ジルはポートルの宿屋で休息を取っていた。
「ジルさん、お客さんですよ。」
宿の主人がジルに声をかける。
「え?誰だろう?」
ジルは部屋から宿屋の玄関まで出ていく。
そこにはカフィールが立っていた。その後ろにはエウドラも
付いていた。
「表に出れるか?」
カフィールがそう尋ねるとジルは黙って頷いた。
外に出ると、
「お前の力を試しておきたい。」
カフィールは剣を手にする。
「お、おい。ここでやるつもりか?」
「いや、ここでは民家に被害が出るだろう。外れの平野に行こう。」
3人は町の外れまで歩いて移動した。
「ここなら問題はないが...。」
ここでジルも剣を手にするが、迷いや戸惑いを抱えていた。
「いくぞ。」
カフィールはジルに向かってくる。
ジルはカフィールの剣に自身の剣を合わせた瞬間、
「(これは受け止められない。)」
と思い、避ける方針に決めた。
それからカフィールの攻撃にジルは剣を振るいながら避け続けていた。
しかし、それはジルは集中出来ずにいたせいで非常にギリギリの闘いを
強いられていた。
「いきなり戦えと言われて戸惑うのも当然とは思うが、
そんなものではこの闘いの意味がない。」
「一体なぜあんたが俺に闘いを仕掛けるんだ?俺の中であんたは
道は全く違うが辿り着く目標はきわめて近いものであると思って
いたというのに。」
「あぁ、全くその通りだ。だからこそだ。この闘いは。
お前に託せるほどの力と意思を持っているのかを知っておきたい。」
「託す?一緒に戦えばいいんじゃないのか?」
「こちらにはそれが出来ない訳がある。」
「そうか。あんたにも事情ってもんがあるんだろうな。
ならこれ以上は何も聞かない。こちらも気合を入れて戦わせてもらおう。」
ジルは気合を入れ、先ほどまでの戦いぶりとは様変わりした。
攻撃を避けるのも難しい状態だったのを反撃の機会を狙うところまで
もってきた。
「(カフィールの剣は攻撃力はとてつもないが、通常は隙も多くなる。
それを補おうと直線的な攻撃に変化を持たせれば体への負担が増し、
攻撃力も下がる。そこに付け入ること出来れば勝機がある。)」
「(俺はこの剣で長く戦ってきた。この剣の長所短所共に知り尽くして
いる。相手がどう対処しようとも切り返せる自信がある。)」
2人の闘いは一進一退の攻防を繰り広げる。
「(俺の剣は十分すぎる攻撃力がある。太刀筋に変化をつける為、
少々攻撃力が下がろうが問題はない。)」
「(く、中々隙が見えない。)」
ジルは本気で戦っていたが、カフィールの強さに苦しい戦いを
していた。
「(このまま戦いが長引けばこちらが持たないな。ここは...。)」
2人の戦いを少し離れたところからエウドラはじっと見ていた。
「(む。ここだ!)」
ジルは僅かな隙に全ての力をかける。
「いくぞ!『ギガブ...』。」
ジルが必殺の一撃を繰り出そうとした瞬間を狙い
カフィールはジルの剣を弾き飛ばした。
「!!!!」
ジルはその瞬間、顔が青ざめる。
「(やられる。)」
そう思い目を閉じて覚悟をしたが何も起きなかった。
カフィールは剣を下ろしジルから一歩下がった。
「あれ?」
何もなかったことに不思議な顔をするジル。
「いいのか?」
ジルの問いに対し、
「あぁ。俺の目的はお前を倒すことじゃない。お前の力を
見たかっただけだ。その目的は十分達成出来た。」
「そう。」
ジルはとりあえず納得した。
「さて、そろそろ俺の出番だな。」
ここでエウドラが2人に近づいてきた。
カフィールはエウドラに対し頷くとジルの方を向き、
「ジル、剣を取って来い。」
ジルは言われるままに飛ばされた自分の剣を拾いに行き
戻ってくる。
「ジルには説明しなければいけないな。」
ジルは頷く。
