dark legend   作:mathto

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14,15

「ふぁ~あ。もう朝か。なんだかのどかな村で

気持ちが高ぶらないよな。」

天気もよく小鳥が囀り気持ちのいい朝で

2人は部屋でのんびりとしていた。

「そこがこの村のいいとこなんじゃないですか。」

「これから魔道士と対決するかもしれないっていうのにな。

ちょっと不安だな。」

「でも魔道士もこの村を襲ったりしてないし

案外悪い人じゃないかもしれませんよ。」

「いやー、それは無いと思うけどな。」

「お~い、お二人さん。ご飯の用意が出来たぞー。」

村長が朝ご飯の支度をしてジル達を呼んだ。

「悪いね。朝ご飯の用意までしてもらって。」

「いやいや、ここにいる間はいくらでも面倒を見させてもらうよ。」

朝ご飯は昨日のようなごちそうではなく普通の食事であったが

ジルとマルクはおいしく頂いた。

「さて腹ごしらえも出来たしさっそく行くか。」

2人は家を出、魔道士が住むという小屋へと向かった。

村から少し離れた所の林の中にそれはあった。

「どうする?いきなり乗り込むか?」

「はっきりした証拠はないですから探るような感じで

聞いてみたらいいんじゃないですか。」

「そうだな。マルク、聞いてみてくれる?」

「はい。」

トントン。マルクは小屋のドアを軽くノックした。

「すいません。」

「誰じゃ。」

小屋の中からしゃがれた声が聞こえた。

「あの、村の使いでやってきたのですが漬物石を知りませんか?」

「とりあえず中にお入り。」

言われるままに2人はドアを開け小屋の中へ入っていった。

中には黒いローブを着た老婆が立っており、その傍にある

机の上に大きな石が置いてあった。

「あっ、きっとそれですよ。返してくれますよね?」

「どうぞそれはもともと村の物。返すのが当然じゃからな。」

「ね、悪い人じゃないでしょ?」

マルクは笑顔でジルに顔を向けた。

「ああ、マルクの言った通りだったな。」

「じゃあ私が持っていきますよ。」

マルクが石に近づいたとき魔道士は右手の掌をマルクにスーと

向けて口をニヤッとさせた。

「ん?」

ジルはそのしぐさに注意した。

そして魔道士の掌はボゥッと光り出した。

バチッ!

魔道士から電撃がマルクへと発射された。

「危ない!」

ジルは跳んでマルクを突き飛ばし電撃をくらってしまった。

「うぅ、この何するんだ!」

ジルは体の痺れに耐え魔道士を睨みつけ叫んだ。

 

 

 

「フォッフォッフォ。盗った物を何で簡単に返す

と思うか。お前達はこの石の価値を知っておるのか?」

「石の価値ってどうみてもただの石じゃないか。」

ジルは不思議がりながら答えた。

「バカな奴じゃな。あの村の奴らと同じか。

せっかくだから教えておいてやろう。この石はな

魔力が秘められておるのじゃよ。それほど強力とは

言えないが所持者の力を増幅させることができるんじゃ。」

「なんだって!それじゃあ、その石を売ったら

けっこうな金になるんじゃないか。」

「何考えてるんですか、ジル。」

マルクはジルを睨む。

「冗談だってば、もう。取り返しても全然売る気なんかないって。」

「それならいいですけど。とにかくあなたにその石の力を

使わせる訳にはいきませんよ。さっきの電撃の威力から

あなたの力はそれほど強くないことはわかってますしね。」

「分かっとらんな。この石の力を使えば電撃の威力は

さっきの比ではないぞ。貴様らを死に至らしめることだって

できるんじゃからな。」

魔道士は石に手を置き魔力を溜めだした。

「なぁ、マルク...ボソボソボソ。」

ジルはマルクの耳に小声で話した。

「分かりました。」

マルクも小声で答えた。

魔力を十分に溜めた魔道士はさっきと同じように

電撃を放とうと構えた。

「さぁこいよ。」

ジルは魔道士を挑発するかのように言った。

「どうやら先に死にたいようだな。いいだろう。」

魔道士はジルに光った掌を向けた。

「今だっ!」

ジルの掛け声と共にマルクは小屋に置かれていた壺を

両手で魔道士目掛けて投げつけた。

「わっ。」

魔道士は突然のことで慌てて避けた。

そして次の瞬間、

 

ブシュッ。

 

ジルが魔道士の腹に剣を突き刺した。

「ぐはっ、まさかこんな子供だましの手に

引っかかるとは油断したか。だがお前達も強い力を

目の前にすればそれを欲するときがくるだろう。

強い力があれば自分の思い通りに事を進めることが

容易に出来るからな。つまりお前達も私と同類だ...

ガクッ。」

魔道士は床に倒れた。

「何を言ってるんだ。同じなわけ無いだろう。」

「この魔道士は人間誰でも力への執着があるという

ことを言いたかったんでしょう。でも力を求める気持ち

と善悪とは重なる物ではありませんよ。」

「難しい話だな。とにかくこの石を村に持って帰れば

万事解決ってことだろう?」

「ええ、そうです。早く帰りましょう。」


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