船の舵を握るマルクにジルが話しかけていた。
「ならいいじゃねえか。マルクは精神的に成長してるってことだよ。
ただ力が強くなるよりずっと大事なことだと思うぜ。」
「そうでしょうか。」
「そうだって。」
「分かりました。少し気持ちが楽になりましたよ。」
「いいって。それにさ、俺と出会った時点でマルクのレベルは高かったぜ。
だから鍛えたりする必要とかなかったんだよ。じゃ、俺は少し休むよ。
マルクも疲れたら休めよ。」
そう言ってジルはマルクの元から離れていった。
「ありがとう、ジル。」
表情の暗かったマルクに笑顔が戻った。
「(完全には納得してないみたいだったけど、マルクも弱い人間じゃないし
大丈夫かな。)」
ジルは歩きながらマルクのことを考えていた。
次の日。
「マルク、そろそろ次の段階へ進んでみるか。」
「はいっ。」
「おっ、今日はやる気あるな。それに前より明るくなったような
感じもする。」
「えっ、そうですか。それより今日は一体何をするんですか?」
マルクは照れ笑いをした。
「今日は今いる船の位置の確認だ。」
「船の位置の確認?」
「そうだ。こいつはかなり難しいからな。お前らの目的地に着くまで
やっても自分のものに出来る可能性は低いと思っといた方がいいぞ。」
「分かりました。」
「素直でいいな。で、やり方だがな、こいつを使う。」
そう言って海賊が取り出したのは方位磁針と地図だった。
「まずこの航海地図を見るんだ。ここが俺たちのアジト。
そして今現在の位置がこの辺りだ。」
「ん?どうして今いるところが分かるんだって顔してるな。
それはな、船の速さと進んでいる時間と方向で考えるんだ。
他にももっといろんなことを考えるんだがそこまで言ったら
頭がパンクしちまうからやめとこうな。まあ俺らほど経験をつめば
感覚とかで大体わかっちまうけどな。大丈夫か?」
「ええ、なんとか。」
「まあ、硬くならずに言われたとおりにしようなんて思わずやりたいように
やってみな。」
「ありがとうございます。」
マルクは落ち着いて地図を見ながら船がどう進んでいるか考え始めた。
ジルとマルクを乗せた海賊船がサンアルテリア王国にかなり近づいた頃、
「よっ、おっ、おっ。よしっ。
やったー!ついに出来たぞぉー。」
ジルは初めて3本の曲刀を使ったジャグリングに成功した。
「限られた時間の中で出来るようになるとはやるじゃねぇか。」
「ほんとによ。まさか3本で成功するとはたいしたもんだ。」
「いや~、それほどでも。」
ジルは周りの喝采に少し照れた。
一方、マルクは
「ほえ~、すごいなお前。こんな短期間で船の操縦を
マスターするとはな。」
「ありがとうございます。自分でも少し驚いています。」
「後は経験をつんで海の状態を読めるようになりゃいい船乗りに
なれるぜ、きっと。俺が保証してもいい。おっと、もうそろそろ
着きそうだな。よしハーツ船長を呼びにいってくるか。」
マルクについていた海賊は船長室にいるハーツ船長を呼びにいった。
「ハーツ船長、そろそろ到着っす。」
「分かった。すぐ行く。」
そしてハーツ船長はジルとマルクの前に現れた。
「ジル、マルク。」
「はい。」
「何だよ。」
「お前らに渡しておくものがある。」
そう言ってハーツ船長は2人に大きめの袋と小さな箱を一つずつ渡した。
チャラチャラ。
ジルが受け取った袋を揺すると金属の擦れ合う音が聞こえた。
「これはもしかして金?」
ジルはハーツ船長に尋ねた。
「そうだ。お前たちが持っていた20,000Gだ。」
「え、ほんとにいいの?」
ジルは思わず聞き返した。
「何を言ってるんだ。もともとお前らの物だろ。」
「そうですけど...。ところでこっちの箱は何ですか?」
今度はマルクが尋ねた。
「開けてみろ。」
そう言われてマルクが箱を開けてみると中には大きな青色の宝石が入っていた。
「そいつはブルールビーという珍しい宝石らしい。よくは知らないが見る人が見れば
一生遊んで暮らせるほどの価値があるって代物らしいぞ。」
「ええぇぇぇぇ!」
2人は話を聞いて驚いた。
「ど、どうしてそんなすごい物を私達に?」
「こいつは活躍してくれたお前たちへの礼だ。」
「それにしてもこれはもらえないですよ。」
「いいんだ。俺たちはこの宝石よりももっとすごい宝を狙ってるからな。」
「ハーツ船長、それってまさか...。」
海賊の一人が喋ろうとするところをハーツ船長がとめた。
「何々、この宝石よりすごいお宝って?俺たちも手伝うぜ。」
ジルが話に入ってきた。
「いや、これは俺たちだけでやらないとダメなんだ。悪いが諦めてくれ。」
「ちぇ、まあいいや。次に会うとき、そのお宝を見せてくれよな。」
ガタッ。
船は何もない岸へとたどり着いた。
「もちろんだ。さて着いたようだな。海賊船だから港町にはいけないが、
ここから少し歩けば一つの村に着く。そこから進んでいけばサンアルテリア王国
にいけるだろう。道は分かりやすい一本道だから迷うこともないだろう。」
「ありがとうございました。」
「いろいろあったけど楽しかったぜ。」
ジルとマルクは海賊たちに礼を言って船を降りた。。