dark legend   作:mathto

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「ところでカフィール。俺に正義感がないってどういうことだ。

確かにお前程、崇高な理想は持ってはいないが、ある程度の

常識はあるつもりだぞ。」

エウドラはカフィールの肩に腕を絡ませる。

「悪かったな。お前はどうも好奇心だけで動くところが

あるからな。少し言い方が悪かったか。」

「分かればよろしい。」

エウドラは納得した。

「で、話を戻すが俺たちはギーグの居場所を知らない。

そこでここに一人で行ってみてくれないか?」

カフィールはゼムルに一枚のメモを手渡す。

「これは?」

「俺たちは少し訳あってそこに一緒に行くことは出来ない。

しかし、お前なら何の問題もないだろう。」

「分かった。行ってみよう。」

「お前が戦うときには必ずサポート出来るようにしよう。

健闘を祈る。」

そして、ゼムルはカフィールの宿を後にした。

 

 

「急がせはしたが、思った通りに完成させてくれるとは

文句の言いようがないな。」

ラボスは完成した建造物を見つめる。

広い円形の地面を囲むように客席が作られていた。

「『コロシアム』。さぁ、早速始めよう。」

ラボスは2人の男を中に放り込む。そして、2本の剣を投げ入れた。

「相手を殺せ。生き残った方には褒美をやろう。」

突然、コロシアムの中へと入れられた2人はどうしたらいいのか

分からず戸惑っていた。

「どうした?何もしないなら俺が2人とも殺すだけだぞ。」

ラボスが脅しを入れると2人は焦ってお互いに剣を手にして

向かい合う。

「そうだ、それでいい。」

2人は死への恐怖を抱きながら剣を振るい合う。打ち合うこと

数十回、お互いに疲れも出てきたところで偶然片方の剣が相手の腹を

突き刺した。

「あ、あ。」

突き刺した方は相手の腹から血が滴り落ちるのを見て、剣を持つ手が震えていた。

刺された方は口から血を吹きだし剣をカランと地に落とし息を引き取った。

「勝負がついたな。生き残った勝者に後で褒美の金を授ける。」

ラボスはそれだけ告げるとコロシアムから城へと戻る。

勝者の男は放心状態で勝ったという喜びはなく、生きているという

実感だけを感じていた。

これよりこのコロシアムで人対人、人対獣による殺し合いが決闘として何度も

開催され、戦う人間を闘剣士と呼ばれるようになる。闘剣士は生と死の狭間

で生を確かめる者、地獄を見る者、勝利に酔いしれる者など様々だった。

それらは観客を呼び人々に興奮を与えるようになっていく。

 

 

 

ダンッ!!

ジルは机を両手で叩く。

「何でおっさんらが分かれないんだよ!!」

「それはキュリオンがそれだけ危険な相手ということじゃよ。」

「違うだろ!今の状況で相手に合わせてこっちを振り分けなきゃいけないんだから。

俺はポートルで因縁のあるジョーカーを、精霊のいるロドニエル大陸にいると思われる

イーシャにマルクとメアリー、エトールのラボスにはパティが一人で行くって言って

るんだぞ。おっさんら5人でキュリオンってどういうことだよ?あとのシドと

ギルガメッシュはどうすんだよ。せめて3つに分かれろよ。」

ジルは興奮しながら言った。

「うぅむ。」

ネルフはジルの言い分を十分理解はしているが、素直に首を振れずにいた。

そこへ。バタンと戸を開ける音がした。

皆が戸の方を注目した。

「敵か!?」

警戒する中、入ってきたのはゼムルだった。

「あ、あんたは...。」

ジルはゼムルを見て以前の記憶を思い出していた。

「あの時の。」

ジルとゼムルは口を揃えて見合った。

「あの時に比べて随分成長したようだな。」

「へへ、ありがとう。でもどうして、ここに?」

ジルの質問にゼムルは皆に説明をした。

 

「そういうことか。」

ゼムルの説明に皆納得して受け入れた。

「それにしてもあんたが味方にいてくれるというのは心強いな。」

ジルは頷きながら言った。

「いや、以前君たちに言った通りに協力出来ず申し訳ないが、

私怨をなんとか晴らさせて欲しい。」

「ギーグって奴も俺たちが倒さなきゃいけない相手。それをして

くれるっていうなら十分俺たちの助けにもなるよ。それに

カフィールがシドを叩いてくれるっていうのもうれしい知らせだよ。

カフィールの強さは信頼に足るからな。」

「ゼムルくん。ギーグは本来、竜の谷を抑える役目を負っていたが、

竜や竜騎士を支配するには強力すぎて出来なかった。それで壊滅の

方法をとったということじゃろう。つまり今は手が空いており、

各地のメッセンジャーの役割を担っている可能性が高い。ならば

キュリオンの近くをうろつくことが多くなる。とりあえず我々と

行動を共にするのがいいじゃろう。」

「と、なると後はギルガメッシュをどうするか...。」

ジルが考え込もうとしたとき、

「その相手、俺がしてやろうか?」

新たな声がすると天井の板が一部空き、一人の男が現れた。


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