dark legend   作:mathto

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「ところで私に何の用で来たのですか?」

ヒヨルド博士がジル達に聞いた。

「いやぁ、町の人がここに来たらおもしろい

ことがあるかもしれないって言ってたもんで。」

「なるほど、ということは私の発明品を見に

来たということですね。まぁとりあえず中へどうぞ。」

ジル達はヒヨルド博士に居間へと案内され

勧められるがままに椅子へと座った。

「何が出てくるのか楽しみだね。」

パティはうきうきした気分で言った。

ジルとマルクも楽しみに待っていた。

「はい、ではまずこちらの箱。

これを開けると...。」

びょ~ん。

「中から人形が飛び出たね。あ~びっくりした。」

ヒヨルド博士は自分で場を盛り上げようとした。

「(げ。つまらない。)」

3人はがっかりしてテンションが一気に落ちてしまった。

「あの、そろそろ失礼しようかと思うんですが...。」

「え、もう帰るのですか?残念ですね。まだ他にも

親指人形や伸び縮みする付け鼻とか見せたかったのですが。」

「(どれもつまらなそう。)それはまた今度来たときに

見せてよ。(2度と来ないと思うけど。)」

「それではまた来てくださいね。...あれそれは?」

ヒヨルド博士はジルの持っていた爪を指差す。

「これがどうかした?」

「おお、間違いない。私が作ったものですよ。」

「ええー!」

さっきの発明品にがっかりしていた3人は驚いた。

 

 

 

ヒヨルド博士はジルが持っていた切り裂き魔の爪を

自分が作ったと言った。

「うそだろ。あんなしょうもないものを作って、

いや全然違う系統のものを作っててこんなの

作れる訳無いだろ。」

「いえ、本当です。それは今開発中のアブソーブシリーズ

、試作品1号『俊足の爪』ですよ。」

「『俊足の爪』、まさか!?アブソーブシリーズって

いうのは?」

マルクは名前にピンときて顔色が変わった。

「アブソーブシリーズというのはですね、使用者の

生命エネルギーを吸収して魔力に変換。それを

利用して様々な効果を起こすというものなのです。

そして『俊足の爪』の効果は出すね...。」

「使用者の足の速さを何倍にもするってか。」

「あ、そうですそうです。もしかして使ったんですか?」

「使ったんですかじゃねえよ。俺達がこいつのせいで

どんな目にあったと思ってるんだ、このバカ博士が。」

 

ジルは怒りながら切り裂き魔のことをヒヨルド博士に話した。

 

「そうでしたか。いやー、実はアブソーブシリーズは

以前、強盗に盗られましてねぇ~。それと『俊足の爪』は

最初に作ったもので生命エネルギーの吸収力が大きすぎて

使用者の負担がとても大きいのですよ。その分効果も大きく

なるのですが、本来の能力を大きく超えてしまうと気分がよく

なって麻薬的な効果が働いてしまうのです。つまり外したく

なくなりどんどん生命力が落ちていくのですよ。まあこれで

生命力が尽きたら普通の死に方はしないでしょうね。」

ヒヨルド博士はジル達や町の人たちが苦しんだことを聞いても

全く反省する様子はなく自慢げに『俊足の爪』の説明をした。

このヒヨルド博士の態度にジルの怒りは頂点に達しようとしていた。


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