dark legend   作:mathto

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「着いたー!」

船がポートルに着くや否や真っ先に降り立つジルとマルク。

「やっぱり新しい町はわくわくするな。」

「さっそく町の中を見て歩きましょうよ。」

走って港から町へと入っていく2人。

「世界有数の港町だけあって大きいですね。」

「あの酒場に行ってみようぜ。」

「酒場ってお酒飲むんですか?」

「違うって。仲間を探したり情報を集めるには酒場が

一番だって相場で決まってるだろ。」

「そういうことでしたか。行ってみましょう。」

「町が大きいと人も多いよな。」

2人は大勢の人が行き交う通りから酒場へとやってきた。

酒場の中では酔っ払いのオヤジ、鎧を身に着けた戦士など

様々な人が思い思いに酒を飲んでいた。

「う~ん。いないかな。かわいい子。」

「あの人なんてどうですか?」

マルクは一人で酒を静かに飲んでいる魔法使い風の

大人っぽい雰囲気を出している女性を指差した。

「なかなかよさげじゃん。顔がはっきり分からないけど。

声かけてみようか。」

ジルとマルクはその女性に近づく。

「おねーさん、俺たちといっしょに旅しませんか?」

「はい?」

ジルの呼びかけに反応して女性が顔を向けたとき、

「(ゲ。これは酷い顔だ。)」

ジルはショックを受けた。

「ごめんなさい。人違いでした、さようなら。」

そう言ってすぐに女性から離れた。

「なんなのかしら、もう。」

女性は少し気分を害したがすぐにさっきと変わらず

静かにお酒を飲み始めた。

 

 

 

酒場で突っ立って周りを見回すジルとマルク。

「ふぅ~。さっきは危なかった。ちゃんと

声かける前に見た目は確認しとかないとな。」

「見かけなんてあまり気にしなくていいと

思いますけどね。実際は気が合うかどうかとか

の方が大事ですよ。」

「いいや。俺はルックスを重視する。不細工な

女と旅するなんて俺のプライドが許さねぇ。」

「なんか言ってることすごい酷いですよ。」

「酷いのはさっきの顔。俺は正直なだけだ。」

「ねぇ。」

声の主はジルの服を下から引っ張り目を向けさせた。

見てみると8、9才位の少女が手を後ろに回して

笑顔で立っていた。

「お嬢ちゃん、ダメだよ。一人でこんなとこにきちゃ。

迷子になっちゃったのかな?お兄ちゃんがお父さんか

お母さんを探してあげようか?」

ジルは優しく少女に声をかけ一緒に酒場の外へ出た。

「お兄ちゃん達、仲間を探してるんでしょ?」

「そうだけど。」

2人は不思議そうな顔をする。

「私が仲間になってあげる。」

「さーて、早く親を探してあげないとね。」

ジルはさっきの少女の言葉をなかったことにした。

「もうっ、無視しないで。」

「お嬢ちゃん、名前は?」

今度はマルクが少女に質問した。

「私、パティ。」

「それじゃパティちゃん、お父さんとお母さんは?」

「親には旅に出てもいいって言われたよ。」

「それじゃいいんじゃないんですか。仲間に入って

もらって。パティちゃん、かわいいし。」

「ダメだ、ダメだ。こんなお子ちゃまは連れて行けねぇ。」

ジルの言葉にムッとしたパティは杖を手にし地面に何かを

描き出した。


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