dark legend   作:mathto

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「クラレッツのラゴズは城主って名乗っていましたけど、

王ではないのですね。」

レナの話を真剣に聞いていたマルクが質問をする。

「はい。クラレッツでは王族が絶え、城はあっても国という形

は崩れていました。そこへ野蛮なラゴズが城を我が物としたのです。

民衆はラゴズに悪政を強いられました。私は改善するようにと

手紙も出したのですが、無視されているようで。とても心苦しいことです。」

「それなら大丈夫かもしれませんよ。」

「え?」

ジルとマルクはクラレッツ城でのことを説明した。

「そうでしたか。人々の反感を買って騒動が。

いつかそうなるのではと思っていました。」

そこへ身の軽そうな男が一人現れレナの前へやってきた。

「あなたはエトールの王女ですね?」

「はい、そうですが。」

「私はクラレッツからの使者です。この度、

クラレッツは民主国家へと生まれ変わることに

なったことをお伝えにやってきました。

今はまだ暫定的なものですがいずれは正式な政府を

組織していきたい所存です。」

「いい国になるといいですね。」

レナは笑顔で答えた。

「はい、それではまた。」

「あ、ちょっと待って。ラゴズってどうなったの?」

ジルはクラレッツの使者に尋ねた。

「あいつなら処刑されたよ。それだけの酷いことをして

きたんだから、まぁ当然だろうね。」

使者はそっけなく言って、またクラレッツへと帰っていった。

「そっか。自業自得ってやつかな。」

「仕方がありませんね。ところであなたたちはこれから

どうするのですか?」

「そうですね、とりあえずランドールに戻って王様に

会おうと思います。大丈夫でしょうがまた元気な姿を

見たいですから。ねぇジル。」

「うん。」

「そうですか。それではハンス王に私からも

よろしく言っておいてください。あとまたいつでも

エトールに来てくださいね。」

2人は王女に手を振ってランドールへと戻っていった。

 

 

 

ランドールの城へと戻ってきたジルとマルク。

「俺たちのこと忘れてたりしねぇかな?」

「まさかそんなことはないと思いますよ。」

と喋りながら玉座の間へやってくると

王様がいつも通りに座って出迎えた。

「よく来てくれた。」

王様は2人に挨拶をした。

「(ほらな。ちゃんと覚えてるだろ。)」

ジルはマルクに小声で話し、マルクはそれに頷いた。

「ところで2人はこの国は初めてかな?

まぁゆっくりしていってくれたまえ。」

「え!!えええぇっ!!!!!」

マルクは大声を出して驚いた。

「こらっ!王の前で失礼じゃろう!」

傍にいたセバスチャンが怒った。

「王様、本当に覚えてないんですか?俺たちのこと?」

ジルも驚いた表情を見せながらハンスに尋ねた。

「覚えている??俺たち???2人の若い男。あっ!

君たちはジルとマルクか?」

2人は王様の言葉を不思議に思いつつ頷く。

「ハンス様から聞いているよ。言い忘れたが、私は

影武者だよ。」

「あぁ。そういうことか。」

2人はようやく納得できた。

「それでハンス様に会いに来たんだろう?今、ハンス様は

疲れて寝室で休息をとっておられる。君たちは特別に通すことを

許されているから案内させるよ。」

2人は兵士に案内されハンスの寝室へ入った。


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