海賊を殴ったジルとその仲間であるマルクは海賊船内の牢屋に入れられていた。
「ふぁ~あ、俺達どうなるんだろうな?」
「困りましたね。」
「くそっ、あいつら汚いことしやがって。船を乗っ取るだけでなく
乗客の金品まで奪うんだもんな。おかげですっからかんだぜ。」
「お金もそうですがこの状況をなんとかしたいですよね。」
「う~ん。」
2人は悩んでいた。
「おい、お前ら。飯だぞ。」
見張りの海賊が2人の食事を運んできた。
「へぇ~、パンとミルクですね。食事を用意してくれるなんて
意外といい海賊かもしれませんね。」
「海賊にいいも悪いもあるかよ。きっとまだ俺達を何かに利用しようか
と考えてるんじゃねぇの。」
「聞こえてるぞ、お前ら。いいか、海賊にもポリシーって奴があるのさ。
俺達は毎日行き来する船の中からいくらかの利益を得れればそれでいいんだ。
強奪はするが人殺しは好んですることはないってことだ。
あ~あ、俺が見張り番じゃなけりゃ今ごろ上のどんちゃん騒ぎで
わいわいやれたのによ。ついてね~な。」
そのころ甲板では、
「酒が飲める、飲め~るっと。」
「おい誰か芸でもやれ―。」
「じゃ、俺が刀でジャグリングやりまーす。」
「おっ、いいぞ。やれやれ。」
「わっはっは。」
海賊達が酒やご馳走を囲んでおもしろおかしく騒いでいた。
「ハーツ船長、今回の収穫はなかなかでしたね。」
「ああ、大型船一隻に30万Gもの金や宝石が手に入ったんだからな。
これで当分は何もしなくても遊べるな。」
「またまた。ハーツ船長はこんなんで満足したりする人じゃないでしょ。」
「はっはっは。お前も分かってるな。そうだ、俺はもう年だがまだ夢を諦めたわけ
じゃねえ。あの大海賊キャプテンホークの隠した財宝を手に入れるまではな。」
「しかしその財宝は本当にあるんですかね?海賊仲間でも信じてる奴は3割にも
満たないっていいますよ。」
「ある。少なくとも俺は必ずあると信じている。お前らはそんな俺を信じて
ここにいるんじゃないのか?」
「そうでした。聞くまでもなかったっすね。」
ハーツ船長も話をしていた海賊も笑顔になってまた楽しく酒を飲みだした。
「ところでこの船ってどこに向かってるんでしょうね?」
マルクが呟いた。
「海賊同盟のアジトだ。そこで奪った船などの売買が行われる。」
「海賊同盟?」
ジルが横から尋ねる。
「海賊は好き勝手やってると思われがちだが、実際はそうじゃねえ。
そんなことして海賊同士が争ったりしてたら商売上がったりだ。
そこで海賊同士が出来るだけ争わないように最低限のルールを
作ったり情報交換したりするために出来たのが海賊同盟ってわけさ。」
「それで海賊達の利益と海でのある程度の秩序が保たれるという
わけですか。」
「まあそういうことだな。」
一方、甲板では。
ザッバーン。
体長5mほどの大王イカが現れた。
「ハーツ船長、大変っす。モンスターが出てきたっす。」
「分かってるわ。さっさと倒さんか。」
「へ~い。」
海賊達は自慢の曲刀を振り回して大王イカに向かったが触手によって
弾き飛ばされた。
ドーン。
「お前ら何やってる。目を狙え。そうすればモンスターはこっちに狙いを
つけづらくなるはずだ。」
「へい。」
海賊達はハーツ船長に言われるままに曲刀を大王イカの目を狙って投げつけた。
グサッ、グサッ。
うまく目に刺さり大王イカは痛みで暴れだした。
「ハーツ船長。やばいっす。モンスターが暴れて船が砕けそうっす。」
「ええい、いちいちひるむな。モンスターから遠ざかるように船を移動させろ。
向こうはこっちの位置はもう分からないんだ。攻撃範囲から逃げるまでは
船はもつはずだ。」
「へい。」
ハーツ船長の指示通り船を急いで移動させるとどうにか大王イカから遠ざかった。
「ふぅ、なんとかしのぎやしたね。」
「まったく。お前ら、情けないぞ。これくらい昔の俺なら屁でもなかったぞ。」
このハーツ船長の愚痴りながらも船は元の航路に戻り進みだした。