「はあはあ、あ、兄貴。やられました。」
ジル達から逃げてきた男がやってきた洞窟の中には
2人の男がいた。一人はがっしりとした肉体で無精髭を
生やした男が腕を組んで椅子に座っていた。もう一人は
さらに大きな体をした丸坊主の男で軽くトレーニングをしていた。
「ポラ、どんな奴だ?」
座っていた男が落ち着いて口調で尋ねる。
「小僧2人と子供が1人なんですが...。」
「ひよっこにやられて武器も奪われ逃げてきたと。」
「いや、その...。」
逃げてきた男ポラはなんとも歯切れの悪い返事しか出来なかった。
ドゴッ!
トレーニングをしていた男が突然ポラの顔面を殴った。
ポラの首から上は吹っ飛んでしまい即死だった。
「ぐへへ、このナックルは最高だぜ。硬い岩でも粉々
にするのは簡単だ。俺らノブル兄弟に敵はないぞ、兄者。」
「おい、必要ないときははずしとけ。つけてる間は生命力を吸われ
続けるんだ。ほっとくとあいつみたいにおかしくなっちまうぞ。」
「ああ、爪をつけたらすぐに理性がなくなって
昼間は苦しみ続け夜は獣のように暴れてたあいつか。」
「しかしこの武器の力はよく分かった。こいつがあれば
もうこそこそとケチな強盗をせずとも町一つくらいなら支配できる。」
ジル達はポラの後を追いノブル兄弟のいる洞窟に到着した。
「こんなところに洞窟が。きっとここが奴らのアジトだろうな。」
3人は恐る恐る奥へと入っていく。
「きゃあああ。」
横たわるポラの遺体を見たパティが叫び声を上げる。
「こいつはさっきの...。」
ジルは目の前にいるノブル兄弟を見る。
「お前らの仲間じゃなかったのか?」
「仲間?俺達に役立たずの仲間はいねえよ。なぁ、兄者。」
「ははは、全くだ。それにしてもこんなガキ達にやられたとはな。
情けない奴だ。」
「この野郎。今の言葉後悔させてやるぜ。」
ジルは剣を抜いた。
「俺が一人で3人まとめて相手してやるぜ。」
坊主頭のノブル弟が一歩前へ出た。
「この2人は応援だ。俺一人で十分。」
「すぐにその減らず口を叩きのめしてやるぜ。」
ノブル弟はナックルを手につけ威嚇するように
近くにあった大岩を簡単に砕いた。
「どうだ、びびったか?」
「全然、どうってことないさ。(げ、どうしよう。
あんなのくらったら即死じゃねえか。)」
「『破壊の拳』というところですね。ただ攻撃力が
上がるという分かりやすい効果です。」
「ジル、頑張れー。」
後ろで2人は楽観的に見守っていた。
「頑張れって言われてもな。」
「どうした、怖気づいたか?ならこっちから行くぞ。」
ノブル弟はジルに勢いよく殴りかかってきた。
「ワッ。」
ジルが間一髪のところでかわすとノブル弟の拳は壁をえぐっていた。
「よくかわしたな。」
「(こいつ体の割になかなか素早いな。)」
そしてノブル弟の攻撃は止まらずジルは攻撃をかわすだけで
なかなか反撃に移れなかった。
「逃げてばかりじゃ勝てないぞ。」
「分かってるさ。ちょうどお前を倒す方法が思いついたとこさ。」
「面白い。出来るものならやってもらおうか。」
しかし状況は一向に変わらなかった。むしろ悪くなっていて、
ノブル弟の攻撃がもう少しで当たるというギリギリのところにいた。
洞窟にはドンドンと大きな穴が開いていく。
「ねぇ、大丈夫かな。一方的な感じがするけど。」
「そう私もそう思うんですがジルの顔には余裕の表情が浮かんでるんですよ。」
「ははは、疲れてきたのか。動きが鈍くなってるぞ。
そろそろ止めを刺してやろう。」
ノブル弟は右手の拳に力を込めて全力でジルに殴りかかった。
ドゴオォォォォ!
洞窟全体に響き渡るような大きな衝撃音で、その震源には砂煙が
舞って回りからは見えなくなっていた。