ジルたちは決めた通りに分散してそれぞれ目的となる国、場所へと
向かった。道中、『ヘルヘブン』からの妨害などは全くなく、
むしろ意図的に動かされているのではと考えられるほどスムーズに
皆、目的地へと辿り着いていく。
当然、サンアルテリア王国にいるキュリオン、シド、そして頻繁に接触
していると思われるギーグに近づくネルフたち5大司祭とゼムルが
最も早く敵と出会えることになるが、問題は密接する敵をどうやって
一人ずつにするかということだった。
キュリオンとシドは一応、議員と首相という立場であり現在の位置や
予定についての情報は得やすかった。ギーグについてはキュリオンの予定から
接触する者についてと予定の不明な時間帯についてを細かく調べていくことで
ようやく僅かな情報を得るに至る。これには情報屋だけでなく魔道連盟の
組織力をうまく活用することでなんとか難点を乗り越えられた。
こうして、当初の思惑通りの対決の構図を作ることに成功した。
カフィールは戦闘の為、シドが出来るだけ民家から離れた広い場所にいる
ときを狙い接触を図った。
「ここで決着をつけようということか。」
シドはまっすぐカフィールを見据える。
「そうだ。ここなら思いきりやれるだろう。」
「確かにな。」
カフィールとシドは互いに剣を手にする。
「神剣エクシード。」
「魔剣カルドボルグ。」
「いざ!」
カフィールとシドが一瞬で間合いを詰め、剣をぶつけ合う。
ガンッ!!!
ガンッガガガガガ!!!!
数合剣をぶつけ合った後、2人は下がって間合いを取った。
「(強いな。)」
カフィールとシドは互いに強さを認めていた。
「やはりあの老人とは力が全然違うな。」
「あの老人?」
「あぁ、剣聖ニムダだ。」
「あのニムダを殺したのはお前だったのか。」
「まぁ、全盛期であったなら今のお前と同じかそれ以上の
力があったかもしれないが。」
「惜しいことだ。あれほどの人物を殺すとは。俺はそれほど
関わりはなかったが、あいつらが知れば怒りを抑えきれなくなる
かもしれんな。」
「お喋りついでにもう一つ教えてやろう。俺たち『アビスメーツ』には
特別な力を持つ者が多い。そして、俺には『ガイア』の力がある。」
「『ガイア』?」
カフィールは聞き返す。
「そうだな。そこは説明するより実際に味わってもらった
方が早いだろう。」
「!?」
突然、カフィールの足が地面の下へと落ち始めた。硬い土が急に
柔らかくなり、まるで砂地獄へ入ったかのようだった。
「これは地の魔法か?」
「そうだな。効果はほぼ同じだろう。但し...。」
シドはカフィールに接近する。そのスピードは先ほどよりも
断然早くなっている。シドの足元の土がシドの足を動かすのを
助けるように動いていた。そして、一気に間合いを詰めたシドは
カフィールを攻撃する。
ガキィィィン。
カフィールは足元を取られながらもなんとかシドの攻撃を受ける。
「これは俺が念じるだけで発動させることが出来るから
同時に武器による攻撃をすることも可能だ。」
「ぐ。土の魔法使いと戦士の2人を同時に相手にするような
ものか。」
カフィールは歯を食いしばって攻撃に耐える。
「ぐぬぅぅ。ああぁっ!」
カフィールはなんとかシドを体ごと後ろへはじき返す。
「ほう。足場がままならない中、上半身だけの力でここまで
出来るとはさすがだな。」
シドは素直に感心した。
「(このままではすぐにやられてしまう。ここは...。)」
カフィールは体の反動を利用し高く上へと飛び上がった。
「上へ上がるか。しかし、空中では自由に動けまい。格好の
獲物だぞ。」
シドは攻撃の的を定める。
「ふん。相手がどんな小細工をしようが俺には関係はない。」
カフィールは気合を入れて剣を構える。
「いくぞ!!『アルティメット・ブレード・ウェイブ』。」
カフィールの剣から発せられた光が地上に広がり包む。
やがて光が消え地上の様子が見えるようになってくると、
草木が消滅した辺り一帯の中にポツンと一つの人影が見えてきた。
「はぁはぁはぁ...。」
シドの服はボロボロになり、シド自身は剣を地面に突き刺して
息を切らせながらなんとか立っていた。
技を放ったカフィールは地面に下りてシドに向かい合う。
「態勢が不十分で力が完全ではなかったとはいえ、攻撃をまともに
受けてこれだけ耐えるとはやはり只者ではないな。」
「フハハハハ。神の剣を使っているとはいえ、人間でここまで
やるとはな。想像以上だ。」
「そろそろ止めを刺してやろう。」
カフィールは剣を再び構える。
「いいだろう。俺の真の姿をみせてやろう。」
シドはそう言うと、身につけていた被りものの服を前に脱ぎ捨てる。
その時一瞬、シドの姿が見えなくなる。