「あ~、そういうこと。2人ともゆっくりしてったらいいよ。」
男から話を聞いた妻はジルとマルクを快く迎えてくれた。
「あ、どうも。」
2人は勧められるままにイスに座り、昼ご飯をごちそうになった。
「『味はどう?』って聞くまでもないみたいだね。」
料理を作った妻はバクバクと食べているジルとマルクを見て言った。
「田舎料理だから口に合うかちょっと心配だったけどよかった。」
妻は満足そうだった。
「ぷは~。食った、食った。おばちゃん、おいしかったよ。」
「ごちそうさまでした。すごくおいしかったです。」
「ありがとう。ところでそっちの子は物騒なものを持ってるけど、
ただの旅行とかじゃないの?」
妻はジルの持つ剣を見て尋ねた。
「俺、一人前の剣士目指してるんだ。そしてこっちのマルクは
魔法使い。俺たち修行の旅をしてるって感じかな。」
「結構普通の観光旅行みたいになってるとこもありますけどね。」
「へ~、そうなんだ。」
男と妻は珍しそうに2人を見た。
「そういえば昔、最強の剣士っていう人がいたっけな。」
男が思い出すように言った。
「あ、俺も知ってる。」
ジルはうれしそうに言った。
「確か名前はニムダとか言ったかな。」
「あれ、そんな名前だったっけ?確か俺が小さいころ本で見たのは
別の人だったと思うけど...。」
「そのニムダって人はまだどこかで生きてるらしいから探して弟子入り
してみたら一人前の剣士ってのになる一番の近道じゃないかな。」
「そっか。考えとくよ。とにかくありがとう。」
「ありがとうございました。」
ジルとマルクはお礼を言って家を出るとサンアルテリア王国へ向かって
歩き出した。
ジルとマルクはサンアルテリア王国が少し見える所までやってきた。
「ふぅ~。意外と早かったよな。」
「そうですね。これなら暗くなる前に十分着きますね。」
そこから少し歩いたとき、ジル達の前に獣型のモンスターが現れた。
「ウェアウルフですね。」
マルクが言い当てた。
「グルルルゥゥゥ。」
ウェアウルフは2人を睨み低い音で吠えている。
「完全に俺たちのこと敵として見てるよな。」
「見てますね。」
「じゃ、戦うしかないか。」
ジルは剣を構えた。
「気をつけてください。ウェアウルフは素早く攻撃力も高いですよ。」
「分かった。」
ジルが返事するとほぼ同時にウェアウルフはマルクに襲い掛かってきた。
「お前の相手はこの俺だ。」
そう言うとジルはマルクを守るようにモンスターとの間に入り、
爪による攻撃を剣で防いだ。
「ぐ。確かに攻撃力はけっこうあるな。ちょっと手がしびれたぜ。」
ウェアウルフは体勢を立て直しジルに素早く攻撃をした。
「素早さなら俺も負けてないはず。」
再びウェアウルフの爪とジルの剣がキンと音を鳴らし重なり合う。
そこからウェアウルフは牙でジルに噛みつこうとした。
「危ない!」
見ていたマルクが叫んだ。
ジルは一旦後ろに飛んでウェアウルフから離れた。
「(こいつ思ったより強い。いや俺がまだ弱いのか。
でも、こんなとこで負けるわけにはいかない。)」
ジルは気を引き締めウェアウルフに向かっていった。
ウェアウルフもそれを迎え撃とうとした。
シュンッ!
ジルの右腕に傷口が走る。一方、ウェアウルフは胴体に一撃を受け
血が吹き出るとバタリと倒れた。