dark legend   作:mathto

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「くく、恐ければ逃げてもいいんだよ。僕から

逃げ切れるかは分からないけどね。」

「くっ。」

ジルは剣を抜いて構える。

「ほぉ、僕とやるのかい?なかなかいい顔をするじゃないか。

さぁ、来てごらん。」

ジルは誘いに乗り、ジョーカーに斬りかかった。

スッ。

ジルが剣を振り落とすと同時にジョーカーの姿が

目の前から消えた。

「動きもなかなかだ。でもまだまだ僕には届かないねぇ。」

ジョーカーがジルの背後に現れる。

そしてジルの首元にジョーカーの大鎌が当てられる。

「(殺される。)」

ジルは自らの死を予感した。

「ん?君は......。ははははは、これは愉快だ。

これからしばらく退屈しないで済みそうだ。」

そう言うとジョーカーはジルに止めを刺さずに

あっという間に去っていった。

ジルは恐怖で頭が少し混乱していた。

「マルク達のところへ戻ろう。」

なんとか正気を保ちながらマルクとパティの待つ

町の手前まで戻ってきた。

「あっ、戻ってきましたね。」

「よかったね。」

戻ってきたジルに2人は喜んだが、ジルの様子を

見ると一変した。

「どうしたんですか?汗びっしょりで。」

「それに顔色が無茶苦茶悪いよ。」

「はぁはぁ、少し休ませてくれ。」

疲れきっているジルの言うとおりに2人はしばらく

何も話し掛けずに休ませた。

 

 

 

「ふー。やっと気分もよくなってきた。

マルク、パティ、心配かけて悪かったな。」

しばらく木陰で座って休んでいたジルが口を開いた。

「いえ、私達のことはいいです。しかし、この町で

何があったんですか。戻ってきたすぐのジルは

普通じゃなかったですよ。」

「うん、あたしもそれが知りたい。」

「ああ、そうだな。それは言っておかないとな。」

ジルはカルコームの中で見たもの、体験したことを

小さいパティが出来るだけショックを受けないように

死体の状態などの細かい部分は削って話した。

「酷い。」

それでもパティのショックは大きかった。

「私達はどうしたら...。」

マルクは戸惑っている。

「何も出来ないさ。ただ通り過ぎるだけだ。」

ジルはさらって言った。

「そんな冷たいよ、ジル。せめて町の人たちの

お墓を作ってあげようよ。」

「そんなことをして何になる?世界中の死体という

死体の墓を作って回るとでも言うのか?」

「そんなことは分からないよ。でも今はそうしたいの。」

「それに耐えられるのかこの匂い。町の中はもっと

匂いがきついし、無残な光景を目の当たりにする

ことになるんだぞ。それでもやるのか?」

ジルは事が事だけにきつめに問い詰めた。

「うん、それくらい我慢してみせるよ。」

パティは決意を固めて答えた。

「マルクはどうする?」

「もちろん、やりますよ。」

「分かった。じゃ、町の中に行くぞ。」

3人は揃って町へと入った。


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