dark legend   作:mathto

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ジル達は町には着いたが泊まるところがなく困っていた。

「何でどこも反応ないんだろう。」

「町の人はみんな早く寝るってこと?」

「もしくは『何かを恐れて閉じこもっている』

でしょうか?」

ジャキジャキ。

金属が擦れ合う音が聞こえた。

「この音は?」

音の原因を探していると一人の男がいた。

その男は両腕に長い金属の爪がついた手甲をつけていた。

「キーヒッヒッヒ。」

男は金切り声を出して笑いジル達に近づいてきた。

「どう見ても親切な町の人って感じじゃないよな。」

ジルは剣を抜く。

ピュッ。

一瞬にして男はジルに接近しその頬に爪で傷をつけた。

「速い!」

男はすぐまた離れた。

「マルク、パティ、危ないから下がってろ。」

「ちょっと待って。私、お菓子少し持ってたんだ。

ジル、けっこう疲れてるでしょ。あげる。」

ジルはパティからお菓子をもらって口に入れる。

モグモグ。

「うん、うまい。サンキュー、パティ。」

そしてパティとマルクは少し下がった。

「おい、切り裂き魔!俺は今かなりむしゃくしゃしてんだ。

悪いけど容赦しねぇぜ。死んでも恨むなよ。」

ジルは剣を構えた。

ジャキジャキ。

切り裂き魔は両手の爪を擦り合わせている。

 

 

 

ミッフェンにてジルは切り裂き魔と対峙していた。

「こいよ。」

ジルが攻撃を誘う。

「キーヒッヒ。」

ピュッ。ピュッ。

ジルは切り裂き魔の速さにほとんど身動き出来ないまま

体を傷つけられていく。

「ジルっ!」

マルクとパティが思わず名前を叫ぶ。

「大丈夫だ、傷は浅い。(爪の切れ味はなかなかだな。

それよりもこのスピードにはとてもついていけそうにない。

致命傷を避けることでやっとだ。さてどうするか...)。」

ピュッ。ピュッ。ピュッ。ピュッ。

切り裂き魔の攻撃は激しさを増してくる。

「グッ。」

ジルにダメージが蓄積されていく。

「私が回復魔法を。」

マルクがジルに近づこうとする。

「はぁはぁ、待てよ。すぐに倒してやるからさ。

回復はその後に頼むよ。」

ジルはマルクを止める。

「でも。」

「こいよ、切り裂き魔。決着をつけようぜ。」

「キーヒッヒ。」

ピュッ。ピュッ。グサッ。

ジルは切り裂き魔の攻撃を受けたが、同時に

切り裂き魔の腹に剣を突き刺し致命傷を負わせた。

「よしっ。肉を切らせて骨を断つってね。」

ジルは手ごたえを感じ、気持ちが高ぶった。

「やったー。」

離れて見ていたパティが喜んだ。

 

 

 

ついに切り裂き魔に剣を刺したジルは剣を引き抜く。

「ぐ、ぐぐうぅ。」

切り裂き魔は腹をおさえて苦しむ。

「ジル、早く回復を。」

マルクがジルに駆け寄る。

「『ホワイトウィンド』。」

ジルの傷が癒えていく。

「ありがとう、マルク。もうどこも

痛くないよ。服がぼろぼろになっちゃったけど

まぁいいか。助かったよ。」

ジルがマルクに礼を言う。

「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

切り裂き魔は突然屈んだかと思うと、口から

煙の塊のようなものを吐き出した。

そして次の瞬間、切り裂き魔は全身が灰となり

跡形もなく消え去った。残ったのは切り裂き魔

が装備していた爪だけであった。

「えっ、どうしてあいつ消えちゃったの?」

パティはただただ驚いていた。

マルクが落ちていた爪を拾ってじっとみる。

「これのせいかもしれませんね。かすかに魔力を

感じます。使用者に何か影響を与えていたの

ではないかと思います。良くも悪くも。」

「確かにそう考えると今までのことも理解できるな。

あいつの動き、速かったけど直線的でなんかこう

力をうまく使えずに振り回されてるって感じがしたから。」

「じゃあ、その爪が切り裂き魔に力を与える代わりに

生命力を吸収してたってことなの?」

「正確には爪を通して生命力を力に変えていたというのが

正しいと思います。まぁ確証はもてませんが。」

「とりあえず俺が預かっておくよ。(もしかしたら高く売れるかも)。」

「ジル、言っておきますけどこれは呪われたアイテムかも

しれないから安全だと分かるまで売ることは出来ませんよ。」

マルクはジルの心を見透かすかのように忠告する。

「わ、分かってるよ。こんな危ないもの売るわけ無いだろう。

ハハハ...。」

ジルは笑って誤魔化した。


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