dark legend   作:mathto

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「ふぁ~あ。」

朝になりジルは目を覚ました。

「よく眠れましたか?」

マルクはもうすでに起きていた。

「あ、早いな。」

「いえ、さっき起きたところですよ。

それより今日はこの町の案内をしようと

思うんですけど、どうですか?

来たばかりでまだ全然知らないでしょう?」

「嬉しいけど、手伝いはしなくていいのか?」

「ええ、今日は休みですから。」

「そっか、じゃあよろしく頼むよ。」

 

朝ご飯を食べた2人はさっそく町へ出かけた。

 

「ええと、ここは預かり所です。アイテムとかお金とか

を自由に預けることが出来るんですよ。」

「それは便利だな。」

 

「ここは道具屋です。薬草や傷薬なんかを売ってますね。」

「村にはよろずやが一軒あってさ、薬草だけじゃなく武器とかも

いろいろあったけどここより品物の種類がずっと少なかったな。」

 

そのあともマルクの案内は続いた。

...

 

「いやー、この町のことがよく分かったよ。ありがとう。」

「どういたしまして、私も楽しかったです。」

 

案内も一通り終わり2人が一息ついたとき、

2人の目の前に大きな人だかりが出来ていることに気づいた。

 

「ん?なんだろうな?」

「さぁ、たしかあそこは町長の家だったはずですけど...

見に行ってみますか?」

「そうだな。」

 

群集に近づいていくと一頭の馬が待っていた。

「この馬がなんかあんのか?」

「そうじゃないみたいですよ、みんな家の中を気にしてますから。」

「ねぇ、何で集まってんの?」

ジルは群集の一人に聞いてみた。

「カフィール様がここに来てるんだよ。」

「カフィール?誰それ?」

「知らねえのか、名門シュトラウス家の出の聖騎士様だよ。

モンスターの大群をたった一人で全滅させたこともあるらしい。

馬に乗ったときのあまりに速く強いさまからついた異名が’白銀の狼’。」

「へぇ~、すごい奴なんだな。」

と感心しているとドアが開き一人の男が出てきた。

「よく見えねえな。」

その男は地面を一蹴りし馬にまたがった。

「あ、見えた。あいつがカフィールか。」

銀色をした長髪にきれいに整った顔。まさに美青年といった感じだ。

それでいて目は鋭く周りを寄せつけない凄さをかもし出していた。

ジルはじっとカフィールを見つめているとふと目が合った。

「(こいつは、まさか...)」

カフィールはジルに何かを感じとっていた。

ジルはただただ圧倒されていただけであった。

そしてカフィールは立ち去っていった。

「それにしてもカフィール様はここで何してたんだろうな?」

「そりゃ、町長に用事があったんだろうよ。」

「分かってるよ、問題はどんな用事かってことだよ。」

「さあな、俺達に関係あることなら知らせてくるんじゃねえか。」

群集の中の二人が会話をしていると家の中から中年の男が一人出てきた。

 

 

 

出てきた男は周りを見渡し、たくさんの人々が集まっていること

を確認すると、大声で皆に向かって喋りだした。

「ご存知の通りかもしれぬが、わしはこの町の町長である。」

「へぇ~、あの人が町長か。」

ジル達を含め全員が町長に注目していた。

「カフィール殿の情報によると、

この町は今ゴブリンどもに狙われており、明日にも攻めてくる

かもしれない。その数、およそ300匹。

そこでこの町を守るために戦ってくれる勇敢な

戦士を募る。もちろん働きに応じて礼金を支払うつもりだ。

戦う意志のあるものは日が沈むころ

もう一度ここに集まってもらいたい。

出来るだけたくさんの者が集まることを願う。」

と最後まで伝えると、すぐに家の中へと戻っていった。

突然の町長の知らせに群集は動揺し

ざわめきは大きくなるばかりだった。

この知らせは一気に町中に知れわたり、

あるものは恐怖で家に閉じこもり、あるものは

戦闘のための準備を整えていた。

そしてジルは...

 

「当然、参加するよな!」

「そうですよね。この町を守らなければいけませんからね。」

「それにお金がもらえるっていうし。」

「そっちですか!」

「冗談だよ、冗談。そうだそろそろ日が沈むから行こうぜ。」

「はいっ!」

そうしてジル達は再び町長の家の前にやってきた。

もうすでに剣や斧などの武器を手にしたいかつい男達が10数人ほど集まっていた。

間もなく町長が家の中から姿を現した。

「ふむ、これだけの戦士が集まってくれたか...

もう少し多いほうがよかったが、何分急なことだ。仕方あるまい。

さっそくだが、これから作戦会議を行う。皆の者、家の中に入ってくれ。」

家の中は意外と広く全員が入ってもかなり余裕があるくらいだった。

どうやら町の会合に使われているらしく大きな円形のテーブルに

たくさんの椅子が備え付けられていた。皆が席につくと町長は

再び話し始めた。

「さて敵であるゴブリンについてだが、一匹の力は弱く見習い剣士であっても

十分倒せるだろう。だが今回の場合は群れていてその数が巨大である。

熟練の戦士が一人いたところで勝つことは難しい。そこで罠を張る。

落とし穴だ!」

「おいおい、そんなもんにひっかかるのかよ。」

すかさず突っ込みが入る。

「ふむ、そう思うのも無理はないな。だがゴブリンは集団行動をとるとは

いえ、知能は我々人間よりも劣る。落とし穴があることを予想したり

怪しんだりするようなことはないだろう。これはかなり成功率が高いと

読んでおる。」

「ちょっと待って下さい。この作戦には2つ疑問点があります。

一つはこの時間の無い中でどうやって落とし穴を掘るかということ。

もう一つはどうやってその落とし穴へゴブリンを誘い出すかということです。」

「第一の質問についてはすでに解決しておる。戦うことは出来ないが

協力したいという町の者達が大勢いてな、今も作業をしている。明日までには

完成する。そして第2の質問についてだが、それについてはこの中から

足の速さに自信があるものに囮をしてもらおうと思うのだが、誰かいないか?」

「それなら、この俺ザインが引き受けるぜ。足にはちょっと自信があるんだ。」

細身で目のつりあがった男が答えた。

「ザインには後で落とし穴の仕掛ける場所を印した地図を渡そう。

さて、これで作戦会議は終わろうと思うが何か質問はないか?」

皆、なんとか納得した様子で質問はなかった。

会議は終了し、その日は町長が用意した宿屋で一泊することとなった。

 


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