ロドニエル大陸では、イーシャが地の精霊ノームと出会っていた。
「む、そなたは?」
「初めまして、イーシャと言います。」
「むむ、ルービンの気配がなくなり、そなたからは風の気配を
感じる。何か知っておるな?」
ノームは現状から考え、イーシャに問い詰める。
「はい、風の精霊さんには姿を消してもらいました。そして、
その精霊の役割を私が引き継いでいるような感じです。」
「何じゃと!?どういうことじゃ?」
ノームはまだ理解が出来なかった。
「えぇ、私が精霊の存在を一時的に消し、その代役を出来る
力があるということです。」
そう言うと、イーシャは両手の間に光の玉を出していた。
「では、あなたにも私の力をお見せしましょう。」
「な!!」
ルービンと同じようにイーシャはノームの姿を光に包んで消した。
イーシャは笑みを浮かべていた。
世界有数の港町ポートル。
ここでは今、ある噂話が流れていた。
『夜、一人で歩いていると首を刈られる。』と。
ある夜、一人の酔っ払いの男がフラフラと歩いていると、
ザンッ!
一瞬にして、男の首が斬られ飛んだ。
男の切られた首元からは大量の血が吹き飛んでいた。
そして、そのすぐそばにいたのは血塗られた鎌を手にしたジョーカーだった。
「ククク...。」
夜の惨劇はその後も繰り返され、噂話は大きく膨らんでいった。
『ポートルは闇の帝王に支配されている。』と。
そして、ポートルでは夜に出歩くものはほとんどいなくなり、
家々は固く戸締りをし、住民はみな怖れを抱いていた。
「ククク、僕には王の座に座って人を支配するなんてのは性に合わないからね。
こうやって恐怖で支配するのがちょうどいい。」
ジョーカーは仮面の下で満足そうな表情をしていた。
ラボスがレナ王女を殺し占拠されたエトールでは。
ラボスが引き連れてきた獣人が元からいた兵士に加わり軍備が
増強されていた。レナ王女の元、世界戦争の時も平和を維持してきた
コルナッカ大陸では急速な軍事化に民衆のほとんどが大きな不安を抱いていた。
広い空き地でラボスが見守る中、何かの建築が進められていた。
「至って順調だな。何の障壁もないのが、退屈なくらいだ。
これが完成すれば、少しはおもしろくなるだろう。」
ラボスはじっと現場を見ていた。
ジルが口を開く。
「で、こうなったわけか。」
ヒヨルド博士の研究室にジルたち一行と5大司祭が集まっていた。
「いやぁ、隠れ蓑を使うとはいえいつ発見されるか分からない。
その時、建物や持ち主に被害が出る可能性が十分考えられる。
出来る限り他人を巻き込みたくないと思ったときに、決まったのが
ここというわけじゃ。」
ネルフが簡単に説明する。
「それはどういうことですか?私ならどうなってもいいと?」
ヒヨルド博士はネルフに詰め寄ろうとする。
「まぁ、こいつの家なら爆発しても大して困らないけどな。」
「ちょっとジルさん。それは...。」
ヒヨルド博士の口を塞ぎ、ジルは話を変える。
「これでもうヘルヘブンについて無い情報を探し続ける不毛な事態は
なくなったが、状況がはっきりしてくると大変なことになった
としか言いようがないよな。」
「まさかエトールのレナ王女が亡くなったとは、本当に残念ですね。」
マルクが寂しそうに言う。
「あぁ、あの王女さん。平和の為に頑張ってたいい人だったもんな。」
ジルも懐かしむように言う。
「ところでマルク。あなたは感じていますか?精霊に異変が起こっている
であろうことに。」
メンデルはマルクに話しかける。
「ええ、精霊の加護が感じられなくなったことですね。」
「そうです。私の場合は5つの精霊と知り合っていますが、ルービンと
ノームの力を感じない。おそらくこれも...。」
「ヘルヘブンの仕業ということですか?」
「間違いないでしょうね。」
「ネルフのじいさん。あんたに率直に聞くけど、これからどうすればいい?」
ジルはまっすぐな視線でネルフを見つめる。
「ははは。素直な物言いじゃが、少々他人まかせじゃな。君がわしを
どう思っておるかは知らぬが、わしはそれほど万能ではないよ。
月並みな意見しか言えんが構わんかね?」
ネルフはジルに応えるように言う。
「構わないよ。あんたが、この中で一番歳をとっていることには変わりない。
俺たちが考えられないこともあるだろうし、そのまま言いなりになる気もない。
最終的には自分で決めるさ。」
「ふむ。正しい答えじゃ。では、わしの意見を述べさせてもらおうかの。
今の状況で平和的解決を図るのは相手を考えてまず無理じゃろう。
となれば、戦う他に方法はないということ。」