
パティが目を見張って言った。
「『ヨルムンガンド』。」
メアリーがその巨大な蛇を見て小声で言った。
「まさか。『ヨルムンガンド』と言えば、地の守り主。」
「どうしてそんなものが呼び出せるんだ?」
ジルがパティに聞く。
「わからないわ。偶然か特別な方法を使っているかだと思うけど。」
パティも少し困惑していた。
「ま、とにかくこいつを倒せば済む話だよな。」
ジルは気持ちを切り替え戦闘態勢をとった。
「今度は簡単にいくかな?」
男はにやりとしながら自分の安全確保のため、後ろに下がった。
「いくぞ!」
ジルは巨大な蛇に向かって剣で斬りつける。
ズバッ。
しかし、あまりに巨大な為に傷は浅くほとんどダメージを与えられない。
「くっ。これじゃダメだ。何か考えないと。」
ジルは敵を目の前にしながら動けなかった。
そうしている間にもヨルムンガンドは街を破壊し続けていく。
ジルたちの顔には焦りの色が見え始めた。
「ん?」
パティが何かに気付く。
「どうかしましたか?」
マルクがパティに尋ねる。
「このヨルムンガンド、正気じゃないみたい。まるで操られているみたいな...。」
「それなら…。」
マルクは一歩前へ出る。
「マルク、どうした?危ないぞ。」
ジルが注意を促す。
「大丈夫です。少しためしてみましょう。」
マルクはヨルムンガンドをじっと見つめる。
「『イエローフローラル』。」
マルクから発せられた黄色い風がヨルムンガンドを包み込む。
マルクの魔法によってそれまで激しく暴れ回っていたヨルムンガンドは
落ち着きを取り戻して静かになった。
「パティ、今なら話も通じるんじゃないですか?」
パティはマルクの言葉に頷いてヨルムンガンドに近づく。
「あなたはこんなところで暴れまわったりすることを望んでいないでしょ。」
パティの優しい言葉にヨルムンガンドはじっと聞き入る。
「さぁ、あなたのいるべき場所に帰りましょう。」
ヨルムンガンドがすっかりおとなしくなってきたとき、
占い師の男が急に笑い出した。
「はーはっはっはっは!それでこいつを静めたつもりか。
馬鹿が、こいつはすでに俺様の支配下にあるのだ。何をしようが無駄だ。
ヨルムンガンド!!このこざかしい小娘を押し潰してしまえ!」
グゥォォォン!!
ヨルムンガンドは占い師の男から発せられる何かの力によって
苦しみ始める。
「ダメッ!落ち着いて。」
パティの声は届かず、ヨルムンガンドは眼を真っ赤にして
さっきよりも激しく暴れだした。
「パティ。もう無理だ、下がれ。」
ジルはパティをかばうように後ろへと下がらせる。
「でも...。」
パティは下がりながらも納得は出来ていない様子だった。
「こうなったら倒すしかないな。操られているだけなのに
かわいそうだが、これ以上廻りに被害を出すことは出来ない。」
ジルはそう言うと、剣を構えなおした。
「これだけの巨体。普通に攻撃しててもダメージは与えられない。
ならば初めから急所を狙っていかないとな。」
そこでジルはマルクの方をちらりと見る。
「頼めるか?マルク。」
「はい。分かりました。」
マルクはジルの目を見てその意図を読み取る。
「いきますよ。『エアフェザー』。」
マルクの魔法でジルの背中に羽が生える。
「サンキュ、マルク。いくぞ、ヨルムンガンド!」
ジルは剣を持つ手に力を込める。そして羽を使って上空まで飛び跳ねる。
ヨルムンガンドの顔の前まで。
「体をただ傷つけてもダメージを与えられないのなら、
頭を全力で潰すまでだぁっ!」
ジルの剣はオーラを纏いヨルムンガンドに狙いを定める。
「『ギガブレイク』!!」
眩い光が放たれた後、ヨルムンガンドの頭は2つに引き裂かれていた。
「な、ばかな...。ヨルムンガンドがやられただと...。」
占い師の男は一瞬の出来事に驚きを隠せなかった。