「ワーグバーグさん。見つけたんですね、自分の道を...。」
マルクは感慨深げに言葉をかける。
「まだ一歩を踏み出したにすぎない。正しいか間違っているか、それすら
分からない手探り状態だ。しかし、今はただ自分の信じる道を進むだけだ。」
「私は信じています。ワーグバーグさんの道に間違いはないと。」
「買い被るな。俺はただの人間。失敗もすれば、間違いもする。以前は
お前に嫉妬していたようにな。マルク、俺は俺の道を行く。お前は
お前自身がなすべきこと、メンデル先生の意志を受け継げ。」
ワーグバーグはゆっくりとマルクに傍まで歩み寄ると、ポンと頭に軽く手を
のせた。
「がんばれ。」
それだけ言うと、ワーグバーグは静かに去っていった。
マルクは一筋の涙を流した。
「マルク、俺たちも行くか。」
ジルがそっと声をかける。
「はい。」
マルクは腕で顔を拭い返事をした。
「グレン、悪かったな。」
ジルはグレンにバツが悪そうに言った。
「気にするな。だが、次にデュエルする機会があれば、必ず勝ってみせるぞ。」
グレンは不敵な笑みを浮かべた。
こうしてジルの『サモンマスター』の戦いは終わった。
ジルたちはサンアルテリア王国へと戻ることにした。
「おや、これは何だ?」
男が街中の人通りの少ない道で見つけたのは大きな丸い石だった。
興味深そうにそれを触ってみたとき、
ドッカーン!
大きな爆発が起こると、そこに大きな石も男の姿もなくなっていた。
後には僅かな小石と肉の破片と飛び散った血液が残るだけだった。
それを見ていた女性が大きな悲鳴を上げる。
また別の野道で一人の少年が大きな丸い石を見つける。
「なんだろ?すごいまん丸の大きな石。」
少年はおもむろにその石に触れてみる。
ドッカーン!
爆発と共に少年の体はバラバラに砕け散った。
この種の事件がサンアルトリア王国で頻発し、それからしばらくして
テラ全土で広がりを見せていた。
石の爆弾『ストーンボム』と呼ばれるようになり、恐れられるようになった。
「やっぱ、マルクの魔法は早くて楽だなー。」
ジルはサンアルテリア王国へ戻ってきて一度大きな伸びをした。
「船旅もなかなか楽しいけどね。」
メアリーはジルの横で微笑んだ。
「さて、これからまた地道にヘルヘブンの情報探しをやっていくか。」
ジルが一歩足を出したとき、
「ジルさーん。」
現れたのはヒヨルド博士だった。
「ジルさんが今持つ剣デイブレードに埋め込まれている
レインボーダイヤモンドについてすごいことが分かったんですよ。」
ヒヨルド博士はすごい勢いで話しかける。
「分かった、分かったからちょっと落ち着いて話しようぜ。」
ジルはヒヨルド博士の肩に触れ、落ち着かせる。
「そうですね。それでは私の研究室に行きましょう。」
ジルたちはヒヨルド博士の研究室に向かうことになった。
研究室に着くと、ヒヨルド博士に促され椅子に座る。
「今、お茶でも入れますね。」
ヒヨルド博士はそそくさとみんなにお茶を振るまう。
「で、レインボーダイヤモンドがどうしたって?」
ジルはお茶を一口飲むとヒヨルド博士に問いかける。
「そ、そうでした。レインボーダイヤモンドですよ。
これは本当に素晴らしいものですね。実はですね、
レインボーダイヤモンドは膨大な魔力を内蔵していて
それが様々な効果を生み出していると思うのですが...。」
ジルはこれまでのデイブレードの効果を思い出し、
うんうんと頷く。
「それとは別に1回限りのスペシャルな効果として
どんな願いでも叶えてくれるというものなのです。」
ヒヨルド博士は自慢げに話した。
「え、え~~~~っ!!」
これを聞いたジルたちはみな驚きの声を上げた。
「ま、まじなのか、それは。た、例えばだな、世界一の金持ちに
なりたいと願ったら簡単になれるものなのか?」
ジルは興奮しながらヒヨルド博士に問う。
「はい、もちろんです。」
「おおぉぉ!」
一同驚く。
「すごいですね。これがあればどんな夢も叶うということ
ですね。」
「でも、これが悪い奴の手にあったらと思うと怖くもあるわね。」
「フフ、フフフフ。」
ジルは不敵な笑みを浮かべる。
「ジル、今何考えてるの?」
メアリーはジルに不審の目を向ける。
「それはだな。これで世界平和が実現出来るなぁと...。」
ジルは冷や汗をかきながら答える。
「絶対嘘でしょ。今の顔、悪い顔してたもん。」
「と、どころでヒヨルド博士。願い事はどうやったら叶うんだ?」
「あ、逃げた。」
「え~とですね。それはレインボーダイヤモンドに願いを強く込めればいいです。」
「それだけでいいのか?何かややこしい手順とか呪文とかいらないのか?」
「そういうのを期待しているのならあえて作りましょうか?」
「いや、いい。簡単なことに越したことないからな。」
「で、ジル。願い事は決めてるの?」
パティはふいにジルに問う。
「いや。それは今すぐじゃなくて、じっくり考えるよ。」
ジルは真面目に答えた。