dark legend   作:mathto

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マルクに怒りを燃やすワーグバーグ。

「いくぞ。」

ワーグバーグが出した岩の槍はマルクに向かって飛んでいく。

「マルク、よけろっ!」

ジルが叫んだ。

「無駄だ。ロックスピアはどこまで逃げても追いかける。

自慢の風の壁で防いでみろよ。出来るものならな。」

激しいワーグバーグとは対照的にマルクは穏やかな表情をして

何も言わずに立っていた。

「何だその顔は。どうした?なぜ、何もしないでつっ立ってるんだ?」

ワーグバーグはマルクの態度に動揺した。

そして放たれた岩の槍はマルクの腹に突き刺さった。

「ぐはぁぁ。」

マルクは腹から大量の出血をし、口からも血が噴き出た。

「マルクっーーーーーーー!」

ジルは思い切り叫んだ。

マルクは受けたダメージの大きさでバタリと前へ倒れたが、辛うじて意識を保ってはいた。

「は、は、は。いい気味だな。これでお前も終わりだ。」

ワーグバーグは勝利を確信したがどこか歯切れが悪かった。

ドカッ!!!

岩が砕け散るとても大きな音がした。

ワーグバーグはその音のした方を見た。

「な、何だ。これは?」

岩の破片が転がっている中、黒いオーラを身にまとったジルの姿がそこにあった。

ジルの目にはとても正気とは思えないほどの殺気に満ちていた。

「うおおおぉぉぉぉぉ!」

ジルは剣を握りワーグバーグに走って向かっていった。

ワーグバーグは鬼気迫る様子のジルに恐怖し、次の行動に移れないでいた。

今にもジルがワーグバーグに斬りかかろうとしたとき、

「『ウインドカッター』。」

ジルの目の前、鼻の頭辺りを風の刃がかすりジルの動きを止めた。

そのことでジルは正気を取り戻し黒いオーラは消えていった。

「何すんだ、マルク。」

ジルは怒って言った。

 

 

 

「その人は.攻撃しては..いけな..い...。」

そう言うとマルクは気を失ってしまった。

「どうしてだよ。お前を殺そうとした奴だぞ。」

ジルはマルクの気持ちが理解できずどうすればいいか分からなくなった。

「攻撃魔法だ。マルクが初めて攻撃魔法を使うところを見た。

あんなに使うのを嫌がっていたのに。どれだけやれと言っても

誰も何も傷つけたくないと頑として断り続けていたのに。

しかもそれを俺ではなく仲間に使うなんて...。

なぜだ?なぜなんだ!?」

ワーグバーグは苦悩しながらマルクに叫んで問いかけた。

「本当だ。マルクの攻撃魔法だ。俺も見たの初めてだ。」

ジルもワーグバーグの言葉ではっと気づいた。

そしてワーグバーグに向かって言った。

「なぜマルクがあんたじゃなく俺を攻撃したか。それは

あんたをとても大事に思ってるからじゃないのか?」

「そんな、マルクは俺を出し抜いて先生に取り入り後継者の座を

得ようとしているんじゃないのか?まさか、マルクは本当に、

本当に...。」

ワーグバーグは自分の出した結論に大きな戸惑いを抱いた。

「く、ええい。『アースヒール』。」

ワーグバーグはマルクに手のひらを向けて魔法を唱えた。

マルクが横たわる地面の辺りが淡い黄緑に光り、その光はマルクを一気に包み込んだ。

するとマルクが負った深い傷がみるみる癒えていき完全に回復した。

「す、すげえ。」

ジルはワーグバーグがマルクを傷つけたことを忘れてワーグバーグの

ほぼ一瞬で回復させる魔力の強さに驚いた。

「回復魔法はマルクだけの専売特許じゃねえよ。おい、ジルと言ったか。

マルクは今、気絶してるだけだが疲れているだろうから早く宿屋かどっかに

連れて寝かしてやれ。」

「あんたは?」

「俺は『俺だけの道』とやらを探しに行くさ。」

ワーグバーグはそう言い残して去っていった。


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