dark legend   作:mathto

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「どうしてこんなことになったんでしょうか?

いっしょに魔法を学んでいた頃はもっとやさしい人だったのに。」

マルクは兄弟子が襲ってきたことに悩んでいた。

「しょうがないさ。月日が人を変える事もあるってことさ。」

「いいえ、きちんと話をすればきっと分かってくれるはずです。」

「話をするって何言うんだ?お前を憎んでいる理由は大体分かってるんだろ?」

「そうですね。まずはメンデル先生に会いにいって詳しい話を聞くことが

必要かと思います。」

「会いに行くのはいいけどその先生が今どこにいるかって分かってるのか?」

「サンアルテリア王国。そこにいるはずです。」

「サンアルテリア王国?どっかで聞いたことがあるような...。」

「サンアルテリア王国と言えば文化、芸術、経済の世界の中心ですよ。魔王が世界を征服

しようとした300年前よりも古くに建国。今では王族は政治には関わらず民主国家となって

いますが国民から親しまれ王国のままになっています。そしてこの国の中に魔道連盟という

魔法使いの組織があり、私の先生は最高の位である五大司祭の1人なんです。」

「なんか凄いな。とにかくそこに行ってマルクの先生に会えば解決するかもしれない

ってことだな。」

「ええ、そうですね。」

2人はさっそくサンアルテリア王国行きの船を探す。

しかしいくら探しても見つからないので道行く人に聞いてみた。

「サンアルテリア王国は内陸にあるから近くの港町サンマリーノを通っていくことに

なるよ。」

「ありがとうございます。」

2人はサンマリーノ行きの船を改めて捜した。

「あったあった。」

船賃を払って船に乗り込む。

「よっと。」

2人が乗ってしばらくすると船は動き出した。

「世界の中心ってのは伊達じゃないな。見ろよ、乗ってる人の数。

ほとんど満員だぜ。」

2人は甲板にいた。

「...。」

「マルク、どうした?」

「え、あ、いや。ちょっと昔のことを思い出していたもので。」

「昔のことって、メンデル先生とかあのワーグバーグのことか?」

「ええ、みんなが一緒だった頃は本当に楽しかったですよ。あ、いや別に

今が楽しくないわけじゃないですよ。」

「分かってるって。」

「私は今のようには魔法を使うことがなかなか出来なかったですが、誰もそれを

責めたりせず励ましてくれました。特にワーグバーグさんはどうしてうまく

出来ないのかをいっしょになって考えてくれたんですよ。」

「いい人だったんだな。まあきっといつか仲直り出来るさ。」

「はい、私もそう信じてます。」

船はそんな2人を気にすることなく進んでいった。

 

 

 

「ここからだと到着まであと数日はかかるでしょうから

部屋で少し休みませんか?」

「結構遠いんだな。よし休もう。」

そう言って2人が部屋へ向かおうとしたとき、

「おい、あれは何だ?」

「何だよ。ただの船だろ。」

「こっちに向かってくるぞ。」

「ちょっと待て。あれは海賊船じゃないのか?」

「あのドクロマーク。間違いない海賊だっ!」

「うわぁぁぁぁ!」

甲板上にいる人たちが騒ぎ出した。

海賊船はジル達の乗る船に一気に近づく。

ドカッ!

ぶつける形で隣接すると頭に布を巻き曲刀を手にした海賊達が

次々にロープを引っ掛け乗り込んできた。

「ひゃっほう。いるいる。」

「さすが、サンアルテリア王国方面への船だぜ。」

海賊達は楽しそうに乗客を眺める。

「さーて、橋を渡してと。」

海賊が2つの船を結ぶ橋を架けると、鼻の下に薄く髭を生やし

ボロボロの服や帽子で着飾った初老の男が杖をつきながら乗り込んできた。

「どうぞ、ハーツ船長。」

海賊の1人がその初老の男を船内にいるものを全て見渡せるところへと

案内した。

「うむ。」

ハーツ船長は杖をつき直し一呼吸を置いてみんなに大声で喋りだした。

「見てのとおり、俺達は海賊だっ!命が惜しけりゃおとなしくしてろよ。」

ハーツ船長が合図を出すと海賊達は次々に乗客を縛り上げていく。

 

「何すんだよ!」

ガコッ。

ジルが捕まえようとしてきた海賊を殴り飛ばした。

「何だ、どうした?」

他の人たちを捕まえ終えた海賊達が集まってきた。

「お前らもこいつみたいにやられたいのか?」

ジルは海賊達を挑発する。

「この野郎!調子に乗りやがって。」

海賊達はジルに襲いかかろうとした。

「待て!」

ハーツ船長がそれを止める。

「へへ、俺達海賊に逆らうなんて見上げた根性じゃないか。

しかしな。お前が暴れるとここにいる乗客達の命の保証はないぞ。

それでもいいのか?」

「ぐ。」

ジルはマルクと共におとなしく海賊に捕まることとなった。


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