dark legend   作:mathto

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「は?」

突然のハーツ船長の言葉にジルとマルクは理解が出来ずにいた。

「俺達といっしょに敵を倒してくれないかということだ。もし協力してくれたら

すぐに自由にしてやる。どうだ?」

「敵というのはあなた達にとってのもので私達には関係はないのでしょう?」

ハーツ船長の話を聞いたマルクが質問した。

「まあな。だが、奴らは俺達より酷いことは確かだと思うぞ。むやみに人を殺したり

しない俺達に対して奴らは殺すことを一つの楽しみにしているからな。お前達も

奴らを倒して損はないと思うがな。」

ジルはう~んと少し考えこんだ。

「今なら海の幸食べ放題だぞ。」

ハーツ船長が悩むジルに何とか頷かせようと自分でも似合わないセリフだと思いながらも言った。

「え、何だって。う、うみのさちが、食べ放題。」

ジルの頭の中で豪華な海鮮料理を食べている姿が浮かんだ。

「やります。是非、やらせてください。」

「ジル、絶対嘘ですよ。戦いに行くのにのんびりご飯なんて食べられないですよ。」

ハーツ船長も内心ドキドキしていた。

「いや、俺は信じる。」

ジルにはマルクの言葉はほとんど耳に入らなかった。

「まあ、ジルがやりたいなら無理に止めることはしませんが...。」

「マルクには危険な目には合わせないって。なあ、おっさん。」

ハーツ船長に同意を求めた。

「ああ、マルクとやら。お前は安全なとこでゆっくり休んでくれればいい。」

「そういうわけにはいかないですよ。私が戦うことは出来ませんが何か手伝い

くらいはさせてもらいますよ。ご飯も頂いてることですし。」

マルクも渋々協力することに決めた。

「よし、決まりだな。明日出発だから気持ちの準備とか今のうちにしとけよ。

それからもう牢から出てもいいぞ。少しの間でも仲間になるんだからな。

あんまり勝手なことされても困るが明日までは出歩いても構わんぞ。」

そう言ってハーツ船長は出ていった。

「やった~!」

ジルとマルクは久々に牢から解放されて大喜びした。

見張りの海賊に牢のカギを開けてもらうと2人は船を下りて様々な海賊達や

船を見てまわった。

「ここにいるのって全員海賊だろ?へぇ~、海賊って言ってもいろいろ

いるんだな。荒々しい奴とか釣りが好きそうな奴、それに商人みたいな奴までいるぜ。」

「海賊のアジトっていうからもっと殺伐とした感じかと思いましたが、

意外と賑やかですよね。まるで一つの町ですよね。」

2人は海賊同盟のアジトが思っていたものと違っていて驚いた。

「よし、そろそろ戻るか。」

「そうですね。」

2人はある程度見回ると船に戻って休みをとった。

 

 

 

翌朝、ハーツ船長達の船はジャバー討伐に向け出航した。

ジルとマルクはハーツ船長の傍にいた。

「ところで、おっさん。敵ってどんな奴らなの?」

「実は詳しいことは分からんのだ。俺達は『ジャバー』と呼んでいるが

それも勝手にこっちがつけた名前だからな。なんせ奴らは出会った者を

皆殺しにしている。奴らを見て生きている者がほとんどいない。

情報はほとんど噂に過ぎない。ただ、その噂によれば奴らは俺達でも滅多に

手を出さない武装商船団の船十隻を沈めたという話がある。もしそれが

事実なら俺達に勝ち目は無いだろう。まあそれはさすがに誇張されている

だけだろうがな。」

「噂だけなのにどうしてそんなに存在をはっきりと確信しているんですか?」

マルクがふと疑問に思い尋ねた。

「いくつかは確実な情報があるんだ。俺達以外の仕業で一般の旅客船が

沈められたってな。」

「それは嵐とか津波など自然の仕業とは考えられないですか?」

「その船の消息を絶った場所ってのはいつも穏やかでとても自然の力で

とは考えられないのさ。となれば海賊の仕業としか考えられねえだろ。

そしてそこが俺達の縄張りで俺達は誰もやっていないとなれば容易に

想像つくだろ。まさか俺達『海賊同盟』の中で嘘をつく理由がないしな。」

「なるほど。」

マルクは納得した。

「とにかく得体が知れない分、油断は出来ないってことだ。お前らも

分かってるだろうな!」

ハーツ船長は周囲の海賊達に言い聞かせた。

「まったくとんだとばっちりだよ~。」

ハーツ船長は、はぁとため息をついてそれ以上は喋れなかった。

 

夜になるとジルとマルクの2人は与えられた個室のベッドで横になっていた。

「なあ、マルク。」

ジルがマルクの方を向いて呼んだ。

「何ですか?」

その呼びかけにマルクもジルの方を向いた。

「海賊ってなんか楽しそうだよな。」

ジルがふと言った。

「何言い出すんですか、突然。まさか海賊になろうとか言いませんよね。」

マルクは急に表情が真剣になった。

「そうじゃないけどさ。ただちょっと海賊もいいかなって思っただけさ。」

「ダメですよ。あの人たちはいい人かもしれませんが、海賊なんて悪い職業ですからね。

それにジルは立派な剣士を目指してるんでしょ。簡単に夢を変えたりするのは

よくないですよ。」

マルクは少し早口で強く言った。

「分かってるって。そんなに言わなくてもいいだろ。」

「すいません。ちょっと言い過ぎましたね。」

マルクは自分が興奮し過ぎたと反省した。

「でもさ、今回はもう決めたことだし、いいだろ?」

「そうですね。楽しく頑張りましょう。」

2人はすぐに仲直りして気持ちよく眠りについた。


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