dark legend   作:mathto

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ジルとマルクの前に突然現れたドラゴン。

しかし、そのドラゴンは2人を襲う様子がなかった。

「う~ん、どうしたんでしょう?」

「もしかしたら俺達なんて気にしてないってことか?

ちょっと近くまで行って様子を見てみようか?」

「え~、危ないですよ。止めておきましょうよ。」

「ちょっとだけだよ、いいだろ?」

「うーん、分かりました。ちょっとだけですよ。」

二人は恐る恐る近づいていった。それでもドラゴンは

全く反応せず二人はすぐそばまで来てしまった。

「どうもこれは疲れきってるという感じですね。

しばらくは動けないでしょう。そうとう

辛そうな顔をしてますから。」

「なぁんだ、じゃあ俺達がやられる心配は無いじゃん。

逆にこいつを倒せるんじゃねぇ?」

「ダメですよ。無抵抗の生き物に攻撃するなんて。

助けてあげましょうよ。」

「マルクはお人よしだな、別にいいけど。じゃあ俺は

近くの湖で水を汲んでくるよ。」

「お願いします。私は回復魔法をかけてみます。」

 

2人の世話のおかげでドラゴンの様態は少しよくなった。

 

 

「ははは、遂に見つけたぞ。ドラゴンめ。」

目の鋭い、槍を持った男が現れドラゴンの前までやってきた。

そして2人を見て、

「なんだお前ら、まぁいい。こいつは

俺様の獲物だからな。手を出すんじゃねえぞ。」

「何を言ってるんですか?このドラゴンは弱っているんですよ。

そんなとこを襲うなんて卑怯じゃないですか!」

「へん、そんなことは関係ねえんだよ。ドラゴンを倒したって

事実だけあればそれでいいのさ。ドラゴンを倒したっていやぁ

どこでも英雄扱いだぜ。それともお前らは俺様の邪魔をするって

言うのか?それならお前らごといっしょにやってやるぜ。」

そういうと持っていた槍をマルクたちに向けて素早く何度も突く

しぐさを見せた。2人ともそのスピードに目がついていけなかった。

「(こいつ、強い、、)」

「さあ、どうするんだ?」

「うぅぅ、、、」

じりじりと後ろに追いやられていく2人。

ガチャ、ガチャ。

金属の鳴る音とともに現れたのは全身を真紅の鎧兜で覆われた戦士だった。

「悪いが、このドラゴンには手を出さないでもらおうか。」

「貴様、何者だ!」

「俺は竜騎士ゼムル。このドラゴンは一緒に竜の谷で育った

俺の仲間なんでな。悪いが他のドラゴンを探してくれ。」

「竜の谷の竜騎士..聞いたことがある。

ドラゴン並みの力を秘めた地上最強の戦士

という伝説がある。だが、伝説は伝説。

現実を誇張していることはよくある。貴様が強いという保証はない。」

「ほう、なら試してみるか?」

「望むところだ!」

ゼムルも手にもっていた槍を構え男に対峙した。

 

「ねえ、ジル。私達ってなんか存在感無くなってませんか?」

「しょうがないんじゃないの、この状況じゃ。

しばらく様子を見とこうぜ。」

 

「倒す前にお前の名前を聞いておこうか。」

「ああ、聞かせてやるぜ。俺様はなあ、ドラゴンハンターの

デロスだ。まあもっとも貴様はここで死ぬから名前を聞いても

意味はないがな。」

「お前のほうこそ口だけじゃないのか。ドラゴンハンターなんて

言ってるがどうせまだドラゴンと戦ったことなんてないのだろう。」

「くそ、いいやがって。行くぞっ!」

 

 

 

ゼムルとデロスの戦いが始まった。

デロスがゼムルに向かっていき槍を何度も突き出した。

「やっぱすげえな。」

少し離れたところからジルは感心して見ていた。

だが、ゼムルは攻撃を軽やかにかわしていく。

デロスの槍はゼムルにかすりさえしなかった。

「なかなかいい槍を使っているな。三叉の槍、トライデントか。

しかし使用者の力量がこの程度ではな。」

「なんだとお、これが俺の本気だとでも思ってるのか。

なら見せてやる。俺の必殺技『スプラッシュハリケーン』!」

デロスは槍をクルクルと回転させ竜巻を発生させた。

「はははっ、この真空波に飲み込まれれば貴様の体

はぼろ雑巾のように切り刻まれるのだ。」

ゼムルは向かってくる竜巻に対してまったく逃げようとは

しなかった。そして口元に軽く笑みを浮かべ竜巻がゼムルを

包み込もうとした瞬間、

「はっ!!」

ゼムルは気合で竜巻をかき消した。

「そ、そんなばかな。」

デロスはもはや戦意をほとんど失っていた。

「次はこちらの番だな。」

ブシュッ!

一瞬だった。

ゼムルの槍はデロスの腹を突き刺し、

それを引き抜くとバタリとデロスは倒れてしまった。

「さてと、」

ゼムルはジルたちのほうを向き尋ねた。

「君達はここで何をしてたんだ?」

「いや、その、、、」

激しいバトルを見たあとで2人は気後れしていた。

「グオグオーン。」

ドラゴンがゼムルに話し掛けた。

「なるほど。君達はこいつを助けてくれたんだね。

ありがとう。いつか君達が助けを求めてきたときには

喜んで協力するよ。それじゃ帰るよ。」

「え、でもこのドラゴンはまだ完全には回復してないですよ。」

「ああそうだったな。だが大丈夫だ。エリクサ-を持ってきた。

これを飲ませれば体力は全快するはずだ。」

ゴクゴク。

エリクサ-を飲んだドラゴンはみるみる元気になった。

ゼムルはドラゴンに乗り大空へ飛び去っていった。

 

「俺達ってさあ、なんかちっぽけな存在に感じちゃったな。」

「同感です。でも私達はこれから頑張ればいいんですよ。」

「だな。さあ前にある道を進もうぜ。」

2人はまた前へ前へと歩き出した。

 


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