空が突然暗くなったかと思うと、ソレは突然現れた。
ジルたちはあまりに唐突な出現に体は金縛りにあったかのように動けずにいた。
「く、黒いド、ド、ドラゴン...。」
グオォォォーーーーォオン!!!
世界中に鳴り響きそうなくらいの大きな鳴き声が聞こえた。
「これは暗黒竜。なんでこんなのが突然現れるの?」
パティは暗黒竜を驚きの表情で見据えて言った。
他の3人も驚きは隠せず暗黒竜から目が離せずにいた。
「これってかなりヤバイんじゃないか?」
ジルがそう言った後、暗黒竜は大きく口を開き、
ブォオオオオォォォォ!!
黒い息を吐きだした。
あまりの破壊力で街一帯が一瞬で瓦礫の廃墟と化してしまった。
「マジかよ。しゃれになってないぞ、これ。」
「ジル、このままほっとけませんよ。」
マルクは冷や汗をかきながらジルに顔を向ける。
「そ、そうだな。前にも巨大なヨルムンガンドを倒せたんだ。
意外と何とかなるかもしれないしな。」
ジルはそう言いながら剣を抜く。
「ヨルムンガンドと巨大さは変わらないが、威圧感が半端じゃないな。
もうラスボスでもいいんじゃないかってくらいの感じがするよな。
そんなことは置いといて。やるか!」
ジルは剣を構えた。
「きっと通常攻撃では歯が立ちそうにないな。いきなり全力でいくしかない。」
ジルの剣にオーラが纏う。
そしてジルが必殺技を放とうとしたとき、
バサァッ!!
暗黒竜は翼を広げて羽ばたき始めた。
その巨躯は宙に浮き、徐々に高く上がっていく。
そして、そのままその場から飛び去っていった。
「ふぅ...。」
ジルは剣を静かに鞘に収めると緊張感から解放され一息ついた。
「何よ、あれ!あんなのいきなり現れるなんて反則でしょ。
普通、魔導士が大掛かりな儀式とかするの見てから出てくるんじゃないの?
あれじゃ見つけた瞬間、あっけなく世界が崩壊してもおかしくないレベルよ。」
メアリーは怒り混じりに言った。
「まぁまぁ。そうは言っても現れたものは仕方ありませんよ。
今、考えなければいけないことはどうやって倒すかですね。」
マルクは冷静に言った。
「やっぱりヨルムンガンドのときと同じようにするしかないんじゃないか?」
ジルは覚悟した表情で答えた。
「う~ん、それしかないんだろうけど...。暗黒竜はヨルムンガンドよりも
1ランク上な気がするのよね。やってみなければ分からないけど。
ねぇ、マルクもそう思わない?」
「そうですね。」
マルクもジルもメアリーの意見に反論出来なかった。
「ねぇ。私、幻獣界に行ってくる。」
パティは3人の話に割って入る。
「どうしたんだ?急に?」
3人とも首をかしげる。
「あの暗黒竜を確実に倒す方法があるの。」
「暗黒竜に勝てる幻獣がいるってことか?」
ジルはパティに問う。
「うん。幻獣界のどこかにいると云われている『幻獣神バハムート』。
そいつなら間違いなく暗黒竜を倒せるわ。」
パティは自信を込めて言う。
「聞いたことがあるわ。『幻獣神バハムート』、その力は天にも届くと
言われていて竜の姿をした最強の幻獣。でも、その存在は幻に包まれている。
いるかどうかも分からないのに探しに行くの、パティ?」
メアリーはパティに問う。
「うん。私はいると信じている。だから行くわ。」
パティは力強く答えた。
「それならもう俺たちから何も言うことはないな。」
「そうですね、私たちもパティを信じて戻ってくるのを待ちましょう。」
ジルとマルクもパティの気持ちを尊重した。
パティは地面に魔法陣を描く。
「出でよ、フェンリル。」
パティの召喚に応じ現れるフェンリル。
「フェンリル、私を幻獣界まで連れてってくれる?」
「分かった。幻獣界へのゲートの発生個所はもう把握しているからな。
パティ、俺の背に乗れ。」
パティは頷き、フェンリルに跨る。
「じゃ、行ってくるね。」
パティはジルたちに手を振って出発した。
「なんか遠足にでも行くような感じだよな。」
「実際は険しい試練かもしれませんね。」
「パティが戻ってくるまでは情報収集かしらね?」
「そうだな。」
ジルたちは街中を歩き出した。
暗黒竜は世界中のあちこちに現れては破壊を繰り返していた。
D=クラプターは自室で焦りと悔しさを滲ませていた。
「く、このままではこの国が滅びてしまうのも時間の問題だ。何か手はないのか?」
ヴェロニス連邦共和国でも対応に追われていた。
「エミル首相、また暗黒竜に街が一つ壊滅させられました。」
ヒルマン官房長官はエミルに報告する。
「困ったことになりましたね。サンアルテリア王国で収まっていた闇がついにこの国にも
やってきたのですね。とにかく暗黒竜を倒す手立てが今のところありません。
ここは被害にあった街の状況確認と生存者の救出、街の復興に迅速に動く必要があります。
各方面への指示、お願いします。」
「分かりました。」
ヒルマンはエミルに頭を下げて部屋を後にした。