dark legend   作:mathto

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泥棒の少年ダニエルは勇者の子孫であると主張した。

「はいはい、それじゃダニエル君。

親のところに連れてってもらおうか。」

ジルはダニエルの言葉の内、名前以外は聞かなかった

ことにした。

「お前、俺の事信じてないな。」

ダニエルはジルに突っ掛かる。

「じゃあ、勇者の子孫が何で引ったくりなんて

するんだ?」

ジルはダニエルに問い詰める。

「それはだな、えーと...。そうだ。お前達が冒険者

みたいだからその力を少し試してやろうと思ったんだ。」

ダニエルは苦しい言い訳を言った。

「嘘をついてるみたいですね。」

「どうせ勇者の子孫ってのも嘘なんでしょ。」

マルクとパティが呟く。

「む、貴様らまで疑っているのか。なら俺が

勇者の子孫である証拠を見せてやる。」

ダニエルが体を覆う布を脱ぐと背中から剣が表れ

それを抜いた。その剣の見た目は明らかに他とは違い、

芸術品としての美しさと武器としての力強さを

兼ね備えていた。

「これぞ、勇者の持つ『聖剣エクスカリバー』だ!」

ダニエルは自慢気に剣を天にかざす。

「ほう、それが伝説の聖剣か。それじゃさっそく頂こうか。」

ジルの目の色が変わる。

「お、お前、何言ってんだ?渡すわけないだろう。」

ダニエルはジルの言葉に少し恐怖を感じ剣を構えた。

「そういうことなら。」

ジルも剣を構えた。

 

 

 

聖剣エクスカリバーを賭け対峙するジルとダニエル。

「今の状況見たらジルが悪者みたいじゃない?」

「ジルはたまに欲深いところがありますからね。」

「止めなくていいの?」

「ま、大丈夫ですよ。」

不安げに見守るパティと普通に見つめるマルク。

「別にそっちからきてもいいんだぜ。」

ジルはダニエルを挑発するがダニエルは構えたまま

一向に動かない。

「ならこっちからいくか。」

ヒュンッ!

ジルは剣をダニエルに振り落とす。

「ひいぃぃぃ。」

ダニエルは怖くなり目を完全につぶってしまう。

「やっぱやーめた。」

ジルはダニエルに当たる直前で剣を止めた。

「ガキ相手にマジになることもないよな。

エクスカリバーをこんな形で手に入れても

全然嬉しくないしな。」

ジルは正気を取り戻したかのように冷静に言った。

「(じゃあ、最初からするな。)」

パティは心の中で呟いた。

「ね、大丈夫だったでしょ。」

「まぁね。マルクはジルのことすごい分かってるんだね。」

マルクとパティが話している。

「う、う、うわぁぁぁぁ~ん。」

ダニエルは緊張の糸が切れたように突然泣き出した。

「悪かったな。大人気ない事して。大丈夫か?」

ジルはダニエルの肩に手をかけやさしく言う。

しかしダニエルはその手をはじく。

「くっそー!覚えてろよ。」

そう言ってダニエルは涙を拭きながら走り去っていった。


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