dark legend   作:mathto

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「ん、ここは?」

目を覚ましたマルクは見知らぬ部屋のベッドの中にいた。

「ふぅああぁぁ。お、マルク、起きたのか。

気分はどうだ?」

そばでイスに座っていたジルがあくびをしながら聞いた。

「ええ、大丈夫ですけど。」

「そうか、よかったな。ふぁぁあぁぁ。俺、ちょっと眠いから

悪いけど眠らせてもらうな。」

ジルはマルクのベッドに倒れこむように眠りについた。

「えっと。私は確か...。そう、ワーグバーグさんの攻撃を

受けて倒れたんだった。それをジルがここ宿屋でしょうか、

とにかく運んできてくれたんですね。あれ、でも私はとても

深い傷を負っていたはずですが。傷がなくなっている。全然

痛くない。治っている。でも一体どうやって?ジルは回復薬は何も

持っていなかった。それではワーグバーグさんが...。

きっとそうですよね。」

マルクはうれしさがこみ上げてきた。

「今日はジルにはとても悪いことをしてしまいました。

明日はちゃんと謝らないといけないですね。」

マルクは傍で寝ているジルを隣にあるベッドへと運んで寝かせてやった。

「今はまだ夜ですし私も寝ますか。」

そう言ってマルクは再び眠りへとついた。

 

次の朝。

「ふぁああ、おはようマルク。」

ジルがまだ少し眠たげにしながらマルクにあいさつした。

そして身支度を少し整えたところを見計らってマルクが話しかけた。

「ジル。昨日は本当にごめんなさい。」

「謝るんなら最初からするなよ。」

「ええ。」

マルクはジルの反応に当然のことだと思いながらもう一度謝ろうとした。

「あの。」

「嘘だって。お前の思いだってある程度は分かってるから。

もう気にすんなよ。それより早くマルクの先生に会いに行こうぜ。」

「ありがとう、ジル。」

マルクは目にうっすらと涙を浮かべた。

それからしばらくして2人は宿を出た。

 

 

 

「で、マルクの先生はどこにいるんだっけか?」

「ええとですね、メンデル先生のいる魔道連盟の本部は

国の中心にあるセントラルキャッスルのすぐ近くのはずですが。」

「ああ、こっから見えるあの城だな。じゃ、さっそくいきますか。」

2人はまずセントラルキャッスルを目指して歩き出した。

途中にある数々の興味深い店などには目もくれずに少し急いだ様子で。

 

「ふぅー、やっと着いた。思ったよりずっと遠かったな。」

ジルとマルクがセントラルキャッスルに辿り着いたときすでに

太陽が真上にあった。

「もう昼過ぎですよね。どこかでご飯を食べましょうか。」

「そうだな。おっ、あそこにしようぜ。『高級レストラン、ゲロゲロ』」

ジルが指差したところはこじんまりとした薄汚れた一軒の食堂だった。

「とってもまずそうな気がしますが。」

「なーに、イメージと実際とはけっこう違うもんさ。」

ジルは不安そうなマルクを無理やり連れて店へと入った。

「いらっしゃい。」

店の中には不精ひげを生やしたオヤジが一人いるだけで客は全くいなかった。

「うわ。何か変な臭いがしますよ。やっぱり別の店に変えたほうがいいですよ。」

「そんなこと言ったらオヤジに失礼だろ。」

「しかし。」

「お客さん、何にする?」

店のオヤジは2人の会話を気にすることなく注文を聞いた。

「そうだな。この店のおすすめとかあるの?」

「メニュー全てがおすすめだが、特にあげるとしたらうちの看板料理

『カエルの姿焼き』かな。好きなやつは毎日のように食べにくるね。」

「じゃ、それを2人前お願い。」

「はいよ。」

「カエル料理ですか。ゲロゲロってそういう意味だったんですね。

私はてっきり吐くほうのゲロゲロかと思ってしまいました。」

「おい、マルク。ちょっと失礼すぎるって。」

「あ、ごめんなさい。」

マルクははっと気づき店のオヤジに謝った。

「なぁに、気にすんな。そういう客も結構いてるから慣れてるよ。」

店のオヤジは笑ってマルクに言った。


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