dark legend   作:mathto

51 / 279
101,102

「うわぁぁぁ。」

ジルは強風で押し戻され、さらにかまいたちでダメージを受けた。

「痛っー。」

マルク、パティも同時に体を傷つけられる。

「パティ、大丈夫ですか?」

「うん、まだなんとか。」

「今は私の後ろにいたほうがいいですよ。」

「ありがとう、マルク。」

パティはマルクの言うとおりに後ろに隠れた。

「(強風で近づけないようにし、さらに攻撃も出来るか。

横か後ろに回ることが出来れば...。はっ。)」

「その顔は気づいたようだな。地形を利用するという意味を。」

「この洞窟の横幅は狭く奥にお前がいる。つまり横、後ろからの

攻撃がしかけられず正面から攻めるしかない。しかし、斧が起こす

風の攻撃は正面にいるものを寄せつけずに確実にダメージを与えていく。

完全な攻撃。」

「分かったか。そして逃げるしかないということを。」

「そいつはどうかな。」

ジルは先ほど取り戻した『追撃の弓矢』を取り出した。

「まさか。」

「そう。これなら接近せずに攻撃できる。」

ジルはノブル兄に向けて矢を放ち肩に命中した。

「やったか。」

しかし、ノブル兄はダメージをほとんど受けずに再び攻撃をしてきた。

「くっ、失敗か。」

「お前も攻撃を受けたなら知っているだろう。そいつの攻撃力の低さを。

その矢で俺を倒すことはできん。他を考えるんだな。」

ジルはチラチラとマルクの方を見る。そのことにマルクが気づく。

「は、そうだ。私の魔法で防げるかも。ジル、こっちへ。」

「よし。」

ジルはマルクの元へ駆け寄る。

その間にもノブル兄の攻撃は続けられる。

「いきます。ウインドガード。」

マルクが魔法で作り出した風の壁が『風切りの斧』が起こした

強風だけでなくかまいたちも受け流した。

「やった。成功だ。」

ジル達3人は喜びの笑みを浮かべた。

 

 

 

攻撃を防がれたノブル兄はさっきまでの余裕の表情は

すっかり消えていた。

「まだだ。まだ勝負はついてはいない。」

ノブル兄は斧を限界まで力いっぱいに握り締めた。

「くらえ、俺の全力を。」

「ウ、ウインドガード。」

マルクは慌てて魔法を唱えた。斧が起こす強風は

さきほどまでとは明らかに強くなり暴風といっていいくらい

だった。その暴風はマルクの風の壁を簡単に吹き飛ばした。

「な...。」

後からくるかまいたちも大きくなりジルとマルクを深く

傷つけた。パティはマルクの後ろにいたおかげで2人のような

重症からは免れることが出来た。

「ぐっ。」

ジルとマルクはあまりのダメージに立っていられず膝を地面に

ついてしゃがみこむ。

「ジル、マルク!」

パティが心配して叫ぶ。

「はぁ、はぁ、はぁ。」

ノブル兄も斧に狂ってしまう一歩手前まで生命力をつぎ込んだ

せいで斧を持つのがやっとというほど疲れきっていた。

「み、見ろよ。あいつももう力はほとんど残っちゃいないようだぜ。

マルク、休んでてくれよ。今、あいつと決着をつけてくるから。」

ジルはボロボロの体をおして立ち上がり剣を構えた。マルクは

座り込んでもう回復の魔法を唱える力が残っていなかった。

ジルはノブル兄に斬りかかった。ジルのスピードは元気な状態のとき

に比べずっと遅かった。それはノブル兄も同じだった。

2人は一歩も引かず一方が斬りかかっては受けるまたは避けるという

繰り返しだった。そしてまた剣と斧が重なり金属音が響いたとき、

ドスッ。

「そ、それは、弟が付けていたナックル。いつの間に。」

ジルは左手に『破壊の拳』をつけ右手の剣で斧を防ぎながらノブル兄

のわき腹を殴ったのだった。ノブル兄は攻撃を受けるとすぐにその場に

倒れた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。