dark legend   作:mathto

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王の寝室ではハンスは豪華なベッドですやすやと眠っていた。

「せっかく来たけど無理やり起こすのも悪いよなぁ。」

「そうですね。残念ですけどまた来ればいいことですし。」

そういいながら2人が部屋を出ていこうとすると、

「むにゃむにゃ...」

ハンスがまだうつろな眼でジルとマルクを見た。

「ん、ジルとマルク?」

ハンスの呟きに2人は反応し振り返った。

「あ、やっぱりジルとマルクじゃないか!」

ハンスは一気に目を覚まし喜びの表情を浮かべた。

「王様!」

2人はハンスのもとへ駆け寄る。

「元気そうでよかった。心配して来たんですよ。」

「それはすまなかったな。それにしても

どうしたんだ、2人とも。服がボロボロじゃないか。」

「いや、実は...。」

 

2人は今までのことをハンスに話した。

 

「そうだったのか。それは大変だったな。それにしても

あの石が重要な物だったとは...。知らなかった自分が

恥ずかしい。」

ハンスは少し下を向いた。

「そんなことはないですよ。昔の話なんですから。

知らなくても無理はないですって。」

マルクはハンスを励ますように言った。

「ありがとう。そう言ってくれると気持ちが楽に

なるよ。...あれ?ジル、剣はどうした?」

「ああ、言ってなかったですね。折れちゃったんで

捨てたんですよ。」

「なんだそれならこの国の...。」

「(これは伝説の宝剣をもらえる!?)」

ジルは大きな期待をした。

「兵士達が愛用している鋼の剣を差し上げよう。」

ジルは期待を裏切られがっくりした。

「あ、ありがとうございます。」

力ない声で礼を言う。

「なにか元気がないようだが?」

「いーえ!そんなことはありませんよっ!」

ジルは空元気を出して答えた。

 

 

 

「あの、私たち修行中ですのでまた

どこかに行こうと思うのですが。どこに

行けばいいのか分からなくて。

教えていただけませんか?」

「もう行くのか?もっとここでのんびり

していってもいいのだぞ。宿の面倒とかは

見てもいいのだし。」

「えっ!いいの。じゃあお言葉に甘えて。」

グニッ

「痛っっってぇぇー!」

マルクがジルの足を踏む。

「いいえ、そう甘える訳にはいきませんので。」

「そうか、しかしまぁそういうことなら。

ここから船に乗って港町ポートルに行くのが

いいだろうな。そこは世界中から船が行き来

してるからどこへでも行けるだろう。

またそこから歩いて旅してもいいしな。」

「ありがとうございます。それでは失礼します。」

マルクはハンスに礼を言って不満な顔をするジルを引っ張る。

「君たちには本当にいろんな意味で感謝している。

もし困ったことがあり協力できることならば

いつでも助けになろう。」

「はいっ!ありがとうございます。」

ハンスの言葉に2人揃って笑顔で礼を言って部屋を出ると

兵士から鋼の剣を受け取って城を出た。

 

「おい、マルク。なんでさっき王様の申し出を断ったり

したんだよ。別に2,3日ここにいてたって全然かまわないだろう?」

「邪魔をしたら悪いかなぁと思ったもので。」

そういいマルクはジルの後ろを指差す。

「なんだよ。何があるって...。」

ジルが振り返った先には城へと向かう一人の少女の姿があった。

それを見て不満な顔を一転して納得した面持ちに変わった。

「なるほど。王様とミウちゃんの仲を邪魔しちゃ悪いもんな。

さっきは悪かったよ。」

「いえ、気にしないで。さぁ、行きましょう。」

「おう。」

2人は仲直りし船着場へと向かった。


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