dark legend   作:mathto

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家の中では年老いた男が整った服装で出迎えた。

「どうぞ、中へお入りください。」

3人は言われるままに中へと足を踏み入れる。

「うわぁっ。すごい豪華だ。」

家の外からは想像できないほどの豪華な家具や内装

が目に飛び込んできた。

「それでは旦那様をお呼びしますのでこちらで少し

お待ちくださいませ。」

そう言うと男は奥の部屋へと入っていった。

「やっぱ金持ちは違うよな。」

「見てください。このライオンの置物。金で出来てますよ。」

「すっごいね。」

3人は高価な物を目の前にはしゃいでいた。

ガチャッ。

先ほどとは別の男が現れた。中年で髭を生やし地味ではあるが

高そうな服を着ていた。

「何だ、若造じゃないか。こんなんで大事な宝石を守れるのか。」

ジルは少しムッとしたが高額な報酬のためと我慢した。

「私達、若いですがこれまでいくつかの戦闘も経験しているんですよ。」

マルクは弁解するように男に言った。

「そのようだな。その血のついたボロボロの服を見れば苦難を経験している

ことは分かる。まぁこの町は冒険者が訪ねることが少ないし、どうみても

警備を装って盗もうとしたりはしそうにはないから君達に頼むとするか。」

「やったー!」

「ただし、ボロボロの服を着た2人。新しい服に着替えてきてくれよ。

そんな格好でこの家を出入りされるのは恥ずかしいのでな。」

「すいません...。」

「それじゃ執事をつれて服屋へ行きなさい。服代くらいはサービスで

出してあげよう。」

「え、いいんですか。ありがとうございます。」

3人は執事と呼ばれた先ほどの年老いた男に連れられ服屋にやってきた。

「あちらの椅子に座って待ってますので決まりましたらまたお呼びください。」

「はい。」

ジルとマルクはさっそく服選びにかかった。

「あのじいさんが待ちくたびれないようにぱっぱと選んじまおうな。」

「そうですね。あんまり待たせると悪いですもんね。」

「ところでパティも服見るのか?別にきれいだからいいんじゃないの?」

「もう、女の子なんだから服ぐらい見てもいいでしょ。」

「分かったよ。じゃあ気に入ったのがあったら財布持ってるマルクに言うんだぞ。」

「え、買ってもいいの?」

「なぁ、それぐらいはいいよな。」

「ええ、もちろん構いませんよ。」

「やったー。」

パティは飛んで喜んだ。

そして3人は思い思いに服を探し始めた。

 

 

 

「おーい、みんな決まったか?」

「は~い!」

「はい、決まりました。」

ばらばらに服を見ていた3人が集まった。

「それじゃ1人ずつ発表していこうか。まずはマルクから。」

「え、恥ずかしいですね。私は基本的に今の服と同じようなもの

をと思って探したんですけどどうでしょうか。」

マルクが選んだ服を2人に見せる。白いローブ風でシンプルながら

おしゃれな模様が入っていた。

「あっ、すごいいい。」

「マルク、結構センスいいんだな。」

「いえいえ、そんなことは...。それより次パティいきましょう。」

「わ、私。なんか緊張しちゃうね。私のはこれ。一応召喚士だし

そういう感じもしなくちゃって思ってこれにしたんだけど。」

薄い緑色で生地が幾重にも重なったスカート付の服だった。

「いいじゃん。女の子らしさがよく出ててさ。」

「パティにぴったりですよ。」

「ありがとう。最後はジルだね。」

「よーし、あまりのかっこよさにビックリするなよ。俺のはこれだ。」

ジルが自身満々で選んだ服を見せる。

「変。」

「変ですね。」

「な、何言ってるんだお前ら。かっこいいセンスというものが分からないのか。」

「っていうかなんで破れたズボンとか選ぶの?服がボロボロだったから新しいの

買うんでしょ。意味無いじゃん。」

「これがおしゃれってやつだろ。わざと破っているんだぞ、自然に破れたものとは

わけが違うんだからな。」

「同じだと思いますが。それよりその上の服は何ですか。ただの汚い布切れじゃないですか。」

「これはズボンといっしょにワイルドさが必要だと思ってだな。」

「いりません。特に今回は清潔感を出した方がいいですよ。」

「む、それだったらマルクが選んでくれよ。」

「私がですか。それはちょっと。」

「いいじゃん。やってみたら。」

パティも後押しする。

「分かりました。やってみましょう。」

マルクは覚悟を決めてジルの服を選び出した。

「え~と、これと、これで。」

服を選び終えジルとパティの元へ戻った。

「あまり自信がないですが選びました。これです。」

マルクは選んだ服とズボンを取り出した。

「な、これは。動きやすいカジュアルな服装でありながら剣士に合う

気高いかっこよさも兼ね備えている。」

ジルは驚きながら感動の涙を流している。

「それで決まりだね。マルクってセンスいいね。」

「いえいえ、そんなこと無いですよ。」

マルクは後頭部を少しかきながら照れた。


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