次の朝、対決の場である村のすぐ近くの原っぱへ集合することになった。
「よーし、みんな気合入れていくぞ!」
「おー!」
誰からともなく威勢のいい声があがり、
みんなの士気が一気に高まった。
「いよいよだな、マルク。魔法使いとしてのお手並み拝見といかせて
もらおうかな。火の玉とか出せるんだろ?」
「いえあの、私は攻撃するの好きじゃないんです。回復魔法が
専門でして。」
「えっ、そうなの。まぁそういうことなら俺が怪我したときは
頼むな。」
「はい、まかせてください。」
ザインは数百メートル先でゴブリンたちが来るのを待っていた。
「来た!」
棍棒を手にしたゴブリンたちがズンズンとやってきた。
そしてザインを見つけると勢いよく走り始めた。
ザインはゴブリンとの距離が近づきすぎないようまた
離れすぎないよううまく調節しながら落とし穴へと
うまく誘い出した。
結果、ドス-ン!
ゴブリン達は狙い通り落とし穴へと落ちていった。
穴は一晩で作ったとは思えないほど深く掘ってあり、
落ちたゴブリンが這い上がってくることは不可能な状態だった。
「やったぜ、これで3分の2は減ったぜ。」
ザインは大喜びでジル達がいる本陣のところまで戻ってきた。
「残り約100体。いけるぜ。」
そして誰もが楽勝と心に思いながらぶつかることとなった。
勢いづいた戦士達は次々にゴブリンを倒していった。
しかし、その勢いは徐々に下がってきた。
一度に多人数を相手にすることは予想以上にきつく
じわじわと体力を奪っていったからだ。
「ぐ、くそう。」
一人がゴブリンに背後から襲われ傷を負った。
そこからなんとか後方へと逃れてきた。
「大丈夫ですか?今すぐ癒しますから。
『ホワイトウィンド』」
白くてやさしい竜巻が傷ついた男を覆った。
そして傷はみるみる癒えていき元気になった。
「サンキュー、助かったよ。」
「やるじゃん、マルク。」
近くで戦っていたジルはその様子を興味深く眺めていた。
そして険しい戦いであったが、なんとかゴブリン達を
全滅させることが出来た。
「はぁ~、もうヘトヘトだぜ。」
「いやぁ、誰も死ななくてよかったです。」
「それはマルクのおかげだよ、マルクがいなかったら
ここまで戦えなかったもんな。」
戦いを終えた戦士達は皆笑顔で町長の家へと戻ってきた。
遠くから戦いの様子を見ていた町長は戦士達にねぎらいの言葉をかけた。
「みんな、よく戦ってくれた。本当に感謝する。」
そして人数分の金貨の入った袋を配った。
「えっ、こんなにいいんですか。」
「ああ、わしからの気持ちじゃ。快く受け取ってくれ。
それから、ジル君とマルク君だったかな?
若いのによく頑張ってくれた。これからのよりよき
活躍を祈っておるよ。」
「ありがとうございます。」
そう言って二人は町長の家を後にした。
「なぁ、これだけお金が手に入ったんだ。
そろそろ新しい土地へ旅立ってもいいんじゃないかと思うんだが。」
「そうですね、アンセルさんに話してみましょうか?」
そして診療所へと帰り、アンセルに説明した。
「おめぇらなかなかやるじゃねぇか。見直したぜ。
旅立つだって、おう行け。どんどん行け。
俺はお前達をずっと応援してるからな。
頑張れよ!」
「ありがとう、アンセルさん。」
その日はアンセルに精一杯のもてなしを受け、
次の日、旅立つこととなった。