「まず、俺は今まで悪の組織ヘルヘブンのことを独自に追っていた。
そして、ヘルヘブンの総帥であり悪の元凶である邪神の存在を知り
倒したいのだが、前の戦いで俺の命はもう残り少ない状態になってしまった。
そこで俺の意思を継げる者を考え、お前を選んだ。」
「俺?」
ジルはきょとんとする。
「そして、どうせなら邪神に勝つ可能性を少しでも上げておきたい。」
「そこで俺の登場という訳だ。」
エウドラがカフィールに続けて話す。
「カフィールの剣『エクシード』をジルの剣『デイブレード』に
合成させる。」
「え、そ、そんなことが...。」
「出来るんだ、俺にはな。」
エウドラは驚くジルに自信を持って答える。
「さぁ、早速始めるとしよう。」
エウドラはカフィールの剣『エクシード』とジルの剣『デイブレード』に
手を添える。手はぼんやりと青白く光りだす。
「ふんっ。『ポルンガ』。」
呪文と唱えるとエウドラの手の光が『エクシード』と『デイブレード』にも移り
光りだす。
そして、光が強くなり一瞬視界が真っ白になり元に戻ったとき『エクシード』
の姿は消えていた。
「これで完了だ。」
「え、これで...。」
ジルは呆気にとられる。
「あぁ、これから『デイブレード』は念じれば『エクシード』の力を引きだせる。」
「『エクシード』に宿りし神エクスデスよ。ジルのことを頼んだぞ。
そして今まで俺に力を貸してくれたこと感謝する。」
カフィールは見えなくなった自身の剣に話しかける。
「へぇ~。」
ジルは見た目は変わらないが、『エクシード』が合成されたことを
不思議に感じていた。
「さて、これでこちらの用事は済んだ。後の戦いの健闘を祈る。」
それだけ言って、カフィールとエウドラはジルの前から立ち去った。
ジルと別れたカフィールとエウドラ。
「エウドラもここで行ってくれていいぞ。」
「お前はこれからどうするつもりだ?」
「俺は最後に父の墓参りでもするか。もう特に自分がすべきと
思うこともないからな。」
「そうか。お前のような男がいなくなるのは寂しいが、
力になれたとしたら本当によかったと思えるよ。」
「お前は俺に十分すぎるほど力を貸してくれた。
感謝してもしきれない程にな。」
「そういう言われ方は照れるな。さて俺はどうするかな?
俺も先の戦争で軍師をして以来、やりたいことというのもないのだが。
田舎で農業でもしようかな?」
「ははは。お前が農業?似合わないにもほどがあるな。
しかし、悪いことではない。やってみたいと思ったのなら
やってみるのもいいかもな。」
「自分でも似合うとは思わないがまぁいいだろ。」
カフィールは笑顔で頷きエウドラと別れた。
一人になったカフィール。
「俺は自分の正義を貫き生きた。これは人の生き方として
随分贅沢なものなのかもしれないな。なかなか自分の思うように
生きるというのは難しいものであるし。ただ一つ心残りと言えば
悪の根源をこの手で打ち砕けなかったことか。まぁ、それは
俺じゃなくても他の誰かがしてくれればいい。正義の心で動いている
者はこの世界にいなくなることはないだろう。さてと...。」
カフィールは再び歩き出した。
エトールのとある民家で。
「う、ううん。」
ベッドの上でパティが目を開ける。
「お、やっと目が覚めたか。」
パティの傍で座っていた男が駆け寄り話しかける。
「わ、私は...。」
「平原で倒れているところをかついできたんだぞ。」
「おじさんが...。そう、私は体力と魔力が尽きてまた倒れちゃったんだ。
ありがとう。」
パティはまだ疲れがかなり残っていて顔に出ていたが、できる限りの
笑顔で助けてくれた男に礼を言った。
「気にするな。元気になるまでゆっくりしてていいからな。」
男は笑顔で返した。