dark legend   作:mathto

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ジルたちが追っていた男は暗い部屋の中で一人の男の前に膝をついていた。

その男は壁を背に椅子にどっしりと座り、目の前の男を見ていた。

「へへ、アントンさん。またいつものやつをください。」

「そうだ。お前は上得意客だからな。今日は特別なのをやろう。

こいつは今までのとは一味違うぞ。」

そう言って、アントンは男に一錠の赤い薬を渡す。

「へぇ、これはこれはありがとうございます。」

男は嬉しそうに薬を受け取る。

「どうだ?さっそく試してみたら。」

「そ、そうですね。では…。」

男は受け取った薬を口の中に放り込み飲み込んだ。

 

ゴォォォォ!

 

突然、男の口や耳、鼻から炎が吹き出し瞬く間に身体を焼き尽くした。

「はっはっは。どうだ最高だろ。この『ファイアマジック』は。

ふん。余計な客を連れて来やがって。治安隊にでも見つかったら

めんどくさいことになるからな。さて…。」

 

そこにジルたちが乗り込んできた。

 

「これはこれは、見たことのないお客さんだ。何の用かな?」

アントンは落ち着いた様子でジルに問う。

「お前が『ソネル』の売人か?」

「ならどうしたというんだ?」

「お前を治安隊に引き渡す。」

ジルは淡々とした口調で言った。

「引き渡すか。しかし、なぜそんなことをするんだ?

わざわざお前がそんなことをしなくても治安隊が探して俺を捕まえに

来るだろう。何か理由でもあるのか?」

「少しでも早くこんなことを止めたいからだ。」

「しかし、止めたからといってお前たちに利益などはないだろう。

自己満足の正義感からか?」

アントンはバカにするかのようにジルに問う。

「かもな。でも俺たちがいてるこの国でこんなことが起こっていたら

居心地が悪いだろ。そう考えると俺たちの行動がすぐに利益にならなくても

放っておいたら不利益になり、それを防ぎたい。別に自然なことだろ。」

「なるほど。それはそうだ。」

アントンはジルの返答に納得をした。

「それとお前に聞きたいことがある。お前の後ろには誰かいるのか?」

ジルは真剣な表情でアントンに問う。

「何だ?俺が誰かの指示で動いているとでも言いたいのか?残念だな。

こういった仕事の類は蜘蛛の巣のようにつながっている。

薬の原料を採ったり育てる者、薬を考え作り出すもの、そして俺のような売人。

それらは芋づる式に捕まえられるものではなく、トカゲの尻尾のように

一人捕まったところで大して変りはしない。」

 

 

 

「く...。」

ジルはアントンの返答に行き詰まりを感じていた。

「どうやら狙いが外れたらしいな。それに...。」

アントンは先ほどの男に渡したものと同じ『ファイアマジック』

を手にして自らの口の中に放り込んだ。

「ぐあぁぁぁぁぁ!」

アントンは絶叫と共に体から吹き出す炎に包まれ

燃えていった。

ジルたちは為す術もなくその様子を見つめていた。

「なんだか、また後味のよくない終わり方よね。」

メアリーが言った。

「ああ、しかし何もしないでほうっておくわけにもいかなかったしな。

後の処理は治安隊にまかせるとしようか。」

ジルはため息まじりに言ってその場を後にした。

 

ジルたちが建物の外に出たとき、

「!?」

ジルは異常な気配を感じ取り空を見る。

一つの影をを確認するとすぐに剣を抜き構える。

 

ガンッッ!!!

突然の攻撃を受け止めるジル。

相手は鎌を振り下ろす死神ジョーカーだった。

「くくく、随分と成長したようだね、ジル。」

2人は一旦離れる。

「何の用だ?」

ジルは緊張をし、冷や汗を流しながらも力強く問う。

「なぁに、ただの暇つぶしだよ。君たちがあまりにも無知だからね。

いい情報を教えてあげようかと思ってね。」

「情報?」

ジルはジョーカーの言葉がよく理解が出来なかった。

「そう。君たちは最近この国の異変には気付いているだろう。

さっきも薬のことを調べていたように。」

「あ、あぁ。」

「そして、裏でそれらを操る存在についても。」

ジルは黙って頷いた。

「しかし、そこから先については一切情報を持っていない。」

ジルは再び頷く。

「『ヘルヘブン』。それが組織の名前だ。『呪術師キュリオン』が指示を

出し、僕もいる実行部隊『アビスメーツ』が中心に動く。」

「お前らの目的は何だ?」

ジルは突然の話に戸惑いながらも聞いた。

「そうだねぇ。世界を混沌に満ちたものにし、おもしろくすることかな。」

「何がおもしろくするだ!お前らのせいで苦しむ人が大勢出てくるだろう。」

「ジルくん。それは君の視点からの意見だろう。ほら、考えてごらん。

モンスターが大量に発生すれば民衆は確かに苦しめられる。しかし、

傭兵からすればこれは稼ぐチャンスだ。平和な世の中では仕事がなかなか

見つからなくて苦労するが、こういう機会を作ってあげれば結果として

喜ばしいことになる。」

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