dark legend   作:mathto

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ポートルを出て野道を行くジルたち3人。

「なんか町を出ると冒険って感じでわくわくするね。」

パティが笑顔で2人に話し掛ける。

「最初は俺もそうだったよ。」

そう言ってジルは旅立ちのときを懐かしんだ。

ガサガサ。

草むらからざわめく。

「モンスターか。」

ジル達は警戒する。

ひょこっ。

ジル達の目の前に一角ウサギが現れた。

「かわいい~。」

パティは笑顔で一角ウサギに近づき抱きかかえた。

一角ウサギはパティの腕に噛り付いた。

「いたっ。」

パティは痛さで思わず一角ウサギを放す。

放された一角ウサギはパティ達を敵対視して構えている。

「パティ、危ないですよ。一角ウサギは気性が荒くて

人間にはなつかないんですよ。」

マルクが注意を促す。

「大丈夫だよ、こんなにかわいいんだもん。

ほら、怖くないからおいで。」

パティはしゃがんで一角ウサギを優しく誘う。

一角ウサギはしばらく警戒して身動きを取らなかったが

パティに敵意がないことを理解し、徐々に近づいていった。

 

そして...。

「うそ、一角ウサギが人間になついてるなんて。」

マルクが驚いて見る先には、パティと一角ウサギが楽しそうに

じゃれあう姿があった。

「いいじゃん。仲がいいんだからさ、細かいこと気にするなよ。」

「ねぇ、ジル。この子連れてってもいいよね?」

「ああ、別に構わないぜ。そいつに名前を考えないのか?」

「そうだね。え~と、ぴーちゃんに決めた。」

 

 

 

「こっちだよ。おいで、ぴーちゃん。」

パティの呼び声に応えてパティの元へ走りだすぴーちゃん。

「よしよし、いいこいいこ。」

パティのところまでたどり着いたぴーちゃんをなでなでする。

パティは一角ウサギのぴーちゃんとその場で遊びつづけていた。

「あのぉ、お楽しみのところ悪いんだけどそろそろ

先に進みたいんだけどいいかな?」

待ちくたびれたジルがパティに催促する。

「ごめん。カルコームに行くんだったね。」

パティが謝りカルコームに向かって歩きだそうとしたとき、

ガサゴソガサゴソ。

草むらから少し大きな物音がする。

「今度は何だ?」

再び警戒するジル達。

ひょこひょこっ。

一角ウサギの集団が現れた。

一角ウサギ達は敵意を剥き出しにし今にも飛び掛らんと

する様子だった。

「この一角ウサギ達ってぴーちゃんの仲間じゃないですか?」

「え、うそ。ぴーちゃんは私とずっといっしょだもん。」

「放してやれよ、パティ。こいつは仲間といっしょにいた方が

幸せなんだよ。分かるだろ?」

パティはうつむいたまま黙って腕の中にいたぴーちゃん

を放した。ぴーちゃんは一目散に集団の元へ行った。

一角ウサギ達は何かを話しているような動きをしたかと

思うと先ほどの敵意は消え、おじぎをしてまた草むらの中へと

去っていった。

「これでよかったんだね。」

パティは目に涙を浮かべながら2人に言った。

「そうだよ。ぴーちゃんはきっとパティに会えてよかった

と思ってるよ。」

ジルがパテイを慰めるように言う。

「見てください、2人とも。」

マルクが指差す先にはたくさんの木の実が置かれていた。

「きっとあいつらからのプレゼントだぜ。」

「そだね。」

パティは笑顔を取り戻しまた歩き出した。


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