「ギルガメッシュに続き、ラボスも落としたようだ。」
シドとキュリオン(ゴア)は向き合って座り話していた。
「うむ、今のところ順調に事が進んでいるな。」
「ラボスは『アビスメーツ』の中でも特異な存在だな。」
「ああ、あれは本来、星を破壊する物。それをあの方が殻を与えて
一つの実体へと変化させたということだ。それよりもこれからの
ことだが...。」
「あぁ、分かっている。これからは、『安定と堕落』へとシフト
させていく。さて、後の方はどうだろうか?」
空高く、雲の合間にそれはあった。
浮遊大陸。天空に浮かぶその大地の中に少数の竜と竜騎士とが住む
竜の谷がある。
グサッ
1匹の竜の喉元をピエグロムの鋭い腕の刃が突き刺さっていた。
それを感知した赤い甲冑の竜騎士ゼムルがやってきてピエグロムと対峙する。
「貴様、何をしている!?仲間の竜に手を出してタダで済むと
思うなよ!!」
ゼムルは怒りを露わにして槍を構える。
ピエグロムの方は何も言わず、突き刺した腕の刃を引き抜き、
ゼムルへと体の向きを変えた。
「何も喋らない。喋れないのか?貴様が何者かは知らんが、ここで
一矢報わせてもらうぞ。」
ダンッ!
ゼムル、ピエグロムは互いに向かって土を蹴る。
ガンッ!!
ゼムルの槍とピエグロムの刃がぶつかり合う。
ミシッ。
その瞬間、ゼムルの槍が折れ、先端の刃もボロッと崩れ落ちた。
「な!?」
ゼムルは驚き、その場からすっと体を下がらせる。
「その体、相当な強度を誇るようだ。ならば、こちらもそれ相応の物を
出すとしよう。」
ゼムルはそう言うと、手を地面にかざしぼんやりと光らせた。
すると土中より一本の槍が浮き出てきた。その槍は先ほどの普通のありふれた
物ではなく、全体が緑色をして柄の先に竜の頭を模った装飾が施されて刃が出ていた。
槍自体から力が漲っているのが、見えるようだった。
「竜槍ゲイボルグ。俺が使える武器の中で最強を誇る。こいつで相手する。」
ゼムルはゲイボルグで構えなおす。
「次が本気の一撃だ。いくぞ、『ドラゴンブラストショット』!!」
再び、ゼムルとピエグロムがぶつかり合う。
ピキ...。
今度はピエグロムの腕の先端からヒビが入る。それは腕を伝い体全体へと
広がっていく。
ガガーン。
そして、ピエグロムの体は砕け散った。
「やはり、ここを支配するには無理があったか。」
現れたのはギーグだった。
「何者だ?」
ゼムルはギーグに問う。
「これは初対面だったな。俺はギーグ。組織『ヘルヘブン』の
実行部隊『アビスメーツ』の一人。今、お前が倒したピエグロムも
『アビスメーツ』の一人、いや一体だな。全身を最も硬い金属『オルハリコン』
で出来ていたのだが、所詮は人形。相当な武器で気の篭った攻撃では
耐えきれないようだ。」
砕け散ったピエグロムのかけらを見て、冷静に分析した。
「ギーグとやら。お前もこいつの仲間なら俺にとって敵ということか?」
「そういうことになるだろうが、今お前と直接やり合うつもりはない。
ここは次善の策で手っ取り早く進めさせてもらおう。もうすでに
網はかけてある。ピエグロムの動きが十分な時間稼ぎになった。
では、『ポイズン・ウィドー』。」
ギーグが魔法を唱えるとギーグから紫色をした煙が一気に辺り一面に広がだした。
「(これは毒!?)」
ゼムルはすぐに危険を察知し、その場から離れる。
「(く、この広がる勢い。仲間を助けに行く間はない。とにかくここから
抜け出さなければ。)」
ゼムルは苦い思いを抱きながら竜の谷を後にする決断を下した。
「賢明な判断だな。俺自身も毒にやられれば、笑い話にもならん。
早く抜けるか。」
ギーグもまた毒を避けるように魔法でその場から姿を消した。
精霊たちも住む、未開の地ロドニエル大陸。
ここにイーシャがやってきていた。
「ここは自然が多くてとてもいいところね。」
イーシャは散歩をするように周りの景色を見ながら歩いていた。
そうしている内に風の精霊ルービンのいるところに来た。
「おや、君は?」
ルービンがイーシャに尋ねる。
「あなたは風の精霊ね。私はイーシャ。『ヘルヘブン』の実行部隊『アビスメーツ』
の一人よ。」
「『ヘルヘブン』は聞いたことがあるよ。悪いことしているって話だけど、
本当にそうなの?」
「フフフ。怖いもの知らずね。そんな率直に聞くなんて。そうね、
見方にもよるけど、人間の間では一般には悪いことなんでしょうね。」
「ふ~ん。そうなんだ。それで、ここには何しに来たの?」
ルービンはあっけらかんとイーシャに聞く。
「私たちは今、各地を制圧しているの。それで、私はここを制圧するように
言われているの。」