dark legend   作:mathto

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「あー、よーく分かったよ、こいつの説明はな。ついでに

神様への懺悔もしたらいいんじゃねえか。俺が天罰を喰らわす前にな。」

ジルが右手に思い切り力を込めヒヨルド博士を殴ろうとしたが

マルクとパティが必死になってなんとか取り押さえた。

「ジル、気持ちは分かりますが落ち着いてください。」

「放してくれ。俺はこいつをぼこぼこにしないと気がすまねぇんだ。

このマッドサイエンティストをな。」

「ダメだよ、ジル。この人が直接町で暴れたわけじゃないんだよ。」

「それに誰かが包丁で人を刺したとして包丁を作った人を

責めますか?」

「そう言われるとそうだが。」

ジルはマルクとパティの説得でようやく平静を取り戻した。

「ヒヨルド博士。」

マルクが厳しい表情でヒヨルド博士を呼んだ。

「何ですか?」

「さっきアブソーブシリーズとか試作品1号とかいいましたが

他にも同じようなものがあるんですか?」

「もちろん。『俊足の爪』の他にあと3っつの試作品があります。

それらはもう少し完成度が高いので麻薬性は抑えられていますよ。

全て強盗に盗られてしまいましたがね、はははは。」

笑いながら喋るヒヨルド博士にジルの怒りが甦る。

「こいつ絶対殺す。」

「まあまあ、今は残る3っつのアブソーブシリーズを強盗から

取り戻すことが先決です。第2の切り裂き魔が現れないとも

限らないわけですからね。」

「え、取り戻してくれるのですか。それならいいものを

あげましょう。」

そう言ってマルクに渡されたのはワラの盾だった。

「何だよこれ。パンチも防げないだろ。」

「きっと役に立ちますから。あと強盗たちのアジトは西の森に

あるらしいですよ。」

「信じましょうよ。」

「そうだよ。文句ばっか言ってたっていいことないよ。」

「なんか俺だけ子供みたいじゃないか。えーい。

こうなりゃやけだ。強盗全部倒してやるよ。」

ジル達は博士の家を出て西の森へと向かった。

 

 

 

「たぶんこのあたりだと思うんだけど。」

西の森へと入ったジル達。

ビュッ!

「いってぇぇ。」

ジルの左腕に矢が突き刺さった。

「どこだ!」

ジルは刺さった矢を抜きながら敵を探す。

「あ、あそこじゃない?」

パティがそう言って指差した先は遠く離れた

大きな木の上にかすかに見える人の姿だった。

「そんな、あんなに離れた場所から正確に当てるなんて。」

マルクは驚く。

「まぐれに決まってる。2度は喰らわないさ。」

遠くにいる人ところが一瞬光る。

「2本目か。ここを狙ったとしても遠く離れてる分

余裕で避けれるぞ。」

3人は今いる場所から後ろへと下がった。

そして放たれた矢は3人が今さっきいた場所に向かって飛んできた。

「よし、大丈夫だ。」

3人は矢をかわしたと安心したが、突然矢がジル達に向きを変え

襲ってきた。

「な、ばかな。」

ジルは思わず剣を抜き矢を切り払った。

「これは間違いなくアブソーブシリーズですね。

『追撃の弓矢』というところでしょうか。」

「どうすんだよ。絶対に避けられないぜ。」

その間にも矢はこちらに向かって再び放たれる。

「そうですね。はっ、そうだ。これを使ってみては。」

そう言ってマルクはヒヨルド博士にもらったワラの盾をジルに渡した。

「これでどうしようって。あっ。」

矢がワラに突き刺さる。

「そうか。これで防げるってことか。よぉし反撃開始だ。」


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