dark legend   作:mathto

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「さっそく俺だけのナイフとやらを見てみようか。」

「ドキドキするね。」

「楽しみですね。」

マルクとパティが興味津々で見つめる中、ジルは鞘から

ミラージュナイフを抜いた。

「おおっ。...げっ。」

「わあ、とんがった黒いナイフだ。」

「これはジルが腹黒いって...」

ドスッ。

「いったー。」

ジルはマルクの腹を一発ひじで強く押してマルクの言葉を止めた。

「きっとこいつは欠陥品なんだよ。まあヒヨルド博士が

作ったものだからな。しょうがないさ。」

「うそー。じゃあ私に貸してみてよ。」

「はいはい。」

ジルはパティにナイフを渡した。するとたちまち色はピンクに

形はグニャグニャとして不規則なものに変わっていった。

「女の子だからピンク、そして召喚士で未知なエネルギーを扱う

から不規則な形になったんですね。」

「すごーい。私にぴったりってこと?」

「いや、これはただのまぐれだ。マルクも持ってみろよ。」

そう言ってパティからナイフを取りマルクに渡した。

すると今度は色は薄い青、形は丸みを帯びたものへと変化した。

「マルクは風の魔法を使うから薄い青、優しいから丸みがあるんだね。」

今度はパティが解説する。

「いやー、なんだか照れますね。」

「何でだ。何で俺だけ嫌な色なんだよ。えーい、こんなもの売ってやる。」

そう言ってジルは武器屋へ走った。マルクとパティも仕方なくついていく。

「おっちゃん、これ売りたいんだけど。」

ミラージュナイフを武器屋の店主に差し出す。

「どれどれ。えーと...。」

店主はまじまじと鞘に入ったミラージュナイフを見た。

そして鞘からナイフを抜いてみる。そこに表れたのはごく普通の鋼のナイフだった。

「うーん。ただのナイフみたいだが一応『魔法の虫眼鏡』で見てみようか。」

店主は奇妙な柄の縁をした虫眼鏡を取り出して覗いた。

「それほど強くはないけど魔力が宿ってるね。呪いとかはないようだ。

どうも効果がよく分からないね。有名な武器とかじゃないみたいだし

こういう得体の知れないものはうちではちょっと引き取れないね。」

「がーん。」

ジルはショックを受け武器屋を出た。

 

 

 

「どうしようか、このナイフ。」

ジルはミラージュナイフを手に取り悩んでいた。

「別に呪われてる訳じゃないんだし持ってたらいいじゃん。」

「そうですよ。せっかくもらったものを大事にしないと。」

「じゃ、これマルクにやるよ。」

「え、そんな、困りますよ。」

「持っとけって。きっと何かの役に立つから。ほら護身用とか、

嫌いな奴を後ろからプスッと刺したりとか。」

「しませんよ。でもそんなにジルが嫌なら持っておきますよ。」

ジルは快くマルクにミラージュナイフを手渡した。

「ねえ、2人とも。ナイフはいいけどその服どうにかした方が

いいよ。ボロボロだよ。」

「そういえばすっかり忘れてたな。とりあえず服を買いに行こうか。」

「あっ!」

「どうしたマルク?急に大きな声を出したりして。」

「大変です。お金がとうとう底を尽きました。」

マルクはお金の入っていた袋が今は空っぽになっていることを2人に

よく見せた。

「なんてこった。これじゃ俺達毎日、食べれる野草を探して夜は

野宿の野性的な生活を送らないといけないじゃないか。」

「そんなの絶対いや。この町に仕事の斡旋屋さんがあるはずだからすぐに探そうよ。」

パティは2人の服を引っ張って急かす。

「そうですね。野宿じゃパティがかわいそうです。」

「んじゃ、探しますか。」

3人は町の中を歩いて探した。

大きな看板と壁にたくさんの張り紙が貼っていて、店は目立ちやすく

すぐに見つかった。

「ここか。『地域密着型求人案内所パーラム』、『世界で100店舗以上展開中』

『親切、丁寧をモットーに』、『誰でも今すぐ仕事が見つかります』と。」

「信頼できるような、うそ臭いような微妙な感じがするね。」

「確かに。でも入ってみないと分かりませんからね。」

3人はとりあえず中へ入ってみた。

「いらっしゃいませー。」

若い女性が元気な声で出迎えた。店の中もとても明るい感じだった。

店内の壁には何枚もの求人票が張ってあり、仕事の応募や相談等をする窓口が

2つほどあり店員が笑顔で座っていた。

「ここは初めてですか?」

「ええ。(どっかで聞いたことがあるようなセリフのような気が)」

「それでは簡単に利用の仕方を説明させてもらいますね。仕事を依頼したい場合は

こちらの求人票の方に依頼内容、報酬、条件等を書いていただきます。そして応募者が

現れたら紹介表を書いて持たせ派遣するという形になります。仕事をお探しの場合は

後ろの求人表で気に入った仕事を見つけていただきこちらに申し付けください。

条件等に合っているか確認した後、紹介状を書いてお渡しします。そこからは求人票に

明らかな虚偽がある場合以外我々は依頼者との問題が起きても関与いたしませんので

ご注意下さい。以上で説明を終わりますが、何か分からない事はありませんか?」

「何を言ってるかさっぱりだ。もう一回最初から説明してくれる?」

ジルは頭がいっぱいいっぱいだった。

「え。」

笑顔の店員が困った顔になる。

「いいです、いいです。私から説明しときますからありがとうございました。」

マルクは困った店員に気づかった。


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